必修化で注目を集める「子どものプログラミング教育」について考える
作成日:2018/06/15
関心が高まるプログラミング教育
近年、子どもをもつ保護者の間で注目を集めているものの一つが、「プログラミング教育」です。「将来役に立ちそうだから」「これからの時代は必要になると思うから」「子どもが興味をもっているから」といった理由で、子どもにプログラミングを習わせたいと考える保護者は少なくありません。その需要の高まりから、子ども向けのプログラミング教材やプログラミングを学ぶことができるスクールなども数多く存在し、市場規模は年々増加しています。
プログラミングについて関心を寄せているのは、保護者だけではありません。ほかならぬ子ども自身も、プログラミングに興味をもつことが増えているのです。そうした多くの子どもたちが実際にプログラミングにふれるなかで、天才プログラマーとして知られる子どもが出てきたり、学生のころからアプリ開発などのプログラミング経験を重ねて起業するといったケースも見られるようになりました。
そして、2020年度からは、小学校でプログラミング教育が必修化されることが決まりました。IT業界に関わる方にとっては、プログラミング教育が進んで将来的にITスキルの高い人材が増えていくようになれば、喜ばしいことといえるでしょう。他方、子どもをもつ保護者にとっては、プログラミング教育に対して自分の子どもをどのように関わらせていくべきか、不安に感じたり悩むことも多いのではないでしょうか。
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なぜプログラミング教育が必要なのか
プログラミング教育というと、「うちは子どもをプログラマーにしたいわけではないから、プログラミング教育は必要ないだろう」という声を聞くことがあります。しかし、プログラミング教育で学ぶことができるのはプログラミング能力だけではありません。
たとえば、きちんと動くプログラムを組むためには、プログラムに行なわせる処理を一つずつ考えて、漏れや重複のないように処理を遂行させなければなりません。そういったことを考える経験を通して、論理的思考力とその必要性を理解できるようになります。
また、プログラミングの過程では思うように動かないこともしばしばで、その原因を突き止めて対策を考える問題解決能力も身につきます。自分の周りの課題やアイデアを、プログラムというかたちに発展させる実現力や創造性もふくらむでしょう。そうした能力は、仕事ではもちろん、生きていくうえでも大きな力になります。そのような点が、保護者の間で人気の高い理由の一つなのです。
そして、日本政府や社会がプログラミング教育を必要と考えているのは、「子どもをプログラマーにするため」ではなく、今後の社会においてプログラミングの基本的な知識が不可欠と考えられるからです。ITとビジネスが密接な関係をもつようになった現在、自分自身がプログラミングをするのではなくても、プログラムというものがどういうものか、組むためにはどうすればいいかといった基本的な知識は、仕事に必要となると考えられます。
加えて、人工知能(AI)といった高度なIT技術の進展もあって、今後の社会がどう変わっていくか見通しが難しくなっています。そうした時代を生き抜くために、プログラミングの学習で得られる思考や能力が必要だとされているのです。
必修化でプログラミング教育はどうなる?
プログラミング教育の必修化は、2017年3月に発表された学習指導要領で明らかにされたもので、小学校で2020年度から、中学校では2021年度から、プログラミング教育が必修化されるという内容です。必修化となれば、時間割に「プログラミング」の教科が増え、児童がプログラミングのテキストを広げてパソコンでプログラムを入力するようになる――そんなイメージを思い浮かべるかもしれません。
しかし、前述のとおり、プログラミング教育の目的は「プログラマーを育てること」ではありません。学習指導要領でも、プログラミング教育の目的は、「時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むこと」であり、「コーディングを覚えることが目的ではない」とされています。
実際の授業については未定の部分も多いようですが、プログラミング教育の扱いも算数や理科といったすでにある教科のなかに適宜位置づけられ、扱う時間数も個々の学校の判断となるようです。授業では、パソコンやタブレットを使って簡単なプログラミング的操作を学ぶこともあるかもしれませんが、ICT機器を用いない教材を使ったプログラミング教育なども想定されているようです。
報道などで「プログラミング教育の必修化」というキーワードを聞いて、「うちの子はプログラムなんてできるだろうか」「今のうちから、子どもプログラミングの勉強を始めさせておいたほうがいいのではないか」といったことを考えたことがある保護者の方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、小学校の授業ではガチガチのプログラミングをするというよりも、プログラミングや論理的思考力といったことに興味をもってもらい、プログラミングを体験するということが重視され、そのための授業が行なわれるものと考えられます。ですから、保護者の方が今から何かを特別に準備しておく必要はほぼないといえるでしょう。
簡単なところからプログラミングにふれる体験も
しかしながら、小学校の授業とは関係なく、前述のような内容を学ばせたいと考える保護者の方もいらっしゃるでしょうし、子ども自身がプログラミングを勉強してみたいと考えることもあるでしょう。
もしそうならば、その間口は広く開かれています。先に述べたように、最近はプログラミングを学習する教室も増えています。塾のように通うところもあれば、インターネットを使った通信教育もあります。定期的な講習ではなく、プログラミングを体験するイベントもいろいろなところで開催されていますから、まずはそのようなイベントに参加してみるのもいいでしょう。
豊富にある子ども向けのプログラミング教材を使えば、家でもプログラミングの体験は可能です。無料のプログラミング教材「Scratch(スクラッチ)」は、Web上で自由に使うことができ、簡単な操作でゲームやアニメーションをつくることができます。NHK・Eテレで放送された、小学生高学年以上をターゲットとしたプログラミング番組でも、このScratchが使われていました。
人気を集めるマイクロソフトのゲーム「Minecraft(マインクラフト)」もプログラミングの要素があり、プログラミングの体験としてもうってつけでしょう。そのほかにも、プログラミングを学ぶことができるおもちゃなども多数登場しています。そうした“遊び”から、無理のない範囲でプログラミングにふれてみるのは、子どもにとってもいいきっかけになるかもしれません。
これからの社会では、論理的思考力や問題解決能力、創造性のある発想といった力はとても重要であり、より実践的な能力が求められるとされています。そのように必要とされる能力を伸ばしていくためには、プログラミング教育をとおして「プログラミング的思考」を育てていくのは子どもにとって有用な学習といえるでしょう。
プログラミング的思考からさらに進んでプログラミングができるようになれば、将来の仕事の選択肢も広がります。少子高齢化による人材不足が加速するであろう日本では、ただでさえ人材不足は深刻な問題です。高度なIT人材となれば就職先も増えるでしょうし、自分自身で起業したり、世界の企業で仕事をしたりと可能性が広がります。
もちろん、なかにはプログラミングに興味をもたない子どももいるでしょう。そうした子どもにまで無理強いさせるのはかえって悪影響です。しかし、いろいろな間口が用意されている中から子ども一人ひとりがきっかけをつかみ、プログラミングに興味をもつことができれば、子どもにとって貴重な財産になるはず。そういった素養をもつ人材が増えることは、IT業界だけでなく、日本の社会にとっても明るいニュースとなるでしょう。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)