【監修】経営コンサルタントの転職事情とは?役立つ資格は?キャリアパスや年収は?
最終更新日:2020/01/22
作成日:2018/11/16
コンサルティングファームでさまざまな業務を経験し数年経過すると「転職」の2文字が頭をよぎりがちです。もともと転職の多いコンサルティング業界ですが「もっと知見を広げたい」「ふるさとに戻って、地元企業のコンサルティングをしたい」「ワークライフバランスを重視したい」など、ポジティブな理由で転職を実現する人も増えているようです。キャリアパスの選択肢も広がっています。経営コンサルタントのキャリアパスや、転職のメリットとデメリットなどについてまとめました!
目次
■経営コンサルタントや戦略コンサルタントの4つのキャリアパス
(1)他のコンサルティングファームへ転職する
(2)事業会社へ転職する
(3)起業する
(4)地方企業向けコンサルタントに転職
■経営コンサルタントや戦略コンサルタントにとって、転職のメリットとデメリットとは?
(1)転職は、キャリアアップや人脈が広がるメリットがある
(2)経営コンサルタントの転職は狭き門というデメリット
■転職成功事例を見る
(1)外資系コンサルティングファームから事業会社へ転職した事例
(2)複数のコンサルティングファームの転職を経て独立した事例
■まとめ
※本コラムは、2020年1月22日に「経営コンサルタントや戦略コンサルタントは転職しやすい?新たなキャリアパスとは」を再構成したものです。
※本コラムは、営業力・マーケティング力支援、経営企画業務支援などを行なうコンサルタントが監修しています。
経営コンサルタントや戦略コンサルタントの4つのキャリアパス
経営コンサルタントが転職する場合、大きくキャリアパスは4つに分かれます。
(1)他のコンサルティングファームへ転職する
経営コンサルタントの転職と言えば、他のコンサルティングファームへ転職するというルートがあります。例えば、国内コンサルティングファームから外資系コンサルティングファームに転職するケース。「グローバルな案件に携われる」「活動のフィールドが広がる」「コミュニケーション・ネットワークの幅が広がる」「ダイバーシティを体感できる」などがそのメリット。また、これまで蓄積したコンサルティングノウハウやスキルを生かしやすいという特徴もあります。
ただし、明確な目的を持たずに他のコンサルティングファームへ転職することは、環境を変えただけに過ぎません。改めて、自分のキャリアプランを熟慮した上で実行する必要があります。具体的には、転職後にそのコンサルティングファームで管理職や役員を目指すのか、複数のコンサルティングファームでの経験を活かして将来的に独立するのかなど、明確な目標設定が必須となります。
(2)事業会社へ転職する
事業会社に対して、「客観的」立場でアドバイスを行なうコンサルタントではなく、事業会社に転職して、自ら「主体的」立場で経営に関わるという選択肢もあります。大企業だけではなく、さまざまな業界のベンチャー企業では、経営戦略部門としてコンサルタント経験者を採用するケースが多いようです。「IT業界に強い」「プロジェクトマネジメントに長けている」など、特定の分野に強みがあれば、事業会社ではコンサルタントとしての実績・能力を評価し、経営企画などのポストを設けて歓迎してくれる可能性があります。
コンサルティングファームでの業務は、1つの案件が終了すると次の案件に移りますが、事業会社では、長期的に経営に関わることができます。また外部コンサルタントでは、情報の整理やアドバイスがメインですが、実際の業務に関われるという点も、事業会社ならではと言えるでしょう。
なお、一般的にコンサルティングファームでは、長時間労働も多く、ハードワークと言われる一方、事業会社では、仕事と家庭の両立のしやすさや福利厚生の充実など、働き方を重視している企業も多いと言われます。しかし肝心なことは、転職後に、出来るだけ早く事業会社の仕事のリズム・スピードに順応することと言えるでしょう。
(3)起業する
経営コンサルタントや戦略コンサルタントとして経験を積んでから、転職ではなく独立や起業を選択するというケースもあります。起業する場合、コンサルタントして独立するケースの他、自分のアイデアを使って新たに事業を立ち上げるというケースも。実際のところ、ベンチャー企業の経営者には、コンサル業界出身の方が比較的多いのも事実です。
ご自身で独立・起業する場合は、従来のコンサルティング業務以外にも、会社を経営するためには多種多様の業務をこなす必要がありますが、「自分で本当にやりたい案件に集中できる」「子育てなどワークライフバランスがとりやすい」など、仕事や時間に対する自由度は高まります。コンサルタントとして独立した後は、フリーのコンサルタントと企業の間を仲介し、案件を紹介したり情報を提供したりするサービスなどを活用し、一日も早く業務を軌道に乗せることが望まれます。
(4)地方企業向けコンサルタントに転職
最近では、地方経済を活性化するため、自治体が積極的にコンサルタントの求人募集を行なっているケースも増えています。都市部のコンサルティングファーム経験者が、地方へUターンまたはIターンして、地方の中小企業の経営コンサルティングを担うというもの。
これまでのコンサルティング業務で蓄積された経験や情報を、社会貢献につなげることができます。従来のコンサルティング業務とは大きくスタイルが変わりますが、災害地の復興支援や地方創生に関われるといった「やりがい」を発見することも可能です。
また、課題を抱えた地元企業の多くは、知識やITスキルが不足しており、コンサルティング経験者をきっと歓迎してくれるはずです。政府でも、地方創生は大きな課題となっており、こうした取り組みをサポートする動きも進んでいます。
経営コンサルタントとして活躍しながら、休日を使って地域の活動に取り組む人も。働き方の多様化を背景に、いわゆる他の企業に転職するという選択肢だけではなく、コンサルタントとして活躍できる場は広がっています。
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経営コンサルタントや戦略コンサルタントにとって、転職のメリットとデメリットとは?
(1)転職は、キャリアアップや人脈が広がるメリットがある
経営コンサルタントや戦略コンサルタントにとって、転職はキャリアアップのチャンスでもあります。異なる環境で経験を積む、新しい手法や知識をインプットする、あるいは新たな人脈を築くなど、転職を通して得られるメリットはとても大きいのです。
コンサルティングファームは転職率が高く、中には出戻り歓迎という企業もあり、転職後もOBなどとのつながりが強く、情報交換が活発という特徴があります。つまり、転職前の人脈を維持しながら、新たな転職先でも人脈を広げることができます。経営コンサルタントや戦略コンサルタントとして将来独立する際にも、こうした人脈や情報源は大きく役立つはずです。
ただし、重要なことは、計画的にスムーズな転職活動を行なうということ。転職前の勤務先に迷惑がかかってしまうと、それまで築いた人脈も失いかねません。また、転職先にも良くない評判が広がってしまう懸念があります。円満な転職につながるよう、慎重に進めましょう。
(2)経営コンサルタントの転職は狭き門というデメリット
大手コンサルティングファームが新卒採用を行なう際には、まとまった人数を採用しますが、中途採用となると求人数は大きく減ります。つまり、転職者にとって経営コンサルタントという職種は狭き門になるわけです。
自分に合うポストの求人があるかどうかはタイミングにもよるため、転職を考えた時点から準備を始めておいた方が良いでしょう。支障のない範囲で「今、転職を検討していてこんなポストと求めている」ということを周囲に伝え、求人情報などを集めるという方法もあります。
なお、事業会社などへの転職の場合でも、ポジションに空きが出た時点で採用活動をするため、やはり求人数は限られているケースが一般的です。こうした背景もあり、コンサルタントの場合は、転職が実現するまでに1年以上かかるということもありますので、先ずは計画的に取り組むことが望まれます。
ただし、最近では、コンサルタントに特化した転職エージェントサービスも増えており、一般公開されていない求人情報を提供してくれたり、面接時のアドバイスを受けられたりすることもできます。
経営コンサルタントや戦略コンサルタントの転職に役立つ資格
企業が、経営コンサルタントや戦略コンサルタントを採用する上で、必須とする資格はありません。ただし、一般的に持っておくと転職に有利と言われているものが、MBAと中小企業診断士の2つです。
MBA(Master of Business Administration:経営学修士)は、経営学の大学院修士課程を修了した人に授与される学位。経営やビジネスに関する幅広い知識やフレームワークを短期間(1年~2年)に習得できるものです。
日本でも、企業の経営者や経営コンサルタントにMBA取得者が多いのも事実(ただしどの機関で学んだかによってMBAの評価は変わるようです)。「転職のためにMBAが必須」とは言えませんが、経営に携わる人にMBA取得者が多いこともあるので、経営コンサルタントや戦略コンサルタントとしてキャリアアップや転職を狙う人は、持っていた方が良い資格の一つでしょう。
日本でも、仕事を続けながらMBAが取得できる教育機関は多くあります。中には、ビジネス・ブレークスルー大学院のように、通学制ではなくインターネットを利用した通信制のMBAプログラムもあります。
日本で唯一の経営関連の国家資格と言えば、「中小企業診断士」です。中小企業向けの経営コンサルタントの多くが取得している資格。資格試験には、経営全般に関する知識を問う試験の他、実際にコンサルティング能力があるかを確認するための実務実習もあります。
この資格は、中小企業のコンサルティング業務がメインとなる資格のため、大企業がクライアントとなる大手コンサルティングファームにおいては、採用時にあまり重視されない傾向にあります。とは言え、中小企業向けのコンサルティングファームの応募には、やはり取得しておきたい資格です。
ただし、こうした資格を持っていても、面接で詳しく資格について聞かれることは少ないかもしれません。むしろ、コンサルティング業務を通じて得たもの、どんなプロジェクトにどんな立場で関わったかなど、あなた自身の経験・実績・能力が面接では重視されます。
経営コンサルタントは転職経験後、独立という選択肢もある
経営コンサルタントにとって、転職は多くのメリットがありますが、長期的なキャリアプランを考える上で、独立という選択肢も考えてみるべきでしょう。
コンサルティング業務を続けていく中で、企業の社員としてではなく、「自分の力を試したい」「年齢に関係なくコンサルタントとして活躍していきたい」と考える人も多いようです。求人数が少ない中途採用のタイミングに合わせるよりも、自分で独立したい時期を決めて、計画的にキャリアを描けるという点もメリットと言えます。
コンサルタント業は、初期投資も他の業界と比べれば少なく済むため、独立することはそれほど費用面でのハードルは高くありません。ただし、どうやって仕事を増やして、長期的に経営を安定させるかが成功の鍵となります。ご自身の人脈を上手く活かして仕事につなげるという手もありますが、現在では、独立したコンサルタントにプロジェクト案件を紹介するマッチングエージェントサービスもあります。
「独立後は営業が大変」というイメージを持つ人が多いようですが、営業活動も然ることながら、自分自身のコンサルタントとしての魅力度を上げることも重要な課題になります。そのためには、自分の経験やスキルをもとに強みを分析していくことが求められ、「特定業界の経験・実績がある」「ITスキルに長けている」「グローバル案件に強い」など、これまでの業務経験を整理し、客観的に自分の強みがどこにあるか検証していきましょう。
コンサルタントとして独立した場合、もちろん会社員と比べれば年収が安定しないこともありますが、キャリアを積むことで会社員時代を超えた年収になる場合も。ただし年収アップを目的に独立するというよりは、「自分自身でキャリアを築きたい」「自分のペースで働きたい」といった明確な目的を持って独立するコンサルタントの方が、成功する確率は高いように感じます。
実際に独立したコンサルタントの中には、ワークライフバランスを充実させていたり、パラレルワークを実現したりするなど、自分の時間をうまく活用している事例もあります。
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転職成功事例を見る
複数の企業に転職した経験のあるコンサルタントの話を聞く、というのも参考になるのではないでしょうか。
FreeConsultant.jpでは「プロフェッショナリズム」というインタビューを掲載しています。この特集では、プロフェッショナル人材に転職や独立などキャリアパスについてお聞きしています。ここで、2つのコンサルタント事例をピックアップしてご紹介しましょう。
(1)外資系コンサルティングファームから事業会社へ転職した事例
現在、札幌で独立コンサルタントとして活躍する成田哲史さん。新卒でアクセンチュアに入社後、事業会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に転職。その後、株式会社リクルートジョブズに転職、戦略立案などの業務に従事されました。
コンサルティングファームから事業会社への転職事例ですが、両方の立場を経験できたことが、独立した後に大きく役立ったと成田さんはインタビューで語っています。
※インタビュー記事はこちら:「どう生きたいのか?」 の先にある”独立コンサルタント”という働き方
(2)複数のコンサルティングファームの転職を経て独立した事例
新卒でSAPジャパン株式会社に入社してMBAを取得。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社などを経て、経営コンサルタントとして独立した篠原翔さん。
複数のコンサルティングファームの経験を武器に、フリーコンサルタントとしてさまざまなプロジェクトに関わる傍ら、自ら会社も立ち上げています。篠原さんの場合、転職後のコンサルティングファームで、まだ日本では馴染みの少ない「戦略的プライシングソリューション」に関わり、その経験が今のキャリアに大きく影響したと語っています。
※インタビュー記事はこちら:「選択肢を多く持ち、自分で決断してやりきる」 人一倍の好奇心と向上心を武器に多方面で活躍するフリーコンサルタントの思考とは
プロフェッショナル人材へのインタビュー「プロフェッショナリズム」では、他にもさまざまな転職経験を持つコンサルタントのインタビューを読むことができます。
まとめ
経営コンサルタントや戦略コンサルタントの方が転職を重ねるケースは、それほど珍しいわけではありません。キャリアパスとしては、他のコンサルティングファームに転職したり、事業会社へ転職したりするパターンの他、独立や自治体に関わる活動をするなどバリエーションは広がっています。
コンサルタントの転職は、キャリアアップにつながるメリットが多いのが特徴で、新たな環境でスキルや経験が増えるだけではなく、人脈も確実に広がります。一方、新卒採用と比べると、採用数が少ないこともあり転職に時間がかかるケースもあることを知っておくべきでしょう。転職に役立つ資格としてMBAや中小企業診断士という資格もありますが、やはりコンサルタントは実力勝負。資格があればすんなり転職できるとは限りません。
一方で、経営コンサルタントや戦略コンサルタントとして経験を積んだ人の中には、転職ではなく独立を選択する人も。自分が本当にやりたい仕事をするために独立するケースや、子育てなどワークライフバランスを重視するために独立するケースもあります。実際にみらいワークスがインタビューを実施したコンサルタントの多くが、やりがいやライフスタイルなどに合わせてポジティブに転職や独立を経験し、多様な働き方を実践しています。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)
東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。
ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020