BPMで業務再構築に成功!事例から知る秘訣
最終更新日:2024/02/02
作成日:2019/08/30
現在、多くの企業がBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)の実施に取り組んでおり、フリーランスのコンサルタントにも多くの案件依頼が寄せられています。今回はプロジェクトを成功させるためにコンサルタントとしてはどう考え動けばよいかを解説します。
目次
■BPMの現状を知り対策を考察
(1)ビジョンや成果を考えなければならない
(2)いわゆる「リストラ」とは異なる変革
■BPMプロジェクトにおけるRPAの位置付けとは
(1)業務自動化によるワークライフバランスの実現
(2)RPA、EPA、CAとは
■BPRから派生したBPMとPDCAサイクル
(1)BPRから派生したPDCAの概念を持つBPM
(2)PDCAサイクルとは
■成功事例に見るBPMプロジェクトの筋道とは
(1)業務を可視化する
(2)業務分析により課題を洗い出す
(3)施策の策定
(4)実行
(5)結果検証と修正
■まとめ
BPMの現状を知り対策を考察
働き方改革のみならず、日本企業は今大きな変革を求められています。グローバル化やIT化はここ十数年、ずっとキーワードとして挙げられていますが、世界のビジネス環境がスピーディに変革している中で、今まで以上に速い変革が求められているのも事実でしょう。
(1)ビジョンや成果を考えなければならない
2014年に行なわれた調査によると、国内の70%もの企業がBPMに取り組んでいるという結果でした。
そこから長い年月を経ていますが、いまだにBPMに取り組んでいる、または取り組みたいとする企業は後を絶ちません。もちろんここ数年で新しく成長した企業が、新たに業務効率化に取り組みたいとしているケースもあるでしょう。
実際には、業務効率化や変革を試みたところ一向に進まず、何も変革できないままプロジェクトが頓挫するという状況を繰り返しているケースも少なくありません。成功事例もありますが、その陰にはこうした業務効率化の失敗例も数多くあります。
なぜ、企業が全社をあげて取り組んでいるにも関わらずBPMが失敗してしまうのか、成功のカギは逆に失敗の中から見つけることもできるでしょう。2014年の同調査でも業界1~3位の企業ではBPMの成功率が高い一方、そのほかの企業では非常に達成率が低く、一定の成果をあげても問題が残るという結果となっています。
このようにBPMに失敗した事例の多くは、すべきことを明確にしないまま見切り発車してしまったケースやBPMによってもたらされる成果を理解しないまま進めてしまったケースが大半です。
BPMではスタート時に「何をもって成功となるか」のビジョンが必須です。とりあえずやってみようで始めてしまうと、現場の業務改善レベルならまだしも、全社的な業務効率化や大規模変革は失敗する可能性が高いでしょう。
コンサルタントとしては、こうした「やってみよう精神」は命取りだと肝に銘じておく必要があります。また、現場レベルの業務改善にはIT戦略は必要とされないケースも多いですが、現在のBPMにはIT戦略は不可欠です。
大規模なシステム導入には至らなかったとしても、一定のITソリューションの導入や改修は必須であることがほとんどですし、ITにより業務プロセス改革が実現することは事実です。
そのため業務効率化には一定のIT化コストが必要となることも、経営者に理解を求めなければなりません。投資を敬遠する心理の根底には、BPMへ取り組むことで得られる成果に対しての懸念があります。
逆に成功する企業経営者はその点を真に理解しているため、投資はいずれ回収できると算段できます。
コンサルタントはプロジェクトの成功によって得られる成果を明示し、ゴールがどこなのかを共有する努力が必要でしょう。また真逆のケースとして、大胆なことをすれば効果が得られると誤解する経営者もいます。
重要なのは規模の大小ではなく本質的な業務効率化を図ることであり、そこさえ押さえられれば「大きなBPM」も「小さなBPM」も成功に導きやすいことを理解する必要があるでしょう。
(2)いわゆる「リストラ」とは異なる変革
経営者の中にも従業員の中にも、企業の変革には不穏なイメージを抱いてしまう人がいるのは事実です。これはバブル崩壊後、単なる人減らしに「リストラ」という言葉が横行したことが関連しています。
本来、リストラは企業再建の策であり、事業の無駄を省いて本来あるべき姿に戻すことで、事業を立て直すことを意味します。業績が悪いから闇雲に人を減らすといった内容では決してなかったのですが、口実に企業の変革を謳われたことで悪い印象が残ったのでしょう。
ただし、直近の日本社会では高齢化による労働力の低下があまりに顕著であり、こうした社会背景により、あらためて業務効率化を加速しなければならない現実が突き付けられています。
政府が乗り出した働き方改革もこの変革の流れに沿うものであり、バブル崩壊後に見られたいわゆるリストラとはまったく違う形でリストラが強く求められています。そうした中で注目されているのがBPMであり、その線上に新しい取り組みとしてRPAが登場しています。
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BPMプロジェクトにおけるRPAの位置付けとは
(1)業務自動化によるワークライフバランスの実現
BPMプロジェクトでは、労働の担い手である従業員の負担を減らすために長時間労働を解決し、ワークライフバランスを実現することも命題とされます。
すでに時間や場所の束縛を極力なくしたり副業を許可したりするなど、柔軟な働き方への環境整備も多くの企業で加速化し、労働力の確保につなげていると言えるでしょう。
ただし、今まで長時間労働を必要としていた現場で急に業務時間を減らし、なおかつパフォーマンスを維持するというのは業務改善だけでは不可能です。
そのため業務構造を根底から変革するBPMの一手として、RPAの導入が注目されるようになりました。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、ご存知の通りホワイトカラーの業務自動化に活用されています。人材不足を補い、かつ人件費の削減につなげるなど、ビジネスの変革においては大きなカギを握る存在です。
高齢化率21%を超える日本においては救世主であり、それまで海外の人件費を活用するBPOが主流だったところが塗り替えられる勢いです。2020年には5,000億円市場に成長するという読みもありますが、興味を持つクライアント企業も多いでしょう。
RPAは海外ではデジタル・ワークフォースとも呼ばれていますが、今まで代替案のなかったホワイトカラーの間接業務で、ロボット化が実現された点が何よりも画期的と言えます。
基本的には構造化されたデータを収集統合してシステム入力する単純作業を自動化するシステムで、業務フローにおいてフロント業務だけでなくバックオフィス業務も自動化することができます。
具体的にいえば、請求書のデータ入力やインターネットからのデータ収集といった作業をロボットに任せることで、人の労力を浮かせる手段です。RPAと相性がよいとされる業務は一定のルールがあり反復する作業で、データがすでに構造化されている場合に高いパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
コンサルティングを行う際は、クライアント企業の業務フローを洗い出し、標準化されている業務をピックアップするのが最適な方法です。
特にプロセスに3人以上のリソースを求められる場合や入力のし直しでヒューマンエラーが起こりやすい作業にRPAを合致させるのがベーシックな手段と言えます。RPAの導入により、BPMプロジェクトがスムーズに進行する筋道をつけられる可能性も十分にあります。
仮にRPAを導入した場合、実際に活用するのは現場担当者となりますので、いかに現場で継続的に活用される環境を作れるかがコンサルティング成功のカギと言えるでしょう。
(2)RPA、EPA、CAとは
広義のRPAにはRPA、EPA、CAの3つのクラスがあるとされ、BPMで活用するにはどのクラスを必要とするかを見極める必要があります。
多くの場合、一番低いクラスのRPAが活用されますが、具体的には定義されたルールに従ってデータ処理するクラスとなります。これに対し、情報を複数持ち、情報同士を紐づけて分析するレベルが第2第3のクラスです。
最終的にはシステム自体が判断しルールまで組み立てるレベルになりますが、そこまでを必要とするケースは稀でしょう。
RPAは基本的に決められたこと以外はできませんが、クラス2のEPAは大量のデータを解析して結果を出力する能力を持ちます。たとえば画像を元にほかの画像を分類したり、ビッグデータから顧客傾向を分析したりする能力があります。
クラス3のCAは多面的な情報を独自に分析し、自身で意思決定が可能となります。ユーザーから電話を受けた際、それまでの対応データを分析し、自動対応・コールセンター・資料送付などの複数の選択肢から自動判断する能力を持ちます。
クラスの違いはRPAかAIかの違いと考えてよいものですが、RPAとAIとの違いはまさに判断力や決定力を持つかどうかです。通常RPAといえばクラス1を指し、あらかじめ指示したルールにだけ従って単純作業を行う能力を有します。
クラス2~3はAIに分類され、ビッグデータを分析し、結果を出力する能力を有します。
BPMにおいてRPAが導入されやすいのは、リーズナブルなことと導入がAIほど難しくない点が挙げられるでしょう。RPAについては、実際のシステム導入においては専門家の業務になりますが、コンサルティングを行う上でコンサルタントにも一定の知識は必要です。
特に、業務分析では、どの部分を業務効率化できるか判断するうえで必要な知識と言えます。
BPMから派生したBPRとPDCAサイクル
(1)BPRから派生したPDCAの概念を持つBPM
BPRに取り組み、失敗した企業が多いことは先に触れました。
実は、1990年代にもBPRは一度流行し、その時に痛い経験をした経営者は少なくありません。失敗の要因はBPRプロジェクトが肥大化したことで、全社的な業務プロセス改善が追いつかず失敗に陥るケースが非常に多かったと分析されています。
こうした失敗から派生したのがBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)です。BPMは業務プロセスのPDCAサイクルの概念を持つ点がBPRとは異なるとされます。
PDCAサイクルの概念は1930年代にアメリカの統計学者ウォルター・シューハート氏が提示したものを、長年共同研究していた同じ統計学者のエドワード・デミング氏が1950年に日本に広めたものとされます。
現在のPDCAサイクルの概念については諸説あるため、ここでは触れませんが、一般的にPDCAサイクルは「設計」「製造」「販売」「調査サービス」を品質管理のサイクルとして捉えたものとして使われます。
抜本的な企業構造改革よりBPMによる業務プロセス改革のほうが理解されやすく、大幅なコスト削減効果や顧客満足度向上の実現につなげた企業も少なくありません。業務プロセスをモデル化しプロセスを設計するという手法で、問題点を可視化して業務効率化を実現するのに役立っています。
モデル化はまだしもプロセスの設計とは疑問に感じるかもしれませんが、不要な業務をそぎ落としてスリム化し、足りない業務を付け加えることであるべき姿に整えることだと理解できます。
この一連の作業にITシステムは必須であり、人手で行なわれている業務はシステムで自動化することで業務処理を簡略化する設計が現在の主流となっています。
BPRとBPMの違いについてはさまざまなことが言われていますが、BPMはより適用範囲が明確で継続的な実施を念頭に置いている分、経営者や現場に理解されやすいという特徴があります。
業務分析を行ない、業務分析にもとづくシステムの再構築を実行するという点でIT戦略は欠かせませんが、既存業務システムの再構築だけでなくBPMシステムを導入することで実現する部分も多いと言われます。
(2)PDCAサイクルとは
ご存知の通り、Plan(計画)、D((実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、品質管理を行う手法であるPDCA。
現在ではここからアレンジされ、「設計」「製造」「販売」「調査サービス」のサイクルとして解釈することもあるようです。ポイントはあくまでも「サイクル」であることで、この活動には終わりも始まりもありません。
事業が継続する限り延々と繰り返されるという概念ですので、BPRとは位置づけの異なるものです。
成功事例に見るBPRプロジェクトの筋道とは
それでは具体的に、BPRプロジェクトの筋道をまとめます。
BPR導入を進めるには、大きく分けて5つのステップがありますが、いずれにおいても正確な業務分析が必須であり、経営陣サイドだけでなく現場サイドにおいても詳細な業務分析を行うことが重要となります。
(1)業務を可視化する
失敗しやすいBPR事例では、最初に成功のビジョンが描けていません。目標と対象範囲を決定するため、現在の業務を可視化することが必要です。
コンサルタントという立場において部門を横断的に俯瞰し、業務フローと工数、収益や品質などの生産性においても数値を押さえておくべきです。
(2)業務分析により課題を洗い出す
業務の可視化が完了したうえで、本来あるべき姿を明示します。コンサルタントの立場としてはクライアント企業を外から見るため、競合他社の情報も集めておくと効果的でしょう。
(3)施策の策定
あるべき姿になるための課題と施策を検討します。ここでプロジェクトのスケジュールを立てて体制を整えることになります。同時に実施内容と優先度も決定します。
(4)実行
決定した施策を実行します。
(5)結果検証と修正
結果は必ず検証し、スタート時に掲げた成功のビジョンと照らし合わせます。ギャップがあれば分析して課題を洗い出し、軌道修正が必要な場合は都度実施します。成果については経営陣のみだけでなく、全社的に知らせることも重要です。
まとめ
企業がBPRに取り組む際、失敗しやすい事例を踏まえ、プロジェクト成功への筋道を整理しました。求める変革を実現するためには、現状と成功ビジョンとのギャップを埋めるために、不必要な要素を削り、必要な要素を付け加える業務プロセスの再設計が必須です。
現在、非常に多くのBPR案件の依頼がプロ人材派遣サービスに寄せられています。ぜひ人材登録の上案件に参画し、その手でBPRプロジェクトを成功に導くと同時に、ご自身のキャリア形成の一助としてください。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)