【SCMコンサルタントとは】転職に必要なスキルや資格は?年収やキャリアパスは?
最新更新日:2024/04/30
作成日:2022/04/22
SCMコンサルタントは、SCM(Supply Chain Management)の分野で企業の経営課題を改善し、収益増を図るコンサルタントです。営業・顧客の範囲が広がる現在、世界中の企業が必要としています。本記事ではSCMとは何なのか、SCMコンサルタントの年収や転職に有利な資格などを紹介します。
目次
■SCMの導入が活発化している背景
企業のグローバル化の進展
労働人口の減少
消費者ニーズの多様化
■SCMコンサルタントに求められるスキル
(1)部門間調整力
(2)語学力
(3)プレゼンテーション能力
(4)データ分析力
■SCMコンサルタントに関するQ&A
(1)SCMコンサルタントは激務?
(2)SCMコンサルタントに資格は必要?
(3)SCMコンサルタントに転職するには?
(4)SCMコンサルタントのキャリアパスは?
■SCMコンサルタントは豊かな年収とキャリアパスが期待できる職種
SCMとは
SCMとは「Supply Chain Management」の略です。サプライチェーンとは、原材料調達から製造、出荷、消費者の手元に届くまでのプロセスを意味します。つまり「購買と物流」一連のフローをSCMと呼びます。
SCM管理により利益率が向上すると、大きな収益につながるため「第2の収入源」と呼ばれることもあるそうです。
SCMの目的
SCMの主な目的は、サプライチェーン全体の連携と効率化を図り、企業の売上と利益を最大化することにあります。
サプライチェーンの連携強化
サプライチェーンにおける様々なプレイヤー(サプライヤー、製造者、物流業者、小売業者など)間の協調を促進し、スムーズな運営を実現します。
効率化の推進
生産計画の改善、物流の効率化、在庫管理の最適化などを通じて、サプライチェーン全体のプロセスを最適化し、無駄を削減します。
情報の透明性と共有
モノ・金・情報の流れをサプライチェーンの各段階で共有し、可視化することで、全体の最適化を可能にします。
売上の最大化と機会損失の回避
適切な在庫管理と需要予測を通じて、過剰在庫や品切れによる機会損失を最小限に抑え、売上を最大化します。
SCMの導入が活発化している背景
2000年代に入って以降、日本ではSCMの重要性が認識され、その導入が活発化しています。
企業のグローバル化の進展
近年、多くの企業がその活動を国際的な舞台に拡げています。生産拠点を複数の国に設置し、製品の組立から完成に至るまで、異なる国々で部品の調達や製造が行われるようになりました。
グローバルな展開は、サプライチェーンの管理を一層複雑にしています。異なる地域間での調整、法規制の遵守、物流の最適化など、多くの課題が生じているのです。このような状況の中で、SCMを用いた効果的な調整とリスク管理が、企業の持続可能な成長と競争力の維持に不可欠となっています。
労働人口の減少
日本をはじめとする多くの国々で労働人口が減少している中、労働力の効率的な利用が経済全体にとって重要な課題となっています。特に日本では、少子高齢化が進行する中で、作業労力の不足が顕著です。
この労働力不足を補うため、多くの企業がSCMを活用して、生産プロセスの効率化、自動化、そしてロボティクス技術の導入を進めています。最新技術を駆使することで、少ない人手でより多くの作業をこなし、生産性を高めることが期待されているのです。
消費者ニーズの多様化
インターネットとデジタルテクノロジーの進化は、消費者の購買行動を大きく変えました。特にEC市場の拡大により、消費者は24時間いつでもどこでも購入が可能となり、さまざまな製品やサービスに対する期待も高まっています。
このような変化に伴い、企業はより迅速かつ柔軟に市場の変化に対応する必要があります。
SCMを利用することで、在庫管理を最適化し、需要の変動に応じた生産調整がスムーズに行えるようになり、消費者の多様なニーズに効率的に対応することができます。
SCMコンサルタントとは
SCMコンサルタントは、SCMの分野から企業を経営課題解決やコストの削減に導くことがミッションです。ほとんどのケースでは、SCM管理システムを提案・導入し、任務にあたります。SCM管理システムの効果や役割をクライアント企業に提案し、効果を予想・調査・分析し、導入から運用までコンサルティングを担当します。
また、SCM管理に必要な人材の調達、システムの選定、プロジェクトチームのサポートや管理、コスト管理などもSCMコンサルタントの仕事です。場合によってはBPOするかどうか、といった判断も必要となるでしょう。
SCMコンサルタントの業務内容
調査と分析
SCMコンサルタントは、まずクライアントのサプライチェーンの現況を詳細に理解し、問題点を把握します。この過程では、社内外の多くの関係者からの情報収集が必要であり、広範囲にわたるヒアリングが求められます。
戦略の策定と計画
課題に対応するための戦略を策定し、目標を定め、どの業務プロセスから取り組むべきか、またどの種類のシステムを利用するかを決定します。SCMシステムを選定する際には、業界の最新動向も参考にすると良いでしょう。
SCMシステムの設計と導入
選ばれたSCMシステムの設計から開発、テスト、そして導入までの全過程を支援します。時には複数のシステムを組み合わせることや、既存のシステムに新たな機能を追加する場合もあります。ここで、クライアントの具体的な要望に合わせたカスタマイズが求められることも多いです。
効果測定
システム導入後は、クライアントに対する教育や、システムの保守・運用にも関与します。さらに、導入したシステムの効果を測定し、目標に達していない場合は別の戦略を策定し実行に移します。
SCMコンサルタントになるには
SCMコンサルタントになるには、まず購買や物流の知識が必要です。さらにSCM管理システムの基礎情報も必要とされるでしょう。購買部や物流業界の実績、SCM管理システムの選定などの上流工程にかかわった経験などが武器になります。
SCMコンサルタントへの道筋として、製造やtoB、toCへの製品販売を主軸に事業展開をする企業や、SCM管理システムを主幹事業とした企業に就職する手があります。ある程度、SCM領域で実績や経験を積んだ後は、SCMに強いコンサルティングファームに所属したり、フリーランスSCMコンサルタントとして独立したりして複数の企業を相手に手腕を発揮することも可能です。
いずれにしても、SCMコンサルタントは、まだまだニッチな分野といえます。たくさんの求人からSCMコンサルタントとして転職、参画を考えたい場合は、コンサルタント紹介を行う上流人材紹介サービスに登録して案件を見比べたり、担当のエージェントに相談したりするのがおすすめです。
SCMコンサルタントの年収
弊社のSCMコンサルタント案件を参考にすると、100%稼働と仮定して月収の提示は50万~150万円程度です。年収に換算すると、600万~1800万円程度と高年収が期待できます。SCM管理システム運用が軌道に乗れば、効果が視覚化しやすい分野なので、成功報酬などの交渉も可能でしょう。
会社員だと、400万~1300万円ほどと年収の幅が広く、一番厚い年収の層は600万~750万円です。経験と実績、案件の質によって年収に差がつく職業だといえるでしょう。
SCMコンサルタントに求められるスキル
SCMコンサルタントには、コンサルタントとして課題解決能力やSCM領域の知見と実績、SCM管理にERPなどのITシステムやオペレーションを導入した経験などが求められます。ほかにはどのようなスキルが強みになるのでしょうか。
(1)部門間調整力
サプライチェーンマネジメント(SCM)においては、製造、物流、販売といった多岐にわたる部門が密接に連携する必要があります。それぞれの部門が持つ目標や作業プロセスが異なるため、これらを効率良く調整し、全体としての最適な成果を達成するためには、高度な部門間調整力が求められます。
この能力を有するSCMコンサルタントは、異なるチームや部門の間に立ち、目標の調和を図りながら、各部門からの意見や要望を取りまとめ、課題に対して統一されたアプローチを確立します。
(2)語学力
製品を販売・製造する地域が海外に及ぶ場合、英語をはじめとした語学力が求められます。さらに中国やヨーロッパ・アジアの特定言語も理解できると、SCMコンサルタントとして重宝されるでしょう。
語学力を示すには、英語ならTOEIC、ケンブリッジ検定などの資格を取得するのが早道です。日々の業務の中でこうしたインプットを忘れないようにしましょう。
(3)プレゼンテーション能力
SCMコンサルタントは、SCM管理システムを企業に提供し、運用にまつわる問題を解決する能力が求められます。しかし、SCM管理システムやオペレーションの変更の必要性をクライアント企業に理解させなければ、プロジェクトを開始させられません。
そのため、営業担当者に同行し、クライアント企業を導入検討に導いたり、追加のコストがかかったときは相手が納得できるよう説明を行ったりといった業務も求められます。コミュニケーション能力の中でも、提案力や説得力といったプレゼンテーションの場で能力が必要となるでしょう。
(4)データ分析力
SCMの効率化と最適化には、複雑なデータセットの分析が不可欠です。データ分析力を有するSCMコンサルタントは、大量の生データから有益な情報を抽出し、それを基に現実的かつ効果的な解決策を導き出すことができます。この分析には、販売のトレンド、在庫レベル、供給チェーンのボトルネック、顧客のフィードバックなど、多様なデータソースが関与します。
専門家は、統計的手法や機械学習アルゴリズムを活用してデータを解析し、より精度の高い需要予測やリスク管理策を策定します。また、データドリブンなアプローチを取ることで、コスト削減、効率向上、顧客満足度の向上といった具体的な成果につなげることが可能です。
SCMコンサルタントの将来性
日本国内はもとより、世界中の国々が自国の人口低下を懸念しています。そのため、ほとんどの国の企業が国内だけでなく、世界中を相手に事業展開しています。購買や製造、物流などSCM管理が持つ可能性と能力に期待する企業も多く、その道のプロであるSCMコンサルタントの需要は下がることはないでしょう。
また、多くの企業が第三者の目線を取り入れなければ、経営課題解決、事業成長は難しいと考えています。あらゆるコンサルティング業がそうであるように、SCMコンサルタントならではの視点や論理が今後も必要とされるでしょう。
SCMコンサルタントに関するQ&A
(1)SCMコンサルタントは激務?
SCMコンサルタントはほかのITシステムやツールに関するコンサルタントに比べて、他部署や外部企業と足並みをそろえて業務を行う必要があるため、状況によっては激務になる場合もありえます。スケジューリングをうまく調整することで比較的緩やかに働くこともできるでしょう。
言い換えれば、関連する部署や企業によって激務の波が避けられないこともあるようです。緩急がある働き方に疑問がある人は、契約の段階で企業と粘り強く交渉しましょう。
(2)SCMコンサルタントに資格は必要?
SCMコンサルタントになるには資格が必須ではなく、実績やスキルが重要視されます。ただし、SCMコンサルタントが取得していると有利な資格として、すでに紹介している語学資格やERPなどITツールに関する資格があげられます。
ほかには、SCM領域で最も権威の高い資格として「APICS認定資格」があります。APICS認定資格には2種類あり、どちらも取得していると、国際的にもSCMのプロフェッショナルとして一目置かれることになるでしょう。資格名と領域は次の通りです。
- CPIM:需要予測、生産計画、在庫管理、S&OP、購買・調達マネジメント、受発注システムやERPのシステム構築とサポート
- CPCP(受験資格に要件あり):オペレーション戦略、グローバルなSCM管理、SCMシステムやSC管理技術
また、国内資格として日本サプライチェインマネジメント協会(日本SCM協会)が運営する「SCM検定」もおすすめです。特にロジスティクスに特化した実績・能力を証明したい人は取得しておくとよいでしょう。検定合格者は「物流コンシェルジュTM」を2年間名のることができます。
引用:Apics
(3)SCMコンサルタントに転職するには?
SCMコンサルタントに転職する人の多くが物流業界や購買部での経験を積んでいます。ほかにもITツールの中でもSCM管理システムに強いITコンサルタントやPM、PMOからの転職も多いようです。
ITシステム・ツールを用いたコンサルティングの中でも、かなりニッチで、効果が視覚化しやすい分野です。資格取得や自己研鑽の上で目指すのが望ましいでしょう。
こうした実績、資格があっても実際にSCMコンサルタントとして即戦力になれるかどうかは人によって異なります。自分の能力に見合った企業を紹介してくれる人材紹介業などへの登録がおすすめです。
(4)SCMコンサルタントのキャリアパスは?
SCMコンサルタントのキャリアパスとして考えられるのは、一社に長く所属し、SCMにまつわる部門での出世を目指したり、フリーランスコンサルタントとして複数の企業に出入りしたりすることです。どちらも経験と実績を積むことでかなりの年収アップが見込めるでしょう。
SCM管理システムの導入や運用には、プロジェクトの現場と製造・物流の現場、経営層、そして外部のパートナー企業などとしっかりコミュニケーションを取る必要があります。こうした業務の中でPMO、経営コンサルタントとしての能力も磨かれることから、さまざまなキャリアパスが描けるでしょう。
SCMコンサルタントは豊かな年収とキャリアパスが期待できる職種
SCMコンサルタントはサプライチェーンを管理するシステムや仕組みの導入を提案、実行、運用するコンサルタントです。SCM管理システム導入によるコストや手間の削減、収益増や経営課題解決がゴールです。
物流や購買などの経験・実績が重視される職種ですが、資格を取得することで案件参画が有利になる場合もあります。語学やSCM領域で自己研鑽に努めましょう。経営コンサルタントやITコンサルタントとして、もう一段特化した分野が欲しいという人にはおすすめの資格です。
また、成果が可視化できる業務でもあるので、高年収や成功報酬が期待できます。今後、世界中でも需要が伸びるとみられているので思い切ったキャリアパスも描けるでしょう。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)