「日本から世界を圧倒するビジネスを」 若くして独立した起業家が挑むネットスーパーの新しい形
「ラストワンマイル」から「オンリーワンマイル」へ。若き起業家が導き出した日本の社会課題を解決する新しいネットスーパーへの挑戦。
みらいワークスがお届けする「プロフェッショナリズム」、今回のインタビューは正古(しょうぶる)明さん。
自らのやりたいことを追い求め、誰もが羨む大手総合商社を3日で辞める決断をした、異色の経歴をお持ちの正古さん。今はリリースを間近に控えた新サービス“Racker”を起爆剤として世の中を変えようと奮闘中。若くして起業された正古さんのインタビューは、同じく若くして起業を志すビジネスパーソンにとって共感・共鳴する部分がたくさんあること間違いなし。思わず応援したくなる正古さんのインタビューをぜひご覧ください。
正古 明
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
幼少期より北海道やアメリカシカゴに居住し、流通分野に強い関心を持つ。慶応義塾大学卒業後、伊藤忠商事株式会社、ITベンチャー企業を経て株式会社Diezonを創業。ベンチャー企業では営業から、戦略立案、システム要件定義、マーケティング支援まで幅広く経験し、独立。現在は株式会社Diezon代表として、システム開発事業を主軸に、ネットスーパー自社サービス“Racker(ラッカー)”のリリースに向けて奮闘中。
正古 明
やりたいことを追い求め、大手総合商社を3日で退職を決意
正古さんのキャリアを拝見すると、新卒で入社した誰もがうらやむような大手総合商社を3日で辞められたことに目が留まるのですが、そこにはどのような背景があったのでしょうか?
正古さん(以下、敬称略):お恥ずかしいかぎりです(笑)。もともと大学では経済や金融を研究していたこともあって、就職活動においても政府系の金融機関やメガバンクを第一希望に考えていました。
その一方で、大学時代には色々な学生団体の活動もしており、その中の一つとして、インターンビジネスとまでいかないのですが、中国人の学生を日本に招き、日本の学生と一緒に日本の大手企業でビジネスを学ぶようなプログラムを開発していました。その経験は自分の中でもかなり楽しかったというか、ワクワクできる経験だったというのが心の奥底にあり、就職活動の面接を重ねていくうちに「あれ?もしかして自分は金融じゃないかも・・・」という気付きが生まれました。
ただ、それに気が付いた時は既に就職活動も佳境だったこともあり、そこからエントリーを増やせるような段階ではなかったため、その時点で受けていた企業の中で最も自分がやりたい事業ができる会社は?と考えた結果、その総合商社に決めたというのが背景です。
なるほど。実際に入社してみたら、自分がやりたいこと、やりたい事業はできなそうな環境だったということなのでしょうか?
正古:配属が4月1日だったのですが、その時点での配属が「トレーディング」になりまして「これは間違いなくできないな」と(笑)。それで3日目に退職の意を伝えました。
ただ、今でもこの会社には感謝しているのですが、自分の辞めるという決断に対して、誰も責める人がいないどころか、「今辞めて、次大丈夫なのか?」や「親御さん心配しないの?」など気にかけてくださり。私自身も面接の段階で「なんでもやります!」と言っていたわけではなく、明確に「こういうことがやりたいから御社へ行きます」という話をしてきたこともあって、「嘘を付いたわけではないし、配属に関してはしょうがない部分もある」という正直な対応をしていただき、本当に器の大きい会社だなと感じました。
人事の方には申し訳なかったなと思う反面、その翌年から配属面談の制度などが整備されたらしく、その後の新卒入社の方々が少しでも自分の希望が叶えられて、より良い環境で働けているのだとすると、そういう意味では少しは貢献できた部分があるのかも、と自分に言い聞かせています(笑)
たしかに!(笑)しかし、3日で辞めてしまったとすると次のステップの就職活動が大変だったのではないですか?
正古:1ヶ月ぐらいはやることがなくフラフラしていました。ただ、おかげさまでというか、今もそうですが、当時は人手不足が加速していた頃でもあったので、前職の短期就業はそれほどディスアドバンテージを感じることはありませんでしたね。
そして一ヶ月経った頃からIT業界を中心に会社回りを始めました。当時のIT業界は一巡、二巡、三巡くらいしていて、一巡目でなんとなく立ち上がり、二巡目で拡大し、三巡目で失敗して戻ってくるという状態でした。会社としてメイン事業も新規事業も両軸で拡大しているような企業は多くなかったのですが、私が次に入社させていただいたベンチャー企業は「色々とやっていて勢いがあるな。面白そうだな。」と感じさせてくれ、「ここならば自分がやりたいことができるかもしれない」と思い、ご縁があって入社しました。
2社目となるベンチャーには2年半ほどいらっしゃった後、独立・起業することになるわけですが、正古さんはもともと独立しようと考えていたのでしょうか?
正古:実は、僕はもともとそれほど独立志向が高かったわけではないのですよ。むしろファーストキャリアの大手総合商社に入ったのも看板的な意味合いもありました。その会社は、優秀な人材と豊富な資金も持ち合わせており、インパクトのある事業を実現するにはこれ以上ない環境だと思っていました。
2社目のITベンチャーに関しても、将来的に独立しようと思って入社したわけではありませんし、かといって末永くやろうと思って入ったかというと、それも違うかもしれない。2年半はベンチャーらしく、川上から川下まで、気が付いたら一通り全部やらせてもらったというのもあり、一定の満足感を得られたのが結果的に2年半だったという感じですね。
独立・起業するに至った具体的な「きっかけ」となる出来事はあったのでしょうか?
正古:明確に独立する動機というか、きっかけがあったかというと特にはありません。「自分で何かやりたいな」という感情があったわけではないのですが、組織に属している以上、やはり会社の方針や組織の在り方、そういった要素は大きく影響されるわけで、もちろんその精神が相互にフィットすれば凄くハッピーだと思いますが、それは必ずしもそうならない場合もあります。
自分が最善だと思うお客様へのサービスを作り、自分が最善だと思う方法で売っていこうと考えると、必然的に自分が思う組織・チームを作っていかなければならないと行きついたのが、独立・起業だったという形ですね。
新しいネットスーパーの形 ”Racker(ラッカー)”
実際に独立・起業されてみて予想通りだった点、逆に予想とは全く異なっていた点などがあれば教えてください。
正古:結構、予想通りだったことの方が多かったかなと思います。「最初は辛いんだろうなぁ・・・」などの予想はまさに的中しています(笑)。はじめはもちろん顧客もいないわけですし、年齢的なこともあり営業的な面でも思うようには仕事は取れなかったですし。そこはある意味「予想通りに苦労した」と思っています。
ただ、収入的に厳しい時期は確かにありましたが、一人身だということもあって食べるものがないとか、極貧生活を送らなければいけなかったとか、そういう状況には陥らなかったのでネガティブには捉えてはいません。認識が甘いだけかもしれないですが(笑)。
予想に反したところと言えば、サラリーマン時代には無かったような「お声掛け」や「紹介」・・・「こういうことってできる?」というような相談を受ける機会が増えて、それはすごく嬉しく思っています。独立・起業し、こんな風に自由にしながらも一生懸命やっているだけですが、「こんなお話もいただけるのだな」と感じる場面もしばしばあり、それは嬉しい誤算でしたね。
現在は起業されて1年半ほど経つかと思いますが、現在展開されている事業や、これから展開していこうと考えているサービスがあれば是非とも教えてください。
正古:まず主軸となる事業はシステムの受託開発です。ご飯を食べていくためにも、前職の経験を活かしながら今はこれを主軸としてやっています。
そしてもう一つ。まだ1円も儲けていない事業なのですが(笑)、今年の8月から某企業と組んでリリース予定の”Racker(ラッカー)”というサービス、一言で言うならば「ネットスーパー」ですが、この立ち上げに社を上げて取り組んでいます。
ECの分野は既にかなりの分野で高止まりしており、家電やアパレルの分野などはパイの奪い合いの時期に入ってきています。そんな中でも、市場規模は大きいがEC化が進んでいないのが、いわゆる日用品や食品領域です。ここにECとして参入するにはと考え続けた結果、この”Racker(ラッカー)”というサービスに辿りつきました。
具体的にはどのようなサービスなのでしょうか?
「一番近いスーパーから商品を届ける」をコンセプトにしています。ECというと「amazon」が席巻していますが、あまり「amazon」で食品を買うという感覚は浸透していないのではないかと感じます。また「生協」の宅配サービスだと、届くまで1~2週間かかってしまう。よく「ラストワンマイル」という言葉は耳にしますが、私たちは「オンリーワンマイル」でいいじゃないかと思っていて、「いつも使っている一番近いスーパーから2時間で配送される」、これが実現できればかなりのニーズがあるのではないかと思っています。
たしかに食品を買うのであれば、いつも通っている近所のスーパーは安心感がありますね!具体的な展開エリアや提携スーパー等は増えているのでしょうか?
正古:まずは東京練馬区近辺のエリアからスタートしようと考えています。スーパーというとイトーヨーカドーやライフ、サミットといった大手スーパーが頭に思い浮かぶかと思いますが、都内だけでも、一店舗だけ経営しているというスーパーは実は50社ぐらいあるんですよ。
そういった店舗は「システム投資してネットスーパーを作りましょう」と言ってもやらないですよね。しかし、現場の肌感覚としては如実に「ネットに流れている」と感じている。彼らの強みは、顔見知りでずっと利用してくれている固定客がいる点にあるのですが、ご高齢者の方々は徐々に家から出にくくなってきているという現実があります。ではすぐにネットで注文かというと、「いやまずは電話で」という状況もあると。そういう“痒いところに手が届く”ようなサービスにしていけたら面白いと思いつつ、まず一つテストケースを作るために走っているところです。
「日本から世界を圧倒するビジネスを」実現できるインパクトを
なるほど、それは日本の高齢化問題の解決や地方創生にもつながる興味深いサービスですね!それでは、その先にある会社として、そして正古さん個人として目指している姿や展望があればお聞かせください。
正古:少し話を戻すと、僕はずっと経済・金融の勉強をしてきたのですが、産業・金融政策系の勉強をしていると、やはりハードの時代からソフトの時代に移ってきていて、日本の産業は衰退していくということが一般論として語られています。「しばらくは日本から世界を席巻・圧倒するような事業や産業はでてこないな」と感じていて、当初はそれを金融や政策側からサポートするという立場で実現していきたいと思っていました。
しかし、今は偉そうにもサポートできるような立場にいないので、「自分でやるしかない」と感じており、今の会社「株式会社Diezon」は「日本から世界を圧倒するビジネスを」をモットーとしており、HPのトップにも掲げています。ですので、とりあえず3年くらいでamazonを抜くことが目標です!(笑)
3年でamazonですか!?(笑)
正古:それは冗談ですが・・・(笑)、インパクトがないというのはその産業にニーズがないということですし、事業に魅力がない、サービスに魅力がないということです。
企業として大きくしていきたいというよりも、我々のサービスが世の中にとって必要であり、インパクトがあるということの一つのバロメーターという意味で、ある程度の規模の拡大というのは目指していきたいとは思っています。ただ、現時点では具体的に3年後にどのくらいの規模という計画が立てられているわけではありません。
では最後に、これから独立や起業を志している方にコメントやアドバイスがあればお願いします。
正古:そうですね。僕の人生経験はまだまだ短いのですが、「チャンス」は結構誰にでも来るものなのではないかなと、感覚としてそんな気がしています。それを手にできるかどうかは、キチンとその来たるべきタイミングに向けて常に準備できているかであったり、そのチャンスに気付けるかどうかが重要なのかなと。いざチャンスが来た時に「うちでは対応しきれません」とか、そもそも気付けないとか、気付かないうちにチャンスを逃していることも多々あると思います。
今回みらいワークスさんは上場されましたが、本当に素晴らしいと思っています。それは決して人手不足や働き方改革といった時流に乗ったからというような、“たまたま”では決してなく、常に準備をして、そのチャンスを逃さなかったからですよね。その点がなにより素晴らしいなと思います。なので、これから起業される方もいつくるかわからないチャンスに向けて準備だけはしておいてほしいなと思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
「日本から世界を圧倒するビジネスを」という夢あふれる大きなお話をするのと並行して、「しかし、まずは新たな挑戦である“Racker(ラッカー)”を信用して選んでくれた1社目のスーパーさんと、とことん責任をもってやりたい」とおっしゃっていた正古さん。将来的な大きな夢と同時に、人と人との信頼・信用を第一に考え、そこに真摯に向き合う経営者としての姿勢には、みらいワークス一同、本気で応援したくなりました。
そんな熱い想いに満ち溢れた正古さんが手掛けるネットスーパー”Racker(ラッカー) ”。サービスインした暁には是非皆さんも利用してみてはいかがでしょうか。