中途社員が力をいち早く発揮するために必要なものは、○○だった!
人間関係は、仕事のパフォーマンスにも多大な影響を与えるもの。『誰がどんな行動を取っていて、どんな効果をもたらしているか』を、驚きの方法で見える化したリクルート・キャリアの事例をご紹介します。
私が新卒で入社したアクセンチュア(当時はアンダーセン・コンサルティングという名前でした)は、アルムナイもしくはEX-ACと呼ばれる退職した人のネットワークがとても強い会社でして、さまざまな活動が行なわれています。先日も人事・組織に関わる方のオフ会が開催されましたが、私はここには毎回参加していまして、色々な企業での取り組みや実態について勉強させていただいています。今回は、リクルート・キャリアで事業開発をやられている高森さんと、新卒採用支援の先駆けとも言えるJobWeb社の会長である佐藤孝治さんがプレゼンテーターとして、それぞれの会社での取り組みについてお話を聞かせてくださいました。
どちらの方のお話もとても勉強になりましたので、それぞれ書きたいところですが、JobWebの話は書いてはいけない内容もあったと思いますので、リクルートについて書こうかなと思います。リクルート・キャリアは、新卒採用メディアや中途採用メディアの運営、人材紹介などをメインとしているリクルートの中核グループ会社の一社ですが、そこの事業開発となるとどんなことをしているのだろうか?と気になるところですよね。今回聞いた内容は他のところで講演などもされている内容なのでブログ掲載も問題ないとの了承をいただいたので、思うままに書かせていただきます。
リクルート・キャリアの取り組みの概要は、『社内コミュニケーションの頻度や人間関係の深さ』と『仕事への満足度』がどのように相関しているのかということを、ビッグデータを活用して紐解いていくというものです。
具体的に、二点ご紹介します。
まず一点目。入館証に電子タグを付けて実際の接点などを測定したり、マイクロソフトとアライアンスを組んでオフィス365でのメールやスケジュールの情報、誰が誰とどんなコミュニケーションを取っているかなどの膨大なビッグデータを分析し、何らかの示唆を得ることに取り組んだそうです。かなり多くのインサイトを得られたのでどれも興味を引かれましたが、私が特に面白いと思った点は、『2ヶ月の間に20人以上の人とミーティングをしている人は、仕事に対して充実感を得ている』という結果です。逆に言えば、20人以下だった人は『仕事の充実感を感じていない』ということになりますね。
仮に1チーム5~7人程度だとすると、2ヶ月の間に20人以上の人たちと関わっていたということは、チームを超えてさまざまな部署の方々と仕事をしていたということになります。これは、『いろんな人と関わり合いを持ちながら仕事をすることによって、充実感も得られる。それに伴って、パフォーマンスも上がる』ということを表しているのだと感じました。このような傾向があるというのはなんとなくは理解していましたが、実際に分析した結果として数字で表現されると、本当にそうなんだなとしっかり腹落ちしました。
もう一点は、人と人との人間関係の強さを『見える化』するという取り組みです。
営業職ではチーム内メンバー同士の距離が近く、数人の塊がチーム毎にあり、エンジニアは塊がない。事業開発の人は、営業、エンジニアなど幅広いチームの人と距離が近いなど、職種によって日常的な人と人との距離に大きな違いがみられたとのことでした。
そしてその中でトピックスとして取り上げられていたのが、ある中途採用の方のお話です。その方のデータを見てみると、入社当初は数名としか関係が深くなく、またパフォーマンスも発揮できていない状況でした。中途採用で入った人は何か困ったことがあったときに「誰に聞けばよいかわからない」「聞きたくとも周りとの人間関係もない」という状況はよくある話ですよね。その方もそのような状況に置かれていたですが、ある時を境に多くの方と人間関係を構築し、仕事の面でも満足度が高めていきました。どうしてこのような変化がおきたのでしょうか?
調べてみると、その方の隣には、MVPを獲得するほどに活躍している方が座っていました。その方に相談するようになってから、「この件だったら○○さんに相談してみるといいよ」といったように、社内の誰に何を聞けばいいのかをナビゲートしてもらえるようになったそうです。その状況の変化のお陰で社内ネットワークが広がり、仕事のパフォーマンスと満足度に繋がっていったということだと思います。リクルートの中でも、このようなことが起きているだろうと認識はされていましたが、実際に見える化したことで、それが『事実である』と確認することができました。これからは、どうやってこのような事例を『仕組み作り』として定着させていくかについて考えていくようです。
アクセンチュアも新卒が強い会社で、中途採用の人がなかなかパフォーマンスを発揮できないという課題をかつては抱えていたと思います。私が入社した2000年の頃には、社員2000人に対して、毎年新卒が300人入社するような状況ですから、自然と新卒社員が中心となって会社のネットワークが出来ていきます。そしてこのネットワークの強さがコンサルタントとしてのパフォーマンスにも影響してきます。
例えばあるプロジェクトで困ったことが起きた時に、それについて気軽に聞ける人がいるだけで、仕事の進み方が全く違います。KX(Knowlede eXchange)と呼ばれる、社内のさまざまなアセットを管理するグローバルでの共通の仕組みがあり、そこを閲覧することでかなりの情報にアクセスすることが出来ましたので、普通の会社に比べると社内のアセットへアクセスしやすい環境が整っていたと思います。一定の承認プロセスはありますが、例えば競業企業や同業界のグローバルのリーティングカンパニーがどのような取り組みを行なっているのかなど、プロジェクトの成果物を見ることが出来ます。
しかし、そこにすべての成果物が収められているのではありませんし、また本当に役立つ示唆を得た時には実際にプロジェクトを進めていた人に話を聞くことが必要になりますので、最終的には『その人にリーチできるかどうか』が重要になります。コンサルタントは誰もが多忙なので、同じ会社とはいえ、全く知らない人から質問が来ても親身に応えてくれないこともあるでしょう。そんな時にも、誰かからの紹介で「○○さんという人が□□のプロジェクトで困っているらしいので、相談に乗ってあげてください」というやりとりがなされれば、力をかしてもらえる可能性は高まるでしょう。だからこそ、社内に聞ける人がいること、聞ける人に繋いでくれる人が多いこと、つまりは『社内ネットワークをしっかりと持っていること』も、パフォーマンスを発揮する上で大切なケイパビリティとなるのです。中途採用の人は社内の繋がりが弱いために、パフォーマンスを発揮できない状況に陥りがちです。コミュニティを広げる努力は、仕事の成果を上げるためにも必要なことなのです。
また、他の観点でのお話ですと、社内のどのプロジェクトに誰がアサインされるのかというのは毎週のように開かれている‟アサイン会議”と呼ばれているミーティングで上の人が決めることが多いのですが、スタッフ側にも選択権があります(拒否することもできます)。そんなとき、中途採用で入社したばかりのマネージャーのプロジェクトにアサインされることになったスタッフは、「あのマネージャー、まだコンサルティングの経験が浅そうだから、プロジェクトが火が噴きそうだな、やだな」「別のマネージャーに相談して、他のプロジェクトに入れてもらおう」なんてことを考える人もいるかもしれません。優秀なスタッフは、すでに在籍しているマネージャーが自分のプロジェクトで囲ってしまっている・・・なんていう事情もあるので、中途で入ってきた人は、社内での人繰りで苦労している場合も多いのではないでしょうか。(そんな時こそ、ぜひみらいワークスに相談していただきたいですが!【コンサル人材をお探しの法人様はこちら 】)
これらの観点からも、コンサルティング会社では社内での幅広い人間関係、信頼関係が重要になってきます。そのような背景もあり、今回のデータを見て自分の感覚を腹落ちさせることができたというのは大きな学びでした。
みらいワークスは中途採用が中心となっていますが、彼らが出来るだけ早くみらいワークスに馴染んで本来の力を発揮してもらえるようになるためには、もちろん本人の覚悟や頑張りが重要ですが、既存メンバーのサポートも不可欠なのだということを改めて感じました。9月からみらいワークスには3人の仲間が増えましたが、既存メンバー1人1人が、「どんなサポートができるのか?」と主体的に考えて行動することで、3人の立ち上がりの早さには違いが出てくることでしょう。新しいメンバーを受け入れるということを『自分事』として協力し対応していくことが、主体性でありチームワークを発揮するということですので、社員みんなでそれを実践していきたいと思います。