キーワードは“意思決定”~AIが進化しても『人』がやり続けるべきこと、『人』でなければできないこと~
「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」― そんなみらいがもうすぐやってきます。あなたは楽しみですか?それとも・・・
先日、当社で月に一度開催している登録コンサルタント向けイベント“みらコミュ”のゲストスピーカーとして、IBM社のインキュベーション組織である“Blue Hub”の森住さんにお越しいただきまして、『IBM Watsonのご紹介とAI時代に必要なスキル ~次なるパラダイムシフトを乗り越える~』というタイトルでご講演いただきました。
世界最高峰のAIのひとつであるWatsonですが、AIの進化が人類にどのような変化をもたらすのか。それに対する考え方は人それぞれだと思います。 AIやロボットは人の仕事を奪い取る存在、といった考え方をする人もいるかもしれませんが、IBMは“TO HELP PEOPLE”、人を助ける存在と定義しているとのこと。人が意思決定する際の“サポート”をするものであり、意思決定そのものをするわけではない、という考えのようです。
確かにいくらAIが発達しても、未来を予想したり、的中させることは難しいので、“不確実性の中で意思決定する”という機能は、AIで置き換えることは難しく、人がやり続けなければならない仕事でしょうね。
“100点の正解”がわかっている場合、それは意思決定とは呼べません。選択肢が複数あり、どの選択肢も見方によっては正しいような場面こそ意思決定をしなければならない場面です。そして意思決定をするために必要な情報が100%集まることはないので、そのような状況で意思決定し道を決め進んでいけるかどうかが、リーダーに問われることです。そのリーダーの意思決定をサポートしてくれる、それがWatsonです。そんな近未来的にも感じる世界が、もう既に訪れているのですね。
2011年に米デューク大学(当時)のキャシー・デビットソン教授 はNewYorkTimesで「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」 とコメントしています。世の中が大きく変化し、AIやロボットの発達により今存在する仕事がそれらに置き換わっていく。これはAIやロボットが人の仕事を取り上げるのではなく、人間はさらに生産性が高い仕事、人間でなければ出来ない仕事に特化していくことを意味していると考えています。「意思決定する」という仕事は人間でなければできませんが、それ以外にどんな仕事が人間でなければ出来ないのか?今は存在しない職業として、どんなものが生まれてくるのか?・・・考えるとワクワクしてきますね!
さて、上記の講演の中で、Watsonが私(岡本)の性格判断をした結果を紹介してくれたのですが、その結果はなかなか面白いものでした(この記事のトップの画像です)。みらいワークスのホームページに掲載されている代表挨拶の文章をインプットにしてWatsonが言語分析したとのことですが、 性格の特徴は「分析好きなタイプであり、また活発なタイプ」であり、単なる個人の楽しみよりも大きな目標を伴う行動を優先するとのこと。また人が通った道よりもわが道をいくことを大切にするらしいです。そしてSelf discipline(自己規律)とSelf efficacy(自己効力感)が100%、Assertiveness(積極性)が99%と高い数値を示していました。
Self effcacy(自己効力感)という言葉は初めて耳にしましたが、「ある状況下において求められる適切な行動を選択し、遂行する能力を自分が持ち合わせているか否かの認知」を意味する心理学用語のようです。“目標達成をするために自分がその能力を持っていると信じられる力”、といった感じでしょうか。この言葉はこれまで知りませんでしたが、確かにこの感覚は強く持っています。性格判断というわけではないですが、第三者的に言語解析した結果を自分で見るのは、自分を振り返る意味ではとてもいい経験でした。
そしてこのWatsonによる性格判断を受けた感想ですが、いまの技術レベルのAIはあくまでも『今時点でのその人が外に出しているアウトプットをもとに、性格の傾向を見える化している』だけであって、内面で思っている事や、今後の成長性(ポテンシャル)を測る事は難しいのだろうな、という事を感じました。もちろん今の時点でのAI技術ではそうなっている、ということでしょうが、ポテンシャルのようにこれからどうなっていくかわからないことについては、AIは確立を出すことはできますが、意思決定することは出来ません。そう考えると、人材に関するAI活用についても、『AIは意思決定をサポートする存在』という位置づけになっていくのではないかと思いました。
例えば外部から人材を採用する際に、リクルート社のSPIが何点以上ないと足切りする、というルールで採用業務を運用している会社が存在します。これは過去に採用した方とその実績から業務を効率化する為にこのようなルールを作っているはずです。SPIの基準点を下回ってもパフォーマンスが高い方、実はポテンシャルを秘めていた人もいるはずですが、その確率が低かったので、基準点を設けたということですよね。AIの人材領域への適用方法も同じような感覚になっていくのではないでしょうか。
その人材が活きる/活きない、パフォーマンスを発揮する/発揮しないというのはその人の能力と努力にも起因しますが、上司や周りの環境も大きく影響します。あまりにも影響する条件が多すぎるので、人の能力を評価するのは難しく、だからこそこの領域でのAIの発展が期待されているのです。IBMの方に聞いても、この領域はまだまだ時間がかかると仰っていましたが、日本が誇る“人材”をより活かすためにも、この領域の発展に期待しています。