それは“過剰な備え”かも?リスクとゲインのバランスを見て、“取るべきリスク”を見極める。

作成日:2018年2月8日(木)
更新日:2018年2月13日(火)

日本人は、リスクに対して過剰に反応する傾向があるようです。ビジネスにおいて、“リスクがない”という状況はありえないもの。挑戦する心も大切に。

毎年のように気候が変化しているこの数年。同じ週でも寒暖差が激しすぎるなど、日本の気候のスタンダードが変わってきたのかなと個人的に思ったりしています。

 
先日の関東圏の大雪は、首都圏の交通網に大打撃を与えました。みらいワークスでは早めに業務終了として、メンバーには早帰りをしてもらいました。私自身は会食が入っていまして、先方とどうしようかとメッセンジャーでやり取りした結果、「お互いに忙しいから今日を逃したら次のスケジュール調整も大変そう。早い時間から飲みますか」ということになり、普通に会食に行ってまいりました。帰りは電車も遅延しているようでしたので、雪の中を30分ほど歩いて帰りましたが、久しぶりに雪国を散歩している気分になり、なんだか楽しい夜でした。

 

さて、先週も首都圏で雪が降りましたが、前回の大雪の影響か、さまざまな雪対策がされていると朝のニュースでやっていました。あらかじめ道路を通行止めにしておくなどの対策がとられていたようなのですが、実際はそれほど雪は積もっておらず、あまりにも過剰に反応しすぎたのでは・・・と感じてしまいました。もちろんリスクに備えるのはとても大切なことではありますが、「いき過ぎた備え」はかえってマイナスに働いてしまう事もあるのではないかな、と思います。

 

リスクとゲイン2 みらいワークス 岡本

 

何かの本で、生命保険について興味深い話を目にしました。保険料ベースで見た時のランキングで、世界一は米国。次いで2位はほぼ並んで日本なのだそうです。そのあと英国が3位。4位はフランスとのことでした。一方で生保の世帯加入率を見ると、日本は約90%、米国が約80%となっており、日本のほうが普及率は高いようです。 アメリカは国の医療保険制度のない国ですので、生命保険といってもほとんどが医療保険と年金保険とのこと。日本で“生命保険”と聞くと、真っ先に思いつくのは死亡保険だと思いますが、その加入率は米国では20%に過ぎません。しかし日本では70%を超えているようです。日本は世界で最も“死”というリスクに過剰に反応している国と言えそうです。

 

国民性なのかどうかはわかりませんが、日本人はリスクに対して過剰なケアをしがちな傾向があるかもしれない、ということは知っておいてもいいのではないでしょうか。リスクに対するキャパシティというか、耐久力が低い。死亡保険の加入率などはそれを顕著に表していますし、「大人になったら生命保険に入る」という文化が出来上がっていますよね。

 

そうは言ってもリスクに対して完全に備えるのは難しいことです。ではどうするべきでしょうか。ゼロにも出来ないですし、完全に備えることも出来ないのであれば、過剰に反応せずに、うまく付き合っていくしかありません。

 

リスクを評価する際は、その『発生確率』と『発生時の影響度合い』の2軸で評価します。その二つの観点から、リスクヘッジすべきものと、リスクが顕在化してから対応するものを選定し、対応を決めていきます。対応方法も、①リスクが顕在化しないようにガードする方法や、②リスクが顕在化した際に影響度合いを下げる方法、③顕在化した際にそのリカバリをする方法を用意しておくことなど、さまざまです。

 

リスクとゲイン3 みらいワークス 岡本

 

例えば車の事故を題材にすると、最近発達している自動運転は事故を防ぐという意味では①になります。エアバックは事故を起こした際の怪我を軽減することになるので②、自動車保険は事故が起きた後の治療費などを捻出することになるので③になりますよね。他には病気になるリスクを考えてみると、医療保険に加入することが③になり、毎週ジムに通う事や食生活を見直すことは①になります。

 

このように複数の方法でリスクヘッジをしているのですが、普段生活しているとあまり意識せずともリスクを軽減する方法が溢れていたりするものです。

 

さて今度は角度を変えて、ビジネスの面でのリスクについて考えてみます。そもそも、ビジネス上で“リスクがない”という状況はありえないと思います。リスクがない=誰もが出来て、かつ必ずうまくいくということであり、そんなことがわかっているビジネスがあれば、誰かが既に着手しているはずですよね。リスクがないということは、ゲインもないものです。一方で、リスクだとわかっていても、見合うだけの得られるものがある時は、リスクを取る決断をすべき場面もあるでしょう。大切なことは“リスクとゲインのバランスを考える”こと。

 

リスク以上に得るものがあれば、まずは実行に移したほうがよいですし、リスク以上に得られるものがないのであれば、少し考えたほうが良いですよね。

 

例えば、うまくいく確率が極めて少ない計画があるとします。成功確率はゼロではないが、極めて低い。しかもそれ以外に方法がない場面で、必ず成し遂げなければならない理由がある。そんな時は、リスクが低いことを覚悟した上で、その方法に取り組むことになるかと思います。映画のワンシーンでは、こんな場面がよくあると思いますが、リスクとゲインのバランスを見た時に、バランスが悪いのを承知の上で他に方法がないので実行する、そんなこともあるでしょう。

 

リスクとゲイン3 みらいワークス 岡本

 

ベンチャー企業の創業期は、リスクとゲインのバランスが悪いこともあります。ベンチャー企業は、人も資金も限られている中で、取れる手段も限られてしまいます。そうなるとリスクを認識していても、それをガードすることなしに、行動せざるを得ない場面が多々あると思います。リスクが顕在化して、たとえ会社が潰れることになっても、他に方法がないのであれば進むしかないのです。しかし会社が大きくなってくると、そのガードに予算を確保できるようになり、リスクとゲインのバランスが変わってきます。このように同じリスクでも、会社のステージによって扱い方が変わっていくものです。

 

みらいワークスの行動指針“みらイズム”には、「挑戦:私たちはみらいの為に挑戦し、挑戦を通じて自ら成長します。」というフレーズがあります。挑戦とは、“必ずうまくいく保証はない、やり遂げられるかどうかわからないが、やる価値がある”ことです。挑戦にリスクは常に付きまとうものですが、いくら挑戦すべきといっても取ってはならないリスクもあります。リスクは多かれ少なかれ必ずあるものとしてうまく付き合い、リスクの大きさに応じた対処をしながらも自ら挑戦の道を突き進む、こういった感覚をこれからも大切にしたいと思います。