プロコンサルタントが使う4つの思考法で劇的に仕事力が上がる
最新更新日:2023/10/23
作成日:2023/02/01
コロナ禍によって、働き方や仕事の取り組み方の見直しを迫られる企業が増えています。「従来の事業だけでは厳しいため、新規事業を早急に立ち上げたい」「テレワークを導入したけど、仕事の進め方や制度が追い付いていない」といった課題に直面するビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。こんなときに役立つのが、コンサルタントの仕事術。コンサルタントと言えば、事業戦略や経営課題などの問題を解決するプロフェッショナルです。彼らが的確に効率よく課題を解決できるのは、さまざまな技術や思考法を駆使して仕事をしているからなんです。コンサルタントの仕事術を知れば仕事がスムーズに進むだけではなく、将来フリーランスとしての独立や起業を目指すときにも役立つはず。そこで事例をもとに、知っておきたい4つのコンサルタント思考法をご紹介します。
目次
■もう迷わない!複数案の中から的確に選択できる「Pros and Cons思考法」
(1)Pros and Cons思考法とは?
(2)Pros and Cons思考法の具体的な取り組み方
(3)Pros and Cons思考法によって、意思決定のスピードが上がる
■新規事業や戦略のアイデア出しに行き詰まったときに使える「ゼロベース思考法」
(1)ゼロベース思考法とは?
(2)ゼロベース思考法でアイデアを出す手順
(3)ゼロベース思考法を使えば、想定外の状況にも対応しやすい
■社内の情報共有に悩む企業が取り入れるべき「ナレッジ・マネジメント」
(1)ナレッジ・マネジメントとは?
(2)ナレッジ・マネジメントの進め方
(3)ナレッジ・マネジメントは新しいビジネスチャンスの発見につながる
■競合と差別化したい!マーケティング戦略に悩んだときに使える「STP分析」
(1)STP分析とは?
(2)STP分析を進める手順
(3)STP分析で自社の強みを生かしたマーケティング戦略ができる
もう迷わない!複数案の中から的確に選択できる「Pros and Cons思考法」
企業が戦略や施策を決めるとき、複数案の中からどれを選べばいいか迷うことも多いのではないでしょうか?こういったときに役立つのが、コンサルタントがよく使う「Pros and Cons思考法」。この思考法を取り入れれば、さまざまな案を効率よく論理的に比較検討できるようになります!
(1)Pros and Cons思考法とは?
「Pros and Cons」はもともとラテン語で、「長所と短所」「賛成と反対」という意味。欧米のビジネスシーンでも「賛否両論」という意味で使われ、コンサルタントの仕事術の中でもベーシックなものです。
Pros and Cons思考法は、アイデアや戦略などのプランについて長所と短所を洗い出し、整理した上で客観的に判断するための仕事術。例えば「コストは高いけれど品質は優れている」というように、物事には必ず良いところと悪いところの両面がありますよね。どちらか一方にフォーカスして比較するのではなく、両面を把握した上でトレードオフしていくというのが基本的な考え方です。
長所と短所を見るというシンプルなものですが、もれなく長所と短所を洗い出すのは意外と難しいもの。また整理した項目の判断基準も悩ましいところです。
(2)Pros and Cons思考法の具体的な取り組み方
事例をもとにPros and Cons思考法の取り組み方を解説します。ある企業では、新分野へ進出するプロジェクトにて「その分野に詳しい人材をどう確保するか?」という課題がありました。
そこでプランAとして「社内の人材を育成する」案、プランBとして「社外のプロ人材に委託する」案の2つを検討することになりました。この場合プランAとプランBを比較検討するのに、Pros and Cons思考法が役に立ちます。
【 手順1:それぞれのプランの長所と短所を洗い出し、「プロコン表」にまとめる 】
まずは2つのプランの長所(メリット)と短所(デメリット)を洗い出します。ここでは、なるべく幅広く項目を出すことが重要。そのため、できるだけ多くのメンバーに協力してもらうことをおすすめします。どちらかの視点に偏らないよう、できるだけ同じ人がメリットとデメリット両方洗い出すのがポイントです。
洗い出した項目は、整理しやすくするため「プロコンリスト」と言われる表形式でまとめます。このケースでは、以下のようなプロコンリストができます。
<プランA>
◆メリット
・社内事情に詳しく、コミュニケーションしやすい
・プロジェクト立ち上げ後の運用も任せられる
・社内の人材育成につながる
・コスト(人件費)を抑えられる
◆デメリット
・専門知識を習得するには時間がかかる(時間をかけても不足する可能性もある)
・社員のため、社外の知見は得にくい
・兼任になる可能性がある(プロジェクトに集中できない)
<プランB>
◆メリット
・高度な専門知識を持つ人材をアサインできる
・社外の知見を得られる
・プロジェクトの専任になってもらえる
◆デメリット
・報酬が高額になる可能性がある
・最適な人材を見つけるための時間と手間がかかる
・社員からの反発が起こる可能性がある
・外部人材が環境に慣れるまでに時間がかかる
【 手順2:メリットとデメリットに優先度をつけ、優先度が高い項目を検討する 】
プロコンリストによって、洗い出した項目が可視化できます。とはいえ項目を洗い出しただけではまだ選択しづらいので、項目に優先度をつけていきます。例えば「項目の中で最も重要なメリットは何か?最も致命的なデメリットは何か?」という視点で数値化していきます。なおメリットの合計とデメリットの合計で比較しても、あまり意味がありません。優先度をつけるのは、優先度が高い項目だけに絞って比較検討するためです。
(3)Pros and Cons思考法によって、意思決定のスピードが上がる
なんとなく複数の案を選択すると、「声が大きい人の意見に引っ張られる」「後から致命的なデメリットに気づいた」という課題に直面することがあります。Pros and Cons思考法を使えば、しっかり項目の洗い出しができ、経営に関わる重大な選択でも的確に選ぶことができます。また意思決定までのプロセスが明確になるので、経営陣など周囲に納得してもらいやすい点もメリット。またこの思考法に慣れてくると意思決定までの時間が短くなります。つまり判断できるまでのスピードが向上します!
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新規事業や戦略のアイデア出しに行き詰まったときに使える「ゼロベース思考法」
新しい事業や戦略を立ち上げるとき、全然アイデアが出てこない!ということもありますよね。こんなときコンサルタントの思考法で見習いたいのが、「ゼロベース思考法」です。
(1)ゼロベース思考法とは?
一般的にアイデアを生み出す時、過去の経験や情報をもとに考える方が多いのではないでしょうか。この手法は「トレンド思考」と言います。「ゼロベース思考」はこのトレンド思考と正反対の手法。ゼロベースとは、ベースとなるものをいったん捨ててゼロから考えるという意味です。枠組みやしがらみを取り払うことで、トレンド思考では出てこないような斬新なアイデアや戦略が生まれやすくなります。
コロナ禍で生活様式が大きく変わっている今こそ必要な思考法とも言えます。ここではゼロベース思考法を仕事に取り入れるコツをまとめました。
(2)ゼロベース思考法でアイデアを出す手順
ある店舗の事例では人手不足によって、混雑時でもお客様の対応が十分にできない状態が続いていました。こうなるとせっかくの売上機会を損失してしまいます。このような状況で、ゼロベース思考はどのように活用できるのか見ていきます。
【 手順1:課題を明確にする 】
このケースでは、「来客が多い時間帯に十分なスタッフを配置できない」ということが大きな課題でした。もう少し掘り下げると「レジに行列ができてお客様を待たせてしまう」「きめ細かい接客ができない」といった根本的な問題が見えてきます。問題解決策を探るには、まず何が問題なのかを明確にすることが第一段階です。
【 手順2:これまでの戦略や解決策を洗い出し、消してみる 】
人手不足なら当然「人を増やす」という案が思いつきますよね。でも必要な人材を採用するコストも時間も厳しいとなると、別のアプローチが必要になってきます。そこでゼロベース思考法を用いて、新たな戦略を練ることとなりました。
このようにゼロベース思考法の基本は、これまでの考え方や常識をいったん捨てること。まずは従来の発想(ここでは人を増やすこと)を、一旦消してみます。
【 手順3:視点を変えてアイデアを生む 】
ゼロの状態になったら、新たなアイデア出しに取り組みます。例えば「利用するお客様の立場になる」など目線を変えてみるのもひとつの方法。お客様の視点で考えると、「在庫があるか自分でチェックできればいい」「ロボットが店内にいてくれたら聞きやすいんだけど」というアイデアも出てくるのではないでしょうか。
別業種や海外の事例を参考にする方法もあります。例えば海外で話題になっている無人の店舗「Amazon Go」。これはユーザーが手に取った商品をAIが判別、QRコードをかざせば決済ができる仕組み。そのため「Amazon Go」の店舗にはレジがありません。
【 手順4:できないことよりもできることに目を向ける 】
AIやロボットといったアイデアになると、すぐ導入するのは無理という結論になりがちです。でもゼロベース思考法では、できないことよりできることに目を向けることがポイント。例えばAIやロボットは無理でも、QRコード決済や接客アプリなら導入できる可能性は高いのではないでしょうか。アイデアを全否定するのではなくできることに目を向けていけば、新たな解決策が見えてくるはずです。
(3)ゼロベース思考法を使えば、想定外の状況にも対応しやすい
このケースでは「セルフレジを導入してレジ待ち時間を短くする」「店内でも店外でもスマホアプリでオンライン接客ができるようにする」といった施策が想定されます。人手を増やさなくても、新たな解決策の発見につながるというわけです。
ゼロベース思考法は、想定外の状況にも対応できる点もメリット。実際、コロナ禍の状況について数年前は全く想定できませんでした。こういった想定外の状況では過去の常識や経験だけでは解決が難しいため、ゼロベース思考法が有効です。
社内の情報共有に悩む企業が取り入れるべき「ナレッジ・マネジメント」
テレワークの導入が進む中、「社内の情報をどうスムーズに共有するか?」という課題に直面する企業が増えています。テレワークでは「一部の人だけ知っている業務があるけれど、オフィスにいないため聞きづらい」「紙の資料しかなく、リモートだと調べられない」といった状況になりがちです。こうなると、仕事に大きな支障をきたします。こんなとき役立つのが「ナレッジ・マネジメント」という手法です。
(1)ナレッジ・マネジメントとは?
ナレッジ・マネジメントとは、社内のメンバーそれぞれが得た情報や経験、ノウハウを全社で共有、経営に生かすというもの。経営学者である野中郁次郎氏が提唱した理論が基礎となっています。
ナレッジ・マネジメントでは、まず知識や情報を「暗黙知」と「形式知」という2つに分類します。
◆暗黙知
スキルの高い人が自分の経験で培ったノウハウや情報。マニュアルのように表面化していないため、暗黙知と呼ばれます。このままでは他の人にシェアしづらいという課題があります。
◆形式知
マニュアルのように、社内でシェアされやすい状態になったノウハウや情報のこと。ナレッジ・マネジメントでは「暗黙知」を「形式知」に変換することで、社内で共有しやすくすることが狙いです。
(2)ナレッジ・マネジメントの進め方
ある企業では、転職する人やフリーランスとして独立する人がある時期急増したそうです。この場合、顧客や業務のノウハウが社内に蓄積されないという課題がありました。こうした時にナレッジ・マネジメントを導入するケースもよくあります。ここでは事例をもとに、ナレッジ・マネジメントの導入手順をまとめました。
ナレッジ・マネジメントは「SECI」(セキ)モデルと呼ばれる理論に基づいて進めます。「SECI」モデルは4つのステップで構成されていて、各ステップの頭文字をとって「SECI」と名付けられています。
【 手順1:共同化 ~暗黙知の洗い出し~ 】
スキルの高いメンバーが低いメンバーと一緒に業務を行ない、どこに暗黙知があるかを整理します。
【 手順2:表出化 ~暗黙知を形式知に変換~ 】
洗い出した暗黙知のままではシェアしづらいため、マニュアルなどの形式でまとめます。最近では社内SNSを導入して、業務の進め方やコツを「見える化」するケースもあります。
【 手順3:結合化 ~形式知を集約、より効率的な方法にブラッシュアップ~ 】
表面化した知識やノウハウは、人によってばらつきがあります。そこでそれぞれ各々の形式知を持ち寄り、より効率的で結果につながるベースを作ることがポイント。例えば、優れた営業パーソンたちの手順で優れたところだけを集約して、基本モデルを作ります。これをもとにすれば他のスタッフも作業しやすくなりますし、自動化できる部分も見つかるかもしれません。
【 手順4:内面化 ~集約した形式知を個人の暗黙知に戻す~ 】
基本モデルをもとに新入社員が営業を実践、自分自身のスキルに落とし込みます。これによって新入社員でもスキルの高い社員に近いパフォーマンスが出せるというわけです。
ナレッジ・マネジメントの4ステップにおいて、欠かせないのがIT。営業であればSFAやCRMといったツールが必須となってきます。また最近さまざまな業界で導入が進むDX(デジタルトランスフォーメーション)。DXは業務のデジタル化だけではなく、デジタル化した情報を新規事業に生かすなど新しいイノベーションにつなげるという発想です。つまりDXを推進することで業務のデジタル化が進み、結果的にナレッジ・マネジメントにもつながるというわけです。
(3)ナレッジ・マネジメントは新しいビジネスチャンスの発見につながる
ナレッジ・マネジメントを取り入れるメリットと言えば、属人化を防げる点。仕事が属人化すると、その人が転職してしまうと社内にノウハウが全く残りません。でもナレッジ・マネジメントを導入しておけば、ノウハウや情報を社内に蓄積できるというわけです。また個人がそれぞれもっていた優れたノウハウを他のメンバーが取り入れることで、業務の効率化につながるメリットもあります。
さらにナレッジ・マネジメントは、新しいビジネスチャンスを生むきっかけになることも。社内にさまざまな情報が蓄積されていれば、データを分析することができます。今まで見えなかった顧客のニーズの発見につながる可能性もあります。
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競合と差別化したい!マーケティング戦略に悩んだときに使える「STP分析」
新規事業や新サービスを展開する上で、欠かせないのがマーケティング戦略。コンサルタントの思考法を使って優れたアイデアを生みだしても、マーケティングが失敗すれば台無しです。特に現在は市場が複雑化し、競合もひしめいている時代。「自社製品の強みは何か」「誰に向けて販売していくか」といった視点で、マーケティング戦略を立てる必要があります。こうしたときに役立つ仕事術が「STP分析」です。
(1)STP分析とは?
STP分析とは、以下の3つの要素を使って市場と自社製品を分析する手法です。3つの要素の頭文字をとって「STP分析」と呼ばれています。
Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化してターゲットを絞り込む
Targeting(ターゲティング):ターゲットにする市場を決める
Positioning(ポジショニング):市場の中で自社の位置を決める
(2)STP分析を進める手順
STP分析によってマーケティング戦略を成功させた企業として知られているのが、「俺のイタリアン」というイタリアンレストラン。この事例をもとに、STP分析の手順を解説します。
【 手順1: Segmentation(セグメンテーション)】
いきなりターゲットを決めるのは難しいですよね。そこでまず市場をざっくりとグループ化して、狙いたい市場をある程度絞り込みます。具体的にはユーザーの住む地域や会社の位置、年代・性別、ライフスタイルといった要素をもとに決めます。
俺のイタリアンの事例では、高所得者でも低所得者でもなく「中間所得の会社員」というグループに絞り込んだと想定されます。
【 手順2: Targeting(ターゲティング)】
セグメンテーションで絞り込んだ市場から、より具体的なターゲットを決めていきます。俺のイタリアンのケースではセグメントが「中間所得の会社員」なので、さらに具体的なターゲットとして以下のようなものが想定されます(※これはあくまで例です)。
・おおよそ20代から30代の会社員で、コストパフォーマンスが気になる
・仕事終わりに、会社の近くで仲間と食事を楽しみたい
・居酒屋よりはおしゃれな空間で、美味しいものが食べたい
・忙しいので短時間で食事を済ませたい
【 手順3:Positioning(ポジショニング)】
ターゲットに合わせて他社との差別化を測り、自社の強みを生かすのがポジショニング。俺のイタリアンの場合、「高級食材を使ったメニューを用意しつつ低価格を実現。さらに気軽に仕事帰りに寄れるカジュアルなレストラン」というポジション。これは特別な日に行く高級レストランとも違いますし、低価格なファミリーレストランとも違います。他社にはないポジションを確立できた企業事例と言えます。
(3)STP分析で自社の強みを生かしたマーケティング戦略ができる
STP分析を行なうメリットは、ひとつは自社の強みを生かせるという点。俺のイタリアンでも他のイタリアンレストランとの違いが明確になっていて、狙ったターゲットの支持をしっかり得ています。またSTP分析で市場を客観的に分析することで、新たな市場の開拓にもつながります。俺のイタリアンの事例でも、普段イタリアンレストランに行かないビジネスユーザーを新たに開拓できています。マーケティングをする上でおさえておきたい仕事術と言えます。
最後に
日本でも、コロナ禍により働き方に大きな変化が起きています。特にテレワークの普及によって、最近は勤務時間ではなくアウトプット(成果)で評価する企業が増えてきました。また人生100年時代とも言われる今、ずっと会社員として働き続けるとは限りません。転職はすでに一般的ですが、最近では転職以外にもフリーランスとして独立したり、起業して経営者になるという選択肢も近しい存在になってきました。独立起業をすれば、当然ながら勤務時間は一切関係ありません。あくまでアウトプットが実績となります。
会社員でもフリーランスでも、「成果による評価」に対応するには短い時間で成果を出す仕事術が求められます。そこで取り入れたいのが、コンサルタントの仕事術。すでにコンサルティング業界では、会社員も独立したフリーランスもアウトプット主義が主流。彼らはプロのコンサルタントとして、理論的で構造化された思考法を活用して成果を出しているわけです。
将来の転職や独立起業でも、今後ますますアウトプットが求められます。多様化する働き方に対応するためにも、コンサルタントの思考法を取り入れてみてはいかがでしょうか?
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)