”合同会社”のメリットとは?
作成日:2016/08/24
年々増え続ける”合同会社”
「企業」といえば、多くの人が「株式会社」を思い浮かべると思いますが、会社法に定める「会社」には、それ以外にもいわゆる「持分会社」と呼ばれる「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3種類が存在します。
まだ社会的には馴染みの薄いこれらの会社形態ですが、最近では2011年に旧アップルジャパン株式会社が「Apple Japan合同会社」へと組織変更されたことで、持分会社のなかでも特に「合同会社」というスタイルが一躍有名となりました。そして、現在では介護事業やIT事業、そしてコンサルタント業務でも合同会社の形態で独立・起業をする人が年々増え続けているのです。
そこで今回はこの「合同会社」について、その設立費用やメリットについて取り上げてみたいと思います。
☆あわせて読みたい
『フリーランスになるには?未経験から開業で必要とされるスキル・手続き方法・経験とは?』
『フリーランス人材の悩みとは?業務委託の雇用形態とメリットデメリットを解説』
そもそも合同会社って?
2006年の会社法の改正を皮切りに、設立件数が右肩上がりに増え続けている合同会社ですが、そもそも一般的な株式会社とはどう違うのでしょうか?
まず所有側(株主)と経営側が分離されていることが多い株式会社と違い、合同会社の社員は、定款で特別に定めていない限り原則としてその「会社を代表する」権限を有するとされています。
さらに合同会社の社員は会社設立の際に出資した額の多寡にかかわらず、原則「一人一持分」を与えられ、会社の業務の決定などに関しても一人につき一つの議決権を持ちます。そしてその多数決でその過半数を獲得することによって会社全体の意思決定がなされるわけです。つまり一人ひとりの社員が、会社全体に対して明確な意思表示をする場が整えられているといえます。
これらは「合同」「合資」「合名」の全てに当て嵌まる要素ですが、これら持分会社のなかにも明確な違いがあり、特に「合同会社」は比較的株式会社に形態が近い存在であると言われます。
たとえば、合名会社だと社員の責任は「直接無限責任」といわれ、もし倒産して会社の財産のみでは債務弁済ができない場合は、社員は連帯して債権者に債務を直接的に弁済する義務を負ってしまいます。
一方、合同会社の社員は株式会社の株主と同様に、自らが出資した額を超えて債権者に対して債務を弁済する義務を負うことはありません。
このように合同会社の社員は、株式会社における株主と同じように「間接有限責任」しか負わないのですが、自らも業務執行権を有しているわけです。さらに利益の配分に関しても、その持分の割合にかかわらず定款によって自由に決定することができます。このため、資金を出したい人と実務で会社に貢献したいという人がタッグを組み易い仕組みになっているのです。
また、定款も比較的自由に作成できるので、それぞれの会社に合った利益配分や組織構成ができ、効率よく運営ができることもメリットです。近年、フリーランスのコンサルタントをはじめ、合同会社を設立する人が増えているのは、多くの場合こういった利便性を求めてのことでしょう。
☆あわせて読みたい
『【PMOとは】PMとの違い(仕事内容・意味・職種)と向いている人、業務に必要な資格・スキルセットを解説!』
『【フリーコンサル PMO】年収は?必要なスキルや資格は?つまらない?メリット・デメリットも解説』
合同会社は設立費用が安い!?コスト面でのメリットいろいろ
ひと昔前に「1円で株式会社設立!」なんて広告が流行ったことがありますが、実際は株式会社を設立するには登録免許税が15万円程かかりますし、定款認証費用なんてものもあり、それには5万円ほどの料金がかかります。たとえ資本金が1円だったとしても、設立に関わる経費で20万円程度はかかってしまうわけです。
当時、こういった広告宣伝を真に受け、さらには現物出資を利用して完全に「無料」で株式会社を設立しようとしていた人々はかなりの数存在したようで、実際には新人社員の月収ぐらいの費用がかかってしまうことを知って憤慨していたという話もちらほら・・・。
しかし、「合同会社」ならばこういった費用もかなり抑えることができるのです。合同会社の場合だと、登録免許税が6万円(下限)です。具体的には資本金が857万円以下の場合は一律で6万円あればいいのです。また定款の認証費用も株式会社の5万円に対して、こちらは完全に無料です。なぜなら定款の認証自体がそもそも不要だからです。そして資本金も「1円」からOKで、むしろ資本金1000万円未満の場合は消費税に関しては免税業者となることもできます。
さらに定款をPDF形式の電子定款にすれば印紙代の4万円も浮かすことが可能と、費用面ではかなりのメリットがあります。当然、会社の「印鑑代」などはかかりますが、それでもプラス1万円程度で収まってしまうことがほとんどですので、株式会社の設立に比べて圧倒的に安く済むことがわかります。
また、コスト面以外にもメリットが。たとえば、合同会社の場合、面倒な会社設立必要書類が株式会社に比べてずっと少ないことも魅力でしょう。加えて、毎期の決算を公告する必要がありません。株式会社だと決算の公告費用ですら数万円かかってしまいます。まるで「運転免許」の更新のように定期的に費用がかかる株式会社に対して、合同会社は一度設立してしまえば官報への掲載費用のような、経営者側にとって「余計」な費用がかかることはありません。そういう意味では「永久ライセンス」と言えるかもしれませんね(笑)。
事実、こういった費用面のメリットを利用して多くの個人事業主やフリーランスで活躍される方が合同会社として法人化したり、新しい事業を立ち上げたりしているわけです。現在設立されている合同会社の数は2万社近くにものぼっています。
節税にもメリットあり!?
節税のために「法人化」を考えるという個人事業主は昔から沢山いましたが、節税という面においても合同会社には大きなメリットがあるといえます。
まず税務上は株式会社とほぼ変わりませんから、個人事業主と比較して経費として「落とせる」幅が広くなります。車両の購入やスマートフォンの料金など、法人名義であるならば原則は経費として認められることになります。
具体的にどの程度の所得があれば「法人化」のメリットを享受できるかという点については専門家の間でも意見が分かれるところだと思いますが、ある程度の事業収入がある場合は、やはり法人化した方が多くの面で得になることは間違いありません。
たとえば、個人事業主として年商が800万円で、それに対する必要経費が300万円だったとすると、所得は単純計算で500万円です。では、合同会社を設立して所得と同じ額を稼ぎ出した場合はどうなるでしょうか?仮に必要経費を同額の300万円とすると、法人ですので個人の役員報酬が所得の500万円ということになり、課税対象も500万円ということになる筈です。
ここで、個人事業における所得500万円と合同会社からの役員報酬所得500万円を比較してみると、後者は「給与所得控除」が効くので、最終的に手元に残るお金は法人を設立していた場合の方が多くなるのです。その差は数十万円にもなってくるでしょうし、それは所得が大きくなればなるほど顕著になります。さらに家族が会社の役員やスタッフとして勤務すると仮定すると、場合によっては数百万円もの節税になる可能性もあるのです。
当然、事業からの所得が300万円にも届かないような場合は個人事業のままにしておく方がよいということもありますが、相応の所得がありこれからどんどん事業を大きくしていきたいという場合は、早めに「法人化」しておくことをお勧めします。特に「合同会社」は設立が容易であり、比較的組織管理もやりやすい形態の会社です。これから起業される予定の個人事業主の方も選択肢の一つとして視野に入れておいて損はありません。これまで述べてきたように、「合同会社」はとにかくコストを抑えて法人化できることや、節税対策としても有効な形態であるといえ、多くのフリーコンサルタントの方が採用しています。
ただし、まだまだ国内での認知度は低いようで、会社としての信用度に欠けるのではないかと考える人も多いのが現状のようです。いまだに「株式会社以外とは取引なんてしない!」という経営者の方もおられるようですし・・・。それでも目に見えるデメリットはそれほどなく、管理もしやすいということで年々この形態を好んで採用する経営者が増えているのも事実です。それに一度「合同会社」として業績を上げたうえで「株式会社」へ変更ということも可能ですし、そういう意味でも比較的「とっつきやすい」法人形態といえると思います。
現在、法人化を検討されているフリーランスのコンサルタントや個人事業主のままで構わないという方も、ぜひ一度「合同会社」について検討されてみてはいかがでしょうか?
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)