キャリアコンサルと名乗れるのは国家資格取得者だけ!試験内容を知る

最終更新日:2019/06/21
作成日:2016/11/02

 

キャリアコンサルタントには国家資格があり、その職種を名乗ることができるのは資格取得者のみであることはご存知でしょうか。平成28年4月1日よりキャリアコンサルタント登録制度が創設され、今年7月には、第12回キャリアコンサルタント試験も開催される予定で今後ますますニーズの高まりが予測されています。今回はキャリアコンサルタントの試験内容について詳しく触れていきます。

 

目次

■キャリアコンサルタントとは?
(1)人の人生を大きく左右する職業の1つ
(2)働く側・企業側 双方にメリットのあるキャリアコンサルティング
(3)キャリアコンサルティングの海外事情

 

■キャリアコンサルタントを名乗るために必要なこと
(1)国家資格保有者以外キャリアコンサルタントは名乗れない
(2)キャリアコンサルタントの受験資格
(3)キャリアカウンセラー養成講座について
(4)国家資格化されたキャリアコンサルタントの今後

 

■資格取得のための試験内容
(1)学科試験の問題傾向
(2)実技試験の問題傾向
(3)キャリアコンサルタントの試験の注意点

 

■キャリアコンサルタントとキャリアコンサルティング技能検定との違い
(1)キャリアコンサルティング技能検定とは?
(2)キャリアコンサルティング技能検定の試験内容

 

■まとめ

※本コラムは、2019年6月21日に「成長戦略を担うキャリアコンサルタントの国家資格化」を再構成したものです。

 

キャリアコンサルタントとは?

キャリアコンサルタントとは?_1

(1)人の人生を大きく左右する職業の1つ

キャリアコンサルタントとは、一般的には相手の個性や能力を把握し、その人に適していると思われる職業を紹介したり能力を開発したりする職業のことを指します。学校内で進路や就職の相談を受けたり、企業内で人事や教育の部門を担当することも多く、人材派遣会社などでも重宝される職業でしょう。他人のキャリアをより良いものに導く専門家です。

 

人の資質を見極めて的確なアドバイスをする専門家なのですから、誰にでもできる仕事ではありませんが、平成27年までは自由にキャリアコンサルタントを名乗ることが可能でした。しかし、人の人生を大きく左右する職でもあるため、平成28年4月よりキャリアコンサルタントは国家資格化され、資格取得をしない限りその肩書を名乗れないようになりました。

 

これは、平成27年9月の第189回通常で国会勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案が可決され、同時に職業能力開発促進法の一部改正が成立したことに端を発して実現したものです。

(2)働く側・企業側 双方にメリットのあるキャリアコンサルティング

では、キャリアコンサルティングの専門家としての具体的な役割について、もう少し掘り下げてみましょう。

 

 

厚生労働省の見解によれば、「自己理解を深めて仕事を理解することより、自分にあったビジネスや業務を主体的に選択できるようになること。自身のキャリアプランを明確にし、必要な知識や資格の習得、ビジネスの選択など、将来の道筋を実現していくための有力な手段の一つ」ということになります。

 

 

具体的な例でいえば、スキルアップを目指す勤労者や就職活動で悩んでいる学生、あるいはどんな資格を取ればよいのか迷っている求職者や転職希望者に対し、それぞれの課題を的確かつ均質なアドバイスをする専門家になることを目標とします。

 

 

企業や事業経営者にとっても、キャリアコンサルタントの導入には大きなメリットがあります。従業員のスキルアップやキャリアアップ、ワークライフバランスの策定支援、若手社員の定着支援など、経営資源と企業体力や業務管理の強化を図ることができるのです。

(3)キャリアコンサルティングの海外事情

現在、海外においてもキャリアカウンセラーは大変重要視されています。イギリスでは、13歳から19歳を対象にキャリアや能力開発、対人関係にガイダンスをするキャリアカウンセラーが組織に所属、あるいは独立や起業してカウンセリングをビジネスとするカウンセラーとして活躍しています。アメリカでは、キャリアサポートの必要がある人材に対して、キャリアに関わる目標達成をするためのガイダンスなどをキャリアカウンセラーが実施しています。

 

 

また、中国・ドイツ・カナダ・ブルガリア・ルーマニア・ニュージーランド・トルコ・韓国などでも、それぞれの国情に合わせたGCDFのキャリアカウンセラートレーニングプログラムの導入やプロジェクトが進んでいます。

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キャリアコンサルタントを名乗るために必要なこと

キャリアコンサルタントを名乗るために必要なこと_2

(1)国家資格保有者以外キャリアコンサルタントは名乗れない

キャリアコンサルタントの国家資格化による効果は、名称独占の対価としての守秘義務や信用失墜行為の禁止規定により、コンサルタントの資質が向上することにあります。5年毎の更新時には国家資格である厚生労働大臣指定のキャリアコンサルタント更新講習が義務付けられているため、つねに新しい情報や制度、システムに基づいたコンサルティングが可能になるという点も、国家資格化の効果の一つです。

 

また、この国家資格化による重要なこととして、国家資格保有者以外は「キャリアコンサルタント」だけでなく、「キャリアカウンセラー」や「キャリアアドバイザー」といった類似名称も使えなくなったという点が挙げられます。

 

仮に国家資格がなくても、従来の代表的な資格であるGCDFやCDAを資格として使用するのに問題はありませんが、「GCDFの資格を持ったキャリアコンサルタントです」という表現は違反となります。もし国家資格を持たない人が誤ってそのような名乗り方をした場合、30 万円以下の罰金に処せられるという罰則があります。

(2)キャリアコンサルタントの受験資格

国家資格となったキャリアコンサルタントの受験資格は、次の通りです。従来の制度に比べると、資格検定の受験資格という点では門戸が広がりました。

 

  • ①厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
    ②労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者
    ③技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
    ④平成28年3月までに実施されていたキャリア・コンサルタント能力評価試験の受験資格である養成講座を修了した方(平成28年4月から5年間有効)

出典:JCDAホームページ「資格取得の流れ」

 

②が新しく加わった受験資格で、実務経験者やすでに専門家としてキャリアを積んできた人達にとっては朗報といえるでしょう。③は、JCDAホームページ内の「試験免除について」で以下のように書かれています。

『技能検定キャリアコンサルティング職種の1級又は2級の学科試験、実技試験のどちらか片方の合格者は、キャリアコンサルタント試験の対応する試験が免除されます。』④の「キャリア・コンサルタント能力評価試験」については、下記ページにて説明されています。

出典:厚生労働省 平成28年3月までのキャリアコンサルタント制度について

 

これらの条件を踏まえると、新たにキャリアコンサルタントを目指す方は①の方法で、協会から認定されている講習を受けるのがスタンダードな道筋と言えそうです。

 

協会とは、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会のことであり、協会は資格検定を受験する人のための養成講座を行なっている団体をいくつか認定しています。協会から認定されている養成講座を受講することで、資格検定を受験するための知識ならびにキャリアコンサルタント試験を受験する権利を同時に得られるようになります。

(3)キャリアカウンセラー養成講座について

キャリアカウンセラー養成講座を受講する際にかかる費用は、選択する養成講座によって若干異なりますが30万弱から37万円強程度のようです。協会が認定している養成講座では説明会を開催しているところも多いので、まずは説明会に参加すると良いでしょう。なお、説明会への案内は、各養成講座を開催している団体のホームページから確認できます。

 

 

キャリアカウンセラー養成講座では通学学習約100時間に加え、自宅学習で約4050時間かかります。キャリアカウンセラーになるためには、それなりの時間と費用が必要です。資格取得の勉強のために自分の生活やプロジェクト事業やビジネスなどに無理がこないかを事前に十分検討することが大切です。

(4)国家資格化されたキャリアコンサルタントの今後

キャリアコンサルタントの国家資格化は、安倍内閣の産業競争力会議において国の成長戦略の一つとしてキャリアカウンセラーの積極活用を提言したことが出発点です。現在、厚生労働省では2024年度末までに現在のキャリアカウンセラー人口の2倍の10万人にまで数を増やす計画を打ち出しています。

 

今後、キャリアカウンセラーが経営にとって有効だと証明されることで、より多くの企業が積極的にキャリアカウンセラーを導入するようになるかもしれません。また、個人事業主やフリーランスで活躍されているコンサルタントの方にとっては、国家資格化されたキャリアカウンセラーの資格認定を手にすることは、目に見える形でクライアントへ安心感を与えることができるのが大きなメリットです。

 

 

資格取得のための試験内容

資格取得のための試験内容_3

(1)学科試験の問題傾向

キャリアコンサルタント試験は大きく分けて2つ、学科試験実務試験です。筆記試験は4択のマークシートで、50問を100分以内に答える必要があります。過去の問題傾向からは4つの選択肢の中からもっとも適切なもの、もしくはもっとも不適切なものを答える問題が多いようです。50の問題はそれぞれ2点、合計100点満点で計算され、70点以上で合格となります。

 

過去のキャリアコンサルタント試験から傾向を探ると、キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーとしてのあり方、心構え、役割などについて問われる問題が多いようです。他にはサビカスやハンセンなどが提唱した理論についての解釈日本国内の労働市場への知識厚生労働省が発表している情報への知識などが問われるようです。

 

試験の難易度を図る指標の一つとして合格率があります。キャリアコンサルタント試験の合格率はというと、開催回によって異なり50%程度になる回もあれば、難解な問題が多い回だと20%台まで落ち込んでしまうようです。過去に2回ほど極端に合格率が低い回がありました。第4回のキャリアコンサルタント試験では学科試験の合格率23.5%、第9回のキャリアコンサルタント試験の学科試験は合格率28.8%でした。一般的な国家資格と比べても難易度はやや高めの回だったようです。

 

資格検定の学科試験で出される問題に関する知識のほとんどは、協会が指定しているキャリアカウンセラー養成講座で学べるため、やはり養成講座を受講する意味は大きいのではないでしょうか。

(2)実技試験の問題傾向

キャリアコンサルタント試験の実技試験は、「実技試験」と呼ばれていますが、実際に行なうのは論述と面接です。実技試験の記述試験も学科試験と同様にペーパーテストで合否を判定されます。実技試験には明確な傾向があり、試験対策は比較的立てやすいと言えます。

 

論述試験では、以下のような問題が出題される傾向がありました。同じ人物の悩みや相談に対して2人のキャリアコンサルタントが違う回答をしている例が出されます。この文章を読んだ上で、それぞれのキャリアコンサルタントの対応についての問題点や意見が問われます。回答方式は選択式ではなく記述式です。
制限時間は50分。記述試験は50点満点です。

 

この後、面接試験が行なわれます。面接試験では、実際のキャリアコンサルティングが想定されたロールプレイングを行ない、試験官が受験者の対応を採点。ひととおりのロールプレイングが終わると、試験官からいくつかの質問をされるので、受験者はそれらの質問に答えます。

 

面接試験は全部で約20分。100点満点で採点されます。論述試験が50点満点、面接試験が100点満点なので合計150点満点。150点満点中の90点以上が合格とされ、合格率は毎回70%前後とされています。

(3)キャリアコンサルタントの試験の注意点

キャリアコンサルタント試験は、2019年6月現在で年3回のペースで開催されています。2019年は、7月(第12回)、11月(第13回)に行なわれ、2020年3月(第14回)にも開催されます。注目したい点は、学科試験と実技の論述試験は同じ日に開催されますが、実技の面接試験は別の日に開催されるという点。最初のキャリアコンサルタント試験の試験日から1週間後または2週間後に実技の面接試験が行なわれます。

 

受験費用は、学科試験の費用が8,900円、実技試験の費用が29,900円、それぞれ税込みの料金です。また、キャリアコンサルタント試験に合格して、資格を取得した後も5年ごとに更新講習を受けなければなりません。5年ごとに受ける更新講習は、知識維持のための講習が8時間程度、技能維持のための講習が30時間程度とされています。

 

キャリアコンサルタントとキャリアコンサルティング技能検定との違い

キャリアコンサルタントとキャリアコンサルティング技能検定との違い_4

(1)キャリアコンサルティング技能検定とは?

キャリアコンサルティング技能検定とは、技能検定キャリアコンサルティング職種の1級または2級になるための試験です。
キャリアコンサルティング技能検定の受験資格は、少々複雑かつ複数あります。これまでの実務経験の年数によって、実務経験のみで受験資格を得られるか、他の要素が必要になるかが変わります。

 

2級の場合「5年以上の実務経験を有する者」は、その要素だけで受験資格保有者になれます。それ以外の方は、実務の経験および大学や大学院での必要項目の履修と卒業した経歴や、厚生労働省が認定する講習を受けていることが条件になります。

 

1級の場合は「10年以上の実務経験を有する者」は、その要素だけで受験資格保有者になれます。それ以外の方の資格保有条件については、2級の受験資格と概要は同等で、実務経験年数が5年多く求められるという違いがあります。
ご自身の現状のキャリアが受験資格に該当しているのか、下記ページにて確認してみましょう。

出典:「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会」

 

一般的にはキャリアコンサルティング技能検定2級を持っていると、熟練したキャリアコンサルタントと見なされることが多く、キャリアコンサルティング技能検定1級を取得していると、キャリアコンサルタントを指導する立場にもなれるようです。

(2)キャリアコンサルティング技能検定の試験内容

キャリアコンサルティング技能検定2級の試験内容は、難易度は異なりますがキャリアコンサルタントの試験内容と大きな違いはないようです。学科試験と実技試験(論述試験と面接試験)に分かれており、筆記試験が4択のマークシート問題である部分も似ています。

 

基本的には、キャリアコンサルティング技能検定1級の試験内容も、キャリアコンサルタントの試験と大きくは変わりません。ただし、論述試験の試験問題が1問から2問に増えます。また、面接試験の試験時間がキャリアコンサルタントの試験やキャリアコンサルティング技能検定2級の試験よりも10分ほど長くなります。

 

なお、試験の開催日はキャリアコンサルタント試験よりも少なく、2級が年に2回開催、1級においては年に1度の開催となっています。チャンスが少ない分、開催日はきちんとチェックしておきたいところです。

2019年の開催は、2級が前期(第22回)は6月16日、後期(第23回)は12月15日。1級は後期(第9回)のみで12月15日です。この日程で学科と実技(論述)が行なわれ、実技(面接)は別日に設定されています。

キャリアコンサルタントが国家資格化されたことで受験者が今後増えると予測されています。

 

まとめ

 

国家資格化されてからわずか数年。キャリアコンサルタントはまさにこれからの資格と言えそうです。この資格が普及するまではライバルも少ないため、ビジネスに活かせる機会も多いでしょう。

 

少しでも興味が持てたなら、まずは定期的に開催されている説明会に参加することをおすすめします。きっと有益な情報が得られ、今後のビジネスプランにも良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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