個人事業主と法人、税金はどちらがお得?

作成日:2016/12/26

 

税の仕組みを理解して、自分でシミュレーションできるようになろう

個人事業主と法人、税金はどちらがお得?

 

独立・起業して事業を営んでいくにあたって、税金に関する知識は必要不可欠です。

独立後、個人事業主としてある程度ビジネスが成長してきた場合に、このまま個人事業主としてやっていった方が得なのか、それとも法人化してしまった方がいいのか、という疑問をお持ちの方は多くいらっしゃいます。最近、弊社に登録されているフリーランスで活躍されているコンサルタントの方からもそのようなご相談やご質問を受けることが増えてきています。一般的には、所得が増えれば増えるほど、法人化した方が税金は得になります。具体的に幾ら以上が分岐点となるかについては、前提条件次第で変わりますので、両者の計算方法を十分理解したうえで、自分でシミュレーションできるようになっておくと、損をしないで済みます。

そこで今回は、個人事業主および法人の所得に対する課税について整理したうえで、簡単な数値例を用いて、両者でどの程度の課税負担になるのかをシミュレーションしてみたいと思います。

注:地方税については東京23区を前提とし、税率は2016年現在のものとします。

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個人事業主の場合

個人事業主の場合、所得税・住民税・事業税が以下のように課されます。

1.所得税

所得税は、「課税される所得金額×税率-控除額」という計算式で算出されます。所得税を算出する際の税率と控除額は、所得金額に応じて下記のように定められています。

所得金額が、

  • 195万円以下の場合 税率:5% 控除額:0円
  • 195万円超330万円以下の場合 税率:10% 控除額:97,500円
  • 330万円超695万円以下の場合 税率:20% 控除額:427,500円
  • 695万円超900万円以下の場合 税率:23% 控除額:636,000円
  • 900万円超1,800万円以下の場合 税率:33% 控除額:1,536,000円
  • 1,800万円超4,000万円以下の場合 税率:40% 控除額:2,796,000円
  • 4,000万円超の場合 税率:45% 控除額:4,796,000円

また、平成49年12月31日までの所得に対しては、所得税とは別に復興特別所得税も課されます(計算式は「所得税額×2.1%」)。

2.住民税

住民税は、前年の所得金額に応じて課される「所得割」と、すべての人に等しく課される「均等割」の2つに分けられます。
計算式は下記の通りです。

・所得割:(前年の総所得金額-所得控除額)×10%(*1)
・均等割:5,000円(*2)

(*1) 都道府県民税4% + 区市町村民税6%
(*2) 都道府県民税1,500円 + 区市町村民税3,500円

3.事業税

事業税は、「事業所得等-事業主控除(年290万円)×5%(一定の業種については3%または4%)」として計算されます。

 

法人の場合

法人については所得税・住民税・事業税が以下のように課されます。

 

次に、法人については所得税・住民税・事業税が以下のように課されます。

1.法人税

法人税には、国税と地方税があります。

(1)国税

法人税(国税)は、以下の算式で計算されます。
「所得金額×23.4%(中小法人については、年800万円までの所得金額については15%)」

(2)地方法人税

法人税(地方税)は、以下の算式で計算されます。
「法人税額(国税)×4.4%」

2.住民税

住民税は、所得に応じて課される「法人税割」と、会社の規模に応じて課される「均等割」の2つに分けられます。

(1)法人税割

以下の算式で計算されます。
「法人税額(国税)×12.9%(*3)」
(*3) 都道府県民税3.2% + 区市町村民税9.7%

(2)均等割

資本金と従業員数に応じて金額が定められています。
主たる事業所が東京23区にある場合、税額は下記の通りです。

<従業員数50人以下の企業>
資本金が、

  • 1千万円以下の場合 70,000円
  • 1千万円超1億円以下の場合 180,000円
  • 1億円超10億円以下の場合 290,000円
  • 10億円超50億円以下の場合 950,000円
  • 50億円超の場合 1,210,000円

<従業員数50人超の企業>
資本金が、

  • 1千万円以下の場合 140,000円
  • 1千万円超1億円以下の場合 200,000円
  • 1億円超10億円以下の場合 530,000円
  • 10億円超50億円以下の場合 2,290,000円
  • 50億円超の場合 3,800,000円

3.事業税

事業税は、所得金額に応じて下記のように税率が定められています(外形標準課税については不適用、標準税率・軽減税率適用法人の場合を仮定)。所得金額が、

  • 年400万円以下の場合 所得金額×4%

  • 年400万円超800万円以下の場合 所得金額×1%

  • 年800万円超の場合 所得金額×7%

また、2017年3月までに開始する事業年度までは、上記とは別に地方法人特別税も課されます(計算式は「事業税額×43.2%」)。

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具体例:法人と個人ではどちらが得か?

個人事業主と法人とで税負担はどう異なるのか?

 

さて、上記を踏まえたうえで、以下のような設例を考えてみましょう。売上と経費が同じ金額だった場合、個人事業主と法人とで税負担はどう異なるのでしょうか。

【ケース1】
青色申告をしている個人事業主のAさん(独身)の事業において、年1,000万円の収入、経費が400万円だった場合

1.所得税・復興特別所得税

まず、「課税される所得金額」を求めます。Aさんは青色申告をしているので、所得税基礎控除38万円のほか、青色申告特別控除65万円が適用されます。したがって、課税される所得金額

=1,000万円-400万円-所得税基礎控除38万円-青色申告特別控除65万円
=497万円
となります。

ここで、前述の所得税に関する税率・控除額の一覧をご覧いただくと、「330万円を超え695万円以下」にあたりますので、税率20%、控除額427,500円となります。

したがって税額は、

所得税=課税される所得金額497万円×税率20%-控除額427,500円 = 566,500円
復興特別所得税=566,500円×2.1% = 11,800円(100円未満切り捨て)
となります。

2.住民税

次に住民税についてですが、所得税同様、まずは課税対象となる所得金額を求めます。Aさんは青色申告をしているので、住民税基礎控除33万円、および青色申告特別控除65万円が適用されます。

したがって、

課税対象となる所得金額=1,000万円-400万円ー33万円-65万円=502万円
となります。

これをもとに住民税を計算すると、
所得割 5,020,000円×10% + 均等割5,000 円 = 507,000円
となります。

3.住民税

最後に事業税についてですが、算式にあてはめ、

(事業所得600万円 -事業主控除290万円)×5% = 155,000円
と計算されます。

【ケース2】
ケース1と同様の収入・必要経費のもと、法人化した上で、Aさんに500万円の給与を法人が支払う場合

では次に、法人のケースを見てみます。この場合は法人部分と個人部分に分けて考える必要があります。

<法人部分>

1.法人税

まず、法人税についてですが、Aさんに対する給与も必要経費に含められますので、
所得金額=1,000万円-400万円ー500万円=100万円
となります。

800万円までの所得に対しては税率15%を適用できますので、

法人税=100万円×15%=150,000円
となり、

地方法人税=150,000円×4.4%=6,600円
となります。

2.住民税

次に、住民税についてですが、

住民税=法人税割150,000円×12.9%+均等割70,000円=89,300円(100円未満切り捨て)
となります。

3.事業税

最後に事業税についてですが、所得金額は年400万円以下ですので、

事業税=100万円×3.4%=34,000円
となり、

地方法人特別税=34,000円×43.2%=14,600円(100円未満切り捨て)
となります。

<個人部分>

1.所得税

まず、所得税についてですが、Aさんは給与所得を500万円受け取りますので、給与所得控除が500万円×20%+54万円=154万円となります。

これに加えて所得税基礎控除38万円を考慮すると、

課税される所得金額=500万円-154万円-38万円=308万円
となります。

ここで、前述の所得税に関する税率・控除額の一覧をご覧いただくと、「195万円を超え330万円以下」にあたりますので、税率10%、控除額97,500円となります。

したがって、

所得税=課税される所得金額3,080,000円×税率10%-控除額97,500円=210,500円

復興特別所得税=210,500円×2.1%=4,400円(100円未満切り捨て)
となります。

2.住民税

次に住民税についてですが、住民税基礎控除33万円を考慮すると、

課税対象となる所得金額=500万円-154万円-33万円=313万円
となるので、

住民税=所得割 3,130,000円×10% + 均等割5,000 円 = 318,000円
となります。

3.事業税

この場合、個人では事業を営んでいないため、課税対象外となります。以上をまとめると、次のようになります。

【ケース1】個人事業主の場合

所得税:566,500円+11,800円=578,300円
住民税:507,000円
事業税:155,000円

合計:1,240,300

【ケース2】法人化した場合
<法人部分>

法人税:150,000円+6,600円=156,600円
住民税:89,300円
事業税:34,000円+14,600円=48,600円

計:294,500円

<個人部分>

所得税:210,500円+4,400円=214,900円
住民税:318,000円

計:532,900円

合計:827,400円

 

いかがでしたでしょうか。

今回の設例では、法人化したほうが約40万円も得となりました。ただし、収入や経費の水準、法人化した場合に支払う給与の水準など、前提条件を変えることによって税額は変わってきますので、独立・起業の際、個人事業主として始めるか法人を設立するかを検討するにあたっては、税額計算の仕組みをきちんと理解しておくことが重要です。

また、複雑になるので触れませんでしたが、より詳細な負担の検討に際しては、税金だけではなく、社会保険料も含めて考える必要があります。独立・起業を予定しているフリーランスの方も、既に事業を始めている方も、設例をもとにご自身のビジネスにあてはめて、個人事業主と法人のどちらが有利か、この機会に検討されてみてはいかがでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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