転職に有利?ビジネスキャリア検定試験とは?
作成日:2017/01/18
“ビジネスキャリア検定試験”とは何か?
ビジネスキャリアとはBusinessとCareer(経歴)をあわせた和製英語で、おもに職務経験や仕事上の実績の意味で使われます。それを評価する仕組みとして、平成5年に労働省(現・厚生労働省)がホワイトカラー(事務職)に対して「担当職務を適切にするために必要となる、専門的知識・能力を体系的・段階的に習得することを支援するための学習システム」 を提供する“ビジネスキャリア制度”が始まりました。
ビジネスキャリア制度とは、すでに存在した建設・製造関係などに従事する「技能士」、いわゆる職人さんの国家資格制度のホワイトカラー版として登場し、事務などの業務効率化を目的としたわけです。
この制度の導入により、企業側は、職務基準の明確化、従業員に求められる仕事知識・業務能力水準が客観的に示せるようになり、同時に従業員側も、業務遂行あたってどのような知識・能力が必要かがわかり、目標に向けての学習プランが立てやすいという一石二鳥の効果が期待されました。その後、平成19年に「能力評価機能を大幅に高める観点」から専門知識を8分野、3レベルにランク付けする見直しが行われ、“ビジネスキャリア検定試験”と改称し、現在に至っています。
“ビジネスキャリア検定試験”の8分野と3等級制度
“ビジネスキャリア検定試験”を実施するのは、“ビジネスキャリア制度”時代と同じく、中央職業能力開発協会(JAVADA)です。
ここは「職業能力評価に係る基盤の整備・充実」や「職業生活の全期間を通じたキャリア形成の支援」などを目的とする厚生労働省職業能力開発局能力評価課所管の特別民間法人であることから、“ビジネスキャリア検定試験”は公的資格とされています。また、同協会のホームページにもはっきりと公的資格試験と表記されています。
そして、ビジネスキャリアにおける公的資格試験の分野は、次のように8つに分類されています。
(1).人事・人材開発・労務管理
(2).企業法務・総務
(3).経理・財務管理
(4).経営戦略
(5).経営情報システム
(6).営業・マーケティング
(7).ロジスティクス
(8).生産管理
さらに上記8分野の下に中分類としての部門が設けられ、それぞれに知識レベルや業務での実践・応用能力によって、1級・2級・3級に分類されています。ここで注意したいのは、たとえば「企業法務・総務」分野での「総務」部門には、総務1級という資格がないように、部門によっては最初から1級あるいは3級といった分類がない資格があることです。
また、ビジネスキャリア検定試験は年間を通じて随時実施されるものではなく、現状は年度ごとに前期・後期の2回の試験に限定されています。そのため、確実な検定試験合格をめざすためには、各試験日程から逆算した学習を計画的に進める必要があります。
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“ビジネスキャリア検定試験”と“ビジネス能力検定試験”
“ビジネスキャリア検定試験”と混同しやすいものに、“ビジネス能力検定試験ジョブパス”というものがあります。この2つの最大の違いは、前者は公的資格が与えられる試験であるのに対し、後者は一般財団法人職業教育・キャリア教育財団が実施するもので、民間資格になるということです。
また、両者の内容的な違いは、“ビジネスキャリア検定試験”が専門分野別による客観的・実践的な基準でビジネスマンのスキルを測るのに対し、“ビジネス能力検定試験ジョブパス”は、ビジネスマナーやマーケティング、マネジメントの基本など、新社会人から入社5年目程度の人材が身につけるべきスキル全般に関する試験となっています。試験の目的がそれぞれ異なっていますので、どちらが就職や転職に有利なのかを直接比較することはできません。
ただ、中央職業能力開発協会は、ホームページでかなりのスペースを割いて“ビジネスキャリア検定試験”の案内をしていることや、人事制度に導入した上場企業の例を多数紹介していることが特徴的です。
これに対し一般財団法人職業教育・キャリア教育財団は、ホームページ上の情報は受験案内程度にとどめています。したがって、就職に有利かどうかということではなく、総合的なビジネス能力を獲得したいのであれば“ビジネス能力検定試験ジョブパス”、専門分野でのスキル深化を目指すなら“ビジネスキャリア検定試験”に挑戦するといいのではないかと考えられます。
“ビジネスキャリア検定試験”は就職・転職に有利とは言い切れない
ただし、これらの試験に合格すると本当に就職や転職に有利に働くのでしょうか?
この観点からすると、民間資格である“ビジネス能力検定試験ジョブパス”は、残念ながら就職や転職に有利という客観的な事実や統計調査データが見つかりません。2013年までに延べ96万人の受験者があったにしては、運営側による資格保持者の就職・転職結果の追跡調査がなく、資格の効果測定に物足りなさを感じます。
一方、“ビジネスキャリア検定試験”についても、就職や転職に有利であるというはっきりとしたデータはありませんが、制度改定後の総務省統計局の資料や中央職業能力開発協会のホームページにある導入企業の実例から効果を推定することができます。
たとえば、制度改定後の“ビジネスキャリア検定試験”発足直後の平成20年に「正社員または非正社員についてビジネスキャリア検定を利用している」割合は、調査対象企業の7.1%に過ぎませんが、補助や講習の形で「ビジネスキャリア検定試験を受検する労働者への支援」をしている企業は85.9%にものぼっています。
しかし、現在「“ビジネスキャリア検定試験”を実際の経営に導入している」と中央職業能力開発協会のホームページで公表している企業は、東証一部上場企業を含め、全部で35社しかありません。さらにそのうち4社が、昇格要件など会社主導で取得を要件としていることを明らかにしています。これらのデータを見る限り、どうやら“ビジネスキャリア検定試験”は、就職・転職者側に必要な資格というより、従業員や社員の人事評価の指標として用いられている様子が伺えます。
このように、制度導入が企業主体である状況と、知名度や評価に関する統計データが見つからないことから、“ビジネスキャリア検定試験”は、新卒就職者や転職者にとって「必ずしも有利になる条件ではない」といえるのかもしれません。
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就職や転職において、資格は成功の出口ではなく、これからはじめるビジネスのためのエントリー要件だといわれます。まさに“ビジネスキャリア検定試験”もその通りで、資格は「その仕事を効率よく遂行する能力」に対する期待値を上げるものなのだと思います。仮にこの試験が実務を伴うものであっても、実際に個々の企業に勤めれば、試験で受けたシミュレーション以外のイレギュラーな場面にもたびたび遭遇すると考えられ、そうなった時、いまだ経験のない課題をどう解決するか?
その解は資格によって与えられるものではなく、やはり知識や経験に応じて導き出されるものなのでしょう。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)