週末起業とは?本当の目的や副業・兼業との違い
作成日:2017/06/07
国が兼業・副業を推進する時代が来た
2016年10月下旬、安倍首相は、「働き方改革」実現に向けた有識者会議で、自宅で働くことのできる「テレワーク」や「兼業・副業」などが重要であると述べ、「ガイドラインの制定も含め、多様な政策手段を検討するよう指示」しました。
日本で働き方改革が必要になっている背景には、少子高齢化による人口・労働力の減少や、グローバル化による国際競争の激化といった構造的要因があると言われていますが、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の高橋俊介氏によれば、下記に代表されるような日本独特の働き方やマネジメント方法も、日本人の働き方を特殊なものにした原因であると言われています。
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① 仕事を通じて仕事を学び、学校には戻らない、自己啓発しない
② 女性管理職が少ない、外国人社員も少ない
③ 学校や地域などの社会活動に、男性が参加しない
④ 年次有給休暇の取得率が低い
⑤ ホワイトカラーの多くが残業対象で、転居を伴う転勤が多い
⑥ 仕事や育児などを楽しんでいない、自分の会社に誇りを持っていない
⑦ 全てにおいて、ネガティブシンキングである
⑧ ワーカホリズム傾向が強い
なお、厚生労働省が策定したモデル就業規則には「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業・兼業を実質禁止する条項があります。有識者会議での安倍首相の指示とは正反対の方針ですが、従来はこれがモデルとして広く使用されていたのです。
2016年11月23日付けの日本経済新聞の報道によれば、「兼業・副業導入 中小にも 厚労省、モデル就業規則改正へ」とあり、さすがに政府の意向を受けた変更を行うそうですが、「中小企業ではモデル就業規則をそのまま自社に転用する場合も多い」(日経新聞)だけに、よほど強力に新しいモデル就業規則を発信しなければ、すぐに浸透するのは難しいのではないかと考えられます。
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会社を辞めずに週末だけ起業する
一方、国税庁民間給与実態統計調査による日本人サラリーマンの平均年収は、1998年の467万円をピークに減り続け、2009年には406万円にまで落ち込みました。その後やや回復したものの、2014年は415万円と伸び悩みが続いています。
2012年の政権交代以後、一定のアベノミクス効果もあって経済は回復傾向に向かいました。その後も堅調に推移し、2014年に入り大手企業を中心に経済界は好調な業績を上げています。また2012年以降、企業の倒産数そのものは減少し、2013年には1万件を割りました。ところが、休廃業による会社解散は、2013年には近年最高の29,351件、2014年には27,379件、2015年には26,699件と高止まり傾向が続いています。
このような時代、いわゆるサラリーマンにあっては、給料の伸び悩みとともにいつ会社がなくなってもおかしくないというリスクにさらされていることになります。そのリスクを回避する方法として出てきたのが、「兼業・副業」を一歩進めた「週末起業」という考え方です。
この週末起業の最大の魅力は「会社を辞めずに休みの日と休みの時間だけ起業する」ことで、安定した収入を確保することができる点にあります。そして、ビジネスの地盤が固まった時にはサラリーマンを辞めてからの起業よりも少ないリスクで経営者として独立できることも、メリットのひとつであると言えます。
やりたいことでオンリーワンを目指す
もともと「週末起業」とは、経営コンサルタントの藤井孝一氏が2003年に著した「週末起業」という著書から生まれた言葉です。
注意したいのは、サラリーマンによる「副業」とは似て非なるものであるということです。同氏が指摘するように「副業は時間の切り売り」にすぎず、「時間×時給」以上には稼げません。これに対して「週末起業」は「会社を辞めず、お金もかけず、自分の好きなことで起業」すること、つまり、経営と生活に必要なキャッシュフローはサラリーマンとしての給料から充当し、余計な投資は行なわず、かつ時間の切り売りではなく自分の好きなことをビジネスにする、ということです。
藤井氏はまた、実際に成功した週末起業の共通項として、次の3点を挙げています。
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①自分の趣味や特技を生かしたビジネスをしていること
②お金をかけずに始めたこと
③インターネットを駆使していること
その具体的な例としては下記のようなビジネスがありますが、いずれも趣味や特技を生かしたものであると言えます。
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・自転車修理技術の学校の開校
・夜景の評論家
・化学の分野に特化した英字翻訳
・手作りせっけんの製造・販売
・週末だけ開店する雑貨屋・古本屋
・バーベキューの出張調理などの代行ビジネス
・お墓参り代行
・文房具コンサルタント
・経営コンサルタント
・家庭菜園アプリ開発
しかし、こういった趣味や特技を生かしたビジネスはすぐに発想できるものではありません。そこで必要になるのは、「やりたいこと」「できること」「時流にのっていること」の3つの要素を兼ね備えた起業アイデアを考え続けることです。
このとき注意したいのは「ビジネスとして成立するほど顧客がいるか?」「すでに同じビジネスをやっている人はいないか?」の2点です。当然のことながら、顧客がいなければモノやサービスは売れません。
また、インターネットを利用したビジネスの場合、同じビジネスモデルであれば早ければ早いほど先行者利益を得ることができる反面、後発組になればなるほど儲からないことは理解いただけるでしょう。藤井氏が指摘するように、週末起業を成功させるには、「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」を目指すことが成功の秘訣なのかもしれません。
コンサルタント志望者向けの書籍『普通のサラリーマンでもできる!「週末コンサル」の教科書』では、「会社に所属しながら、週末だけ自身で起業した事業を行ない、独立の準備期間にしよう」という方法を伝えています。
著者であるオンリーワン・コンサルタント養成アカデミー代表の鈴木 誠一郎氏が、自身がコンサルタントとして独立されるまでの経緯や思いを『ゴーン改革の最中に独立・起業 自らの知見のすべてを後進の育成に捧げる』(http://freeconsultant.jp/workstyle/w034)の中で話しています。独立を考えている方にとって、ヒントになることがきっとあるでしょう。
忘れられがちな税務関連業務に注意
週末起業を始めるに際して、どのように税務処理を行なうかも重要な問題です。仮にサラリーマンを続けながら原稿料やオークションなどで稼いでいた場合、それが年間20万円以下ならば「雑所得」として税務署への申告は不要になります。
週末起業の年間所得が20万円を超えた場合には、個人事業主が得た「事業所得」とみなされますので、「サラリーマンとしての給与所得+事業所得」を合算して確定申告する必要があります。サラリーマンの場合、ほとんどは年末調整が確定申告の代わりになりますが、年末調整を行なったとしても、給与以外の所得が20万円を超えた場合には別途確定申告を行なわなければなりません。
また、法人設立を行なった場合、「サラリーマンとしての給与所得+週末起業での役員報酬」が個人の収入、「週末起業会社の利益」が法人の収入となり、「サラリーマンとしての給与所得+週末起業での役員報酬」には所得税が、「週末起業会社の利益」には法人税がかかります。このため、高額な役員報酬を設定すると、サラリーマンとしての給与所得と合算したときに所得が非常に高くなり、累進課税制度によって所得税がきわめて高額になる可能性があります。さらに、週末だけとはいえ起業をすると、場合によっては消費税も課税されることになります。
“お金をかけずに好きなことで週末だけ起業”というと、趣味の延長で楽しいことばかりのようなイメージがありますが、事業を営む以上は事務作業も発生すること、そして利益が出れば税金を納める義務も発生することは、始める前に改めて心に留めておいた方がよいでしょう。
まとめ
週末起業のいちばんの目的は収入源を増やすこと、という人が多いかもしれません。しかし、小規模であっても事業運営をしてみると、サラリーマンとしての仕事ではできない経験や得られない知識が身につくことが多く、仮に事業としてうまくいかなかった場合でも、サラリーマンとしての自分自身のスキルアップには確実につながると言われています。
サラリーマンとして成長でき、収入も増える可能性があり、いずれは経営者として独立もできるかもしれない。そんな一石三鳥の週末起業にあなたも挑戦してみてはいかがでしょうか。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
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