男性の育児休暇取得率は?育休期間や義務化した原因とは?事例を交えて解説

最新更新日:2023/01/31
最新作成日:2023/01/31

 

女性に比べ極端に低い男性の育児休暇取得率

男性 育休

 

厚生労働省の平成27年度雇用均等基本調査によれば、男性の育児休暇の取得率は、4.05%で、前回調査の2.13%より1.92 ポイント上昇したものの、依然として低い数値を記録しています。これは福祉先進国と呼ばれるノルウェーの90%スウェーデンの80%ドイツの34%比べると非常に低いといわざるを得ません。

 

安倍首相が、2013年4月に行なった成長戦略スピーチでは、「『女性が働き続けられる社会』を目指すのであれば、男性の子育て参加が重要なことは当然のこと」としていますが、現実には男性の子育て参加が難しい状況にあります。実際、同年度で女性の81.5%が育児休暇を取得していることから見ても、男性の育児休暇取得率はきわめて低いことがわかります。

 

もちろん政府も手をこまねいているわけではなく、2016年度から5年間の目標を定めた第4次男女共同参画基本計画で、「男性の育児休業取得率を、2020年までに13%に引き上げる」としています。そのために、「中小企業における有給休暇の取得率向上や、60時間を超える残業に対する割増賃金率(50%以上)を、大企業だけでなく中小企業にも適用することなど」の取り組みをはじめました。

出典:厚生労働省 調査結果についてⅡ

出典: 内閣府男女共同参画局ホーム 第4次男女共同参画基本計画(平成27年12月25日決定)基本的な方針

 

男性の育児休暇取得率の低さはパタハラが原因とも

男性 育休

 

しかし実際には、男性の育児休暇の取得率向上は遅々として進んでいません。ではなぜこのような状況が起きているのかといえば、多くの企業のなかで「パタニティハラスメント(パタハラ)」が進んでいるためと指摘する意見があります。

 

パタニティハラスメントとは、パタニティ(Paternity/父性)とハラスメント(harassment/いやがらせ)を組み合わせた造語、男性社員が育児休業を取得しようとしたり、育児短時間勤務制度、フレックス勤務などの申し出を断るなどの嫌らがせ行為を指します。

 

それが起こる原因としては旧時代的な企業風土や、男は仕事に専念すべきといったステレオタイプの上司の存在が挙げられます。特に、2017年1月に施行された改正育児・介護休業法では、原則として「父親、母親のいずれでも育児休業をすることができます」と定めているので、男性社員による育児休業の取得を認めないのは違法行為といえます。また、2010年の改正育児介護休業法の「育児休業の労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止」により、妻が専業主婦であっても夫は育児休業を取得できるようになりました。

ところが、日本労働組合総連合会の「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」によれば、

  • 1.職場でパタハラをされた経験がある 11.6%
  • 2.周囲でパタハラにあった人がいる 10.8%

という結果がでています。こうした企業がなくならない限り、これから男性の育休取得が一気に進むことは難しいといえるでしょう。

出典:日本労働組合連合 パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査 20140123

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中小企業でもできる男性の育児休暇の取得への取り組み

男性 育休

 

では逆に、男性の育児休暇の取得に積極的な企業にはどのようなところがあるのでしょう?

厚生労働省の「イクメンプロジェクト」では、2013年度から男性の育休に取り組む「企業・イクボス取組事例」を紹介しています。そのなかでも比較的規模の小さい法人の良い事例として、次の3つが挙げられます。

1.社会福祉法人桔梗会(群馬県)

イクメン企業アワード2015グランプリを受賞した医療・福祉業。男性の育児休業の取得促進・積極的な育児の推進により、男性の育児休業取得率が平成21年度0%だったものが平成22年度以降は毎年100%に達しました。そのために管理職からの育児休業取得の呼びかけや、イクメン&ワーク・ライフ・バランス研修、育児休業の有給化(7日以内)、年次有給休暇の時間単位取得、リフレッシュ休暇の付与、業務改善・所定外労働削減など仕事と育児を両立できる職場環境整備を実施しました(従業員数は57人)。

参考:https://www.kikyou.or.jp/

2.アースクリエイト有限会社(岐阜県)

道路標示、区画線等の路面塗装や、道路規制標識など設計施工を行う建設業。従業員数22名の小規模事業所でかつ男性従業員が多い建設業でありながら、これまでに延べ8名の男性従業員が育児休業を取得しました。そのために営業本部長から従業員宛の文書による休暇の周知も随時実施。また「始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ制度」の導入により、中学卒業までの子を養育する従業員は、始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げか可能となり、授業参観や運動会等の行事に積極的に参加することが可能となりました。さらに「柔軟な勤務時間変更制度」の導入により、子どもの急な病気などの際には柔軟に勤務時間を変更することができるようになりました。

参考:http://www.nlg.co.jp/

3.有限会社COCO-LO(群馬県)

従業員数約60人の介護事業者。管理職や同僚からの声かけ不在時におけるiPhoneやiPadを活用した情報共有等により、所定外労働の削減と休暇を取りやすい職場環境づくりを実現。 ライフイベントに応じたさまざまな休暇制度を設け、「お互い様風土」の醸成より育児休業や「パパ産休」(配偶者の出産時等の休暇)の取得が容易になりました。

参考:http://coco-lo.net/

パタハラを取り上げたサイトのなかには、「マンパワーで会社が回っている中小企業ほどその傾向は強く」働く男性に育休の概念が広がっていても、それを受け入れきれないと指摘するものもあります。しかし、上記の事例は、たとえ中小企業であっても企業の取り組みいかんによって、男性の育休は十分取得できることが証明されています。

 

要は男性の育児休暇取得率が上がるかどうかは、企業や上司の考え方次第ということです。改善するためには、会社の支援制度の設計や運用の徹底、男は仕事、子育ては女の役割といったような性別役割分担意識の矯正、周囲の社員からのフォローやケアがなんとしても必要になります。

 

まさに連合が指摘するように、男女問わず、育児と仕事を両立できる社会づくりが急務といえるのです。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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