失敗事例に学ぶ 独立や起業のためにおさえておきたいこと
作成日:2017/12/11
知識だけでなく失敗からも学ぶ
終身雇用・年功序列を前提とした日本の労働社会が変化を余儀なくされる時代がやってきました。働き方の多様性が少しずつ許容される現在、エンジニアやコンサルタントなど、手に職をもつ方々は特に、将来いろいろな選択肢が開けています。
独立・起業を考えるならば、フリーランスとして個人事業主のかたちをとって独立する、あるいは会社を興して経営者となっていくといったかたちで、会社の“庇護”を離れ独り立ちしていくことになります。
いざ独立・起業するとなれば、誰もが成功を収めたいと思うはず。当然、その準備は入念に行なう方が大半でしょう。いまは、独立・起業に関するノウハウもさまざまな方法で入手しやすくなっています。「基礎知識も勉強したし、フリーランスや経営者の厳しさも理解している」という方が多いことと思います。
それでも、実際にその世界に飛び込んでみて初めてわかることもあります。そして、想定のストーリー通りにうまくいかず、失敗してしまうこともないとは言い切れません。もし失敗してしまったら、そこから何か学びを得て次に生かすしかありませんが、そうなる前に先人の失敗事例から学びを得ておくことは非常に有用です。さまざまなケースから、大きく3つの“失敗”に分けて対策を学んでいきましょう。
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ケース1 お金がない!
独立・起業するとなれば、ある程度の運転資金を準備して臨むことが一般的です。なかには「次の仕事のあてはあるから大丈夫」と、独立に乗り出す場合もあるかもしれません。それでも、「お金がない!」という事態に陥ってしまうことがあります。原因の一つは、会社員時代とは異なるお金の動きです。
会社員時代は、月に一度は給与がありました。独立・起業すれば、仕事の対価として売り上げを得て、そこから自分自身の給与を生み出すことになります。その売り上げの入金のサイクルが一様ではなく、取引先によって異なるのです。多いのは「末日締め・翌月末払い」ですが、「翌々月末払い」あるいはそれより長いということもあります。
個人事業主や会社の場合、売り上げが入らなければ、自分個人の収入もありません。一方で、家賃やクレジットカードの支払いは従来どおり月末です。帳簿上は黒字なのに手元の資金が不足しておこる「黒字倒産」も、この決済のタイミングの差によって資金繰りが困難になることで起こります。
もう一つは、税金や社会保険の支払いです。会社員時代の収入が多かった方は、前年の収入をもとに課される所得税や住民税も高額になります。独立・起業して資金が不足しているにもかかわらず、前年の収入が多かったために支払うべき税金が大きくなってしまうということもよくあるのです。また、フリーランスの方は国民健康保険に加入するケースも多いのですが、会社員時代とは異なり全額自己負担となる健康保険料の支払いも負担が大きいものです。
こうした足元のお金の流れは、意外と見落とされがちです。帳簿上の数字だけでなくキャッシュフローの観点からのチェックも怠らないこと、毎年やってくる税金や社会保険の支払いを計算しておくことは、特に独立・起業当初は重要なポイントです。
ケース2 仕事がない!
会社員時代は、仕事は上長からおりてくることが多いものです。日々さまざまな仕事に忙殺されることは少なくありません。もし仮に仕事が少ない時期があっても、差し迫って困るということはあまりないのではないでしょうか。
独立・起業すると、クライアントは自分で見つけ出し、仕事をつくり出さなければなりません。もし仕事が途絶えて暇になってしまえば、非常に焦るはずです。なぜなら、仕事のなさは売り上げのなさに直結し、自分自身の収入が途絶えることを意味するからです。会社員時代のように「そのうちまた仕事がくるだろう」と悠長にかまえていることはできません。仕事を納品してから実際に収入を得るまでのサイクルを考えれば、案件量はコンスタントに保つ必要があるのです。
そのためには、クライアントとなり得る人たちとのつながりをつくり出し、マーケティングでいうところの“見込み顧客”のようなネットワークを広げていく必要があります。いかに有力なクライアントでも、その企業からの受注が永遠に続くとは限りません。たとえば1社から100万円の受注があったとして、その1社にすべてのリソースをそそいでいたのに、その1社がなくなってしまったら――。
常に仕事と売り上げを確保するためには、仕事を得られる可能性のあるつながりを常に複数保っておくことが重要です。仕事づくりには、クラウドソーシングや当社のようなマッチングエージェントサービス(FreeConsultant.jp)などを活用するのも有効で、常にアンテナをはって、さまざまなつながりを活用していきたいものです。
ケース3 時間がない!
順調に仕事が得られるようになればありがたいと思い、この仕事をなくしたくないと思うでしょう。その気持ちが強くなるあまり、ありとあらゆる案件を受けてしまって締め切りに追われ、朝から夜中まで、休みもとらずに仕事をするようになってしまう――そうなってしまうことは珍しくありませんが、そうなると多くのデメリットがうまれます。
まず、無理がたたり健康を損ねるかもしれません。睡眠不足、運動不足、栄養不足が重なれば、重要な資本である体がもたず、事業継続に大打撃。家族がいれば、家族とのコミュニケーションもおろそかになります。さらに大きいのは、新たな知識を得るなどして自己研鑚をする時間がなくなってしまうことです。
長年にわたって事業を続け、売り上げを確保していくためには、市場の動向を常にキャッチするべきですし、新たな技術の知識も必要になります。そうしたインプットを疎かにしてしまうと、自分自身という重要な“資源”が枯渇してしまいます。直近の数か月、数年はそれでも回るかもしれませんが、その状態を続けていればその先に重大な懸念を抱えることになります。
対策としては、時間をコントロールし「たぶん大丈夫だろう」で仕事を請け負わないこと。その仕事を完全に終えるまでに、関連雑務も含めてどのぐらいの時間がかかるかという見積もりも辛めに設定しておくのが無難です。また、仕事を請け負うにあたって、生産性や時間効率を考えるという視点も欠かせません。わかりやすいのは、「その仕事にかかる総時間で考えた場合の時給がいくらになるか?」という指標でしょう。
独立や起業を考えるにあたって、資金や時間は貴重で有限な資源です。それが足りないとなればわかりやすい“失敗事例”であり、ここで紹介するまでもなく多くの方がすでに理解なさっていることかもしれません。しかし、一見しただけではわかりづらい“失敗”もあります。独立や起業して、最初はちょっとした失敗を繰り返しながらも、どうにか食べていける状態になることは難しいことではありません。しかし、その状態を維持するだけで時間が過ぎ去ってしまうようでは、先行きが不安と言わざるを得ません。この状態は、将来的に“失敗”となる可能性をはらんでいます。
フリーランスや起業したばかりの経営者は、会社員のように仕事や給与を保証する存在がありません。さまざまな業種で、市場動向も刻々と変化しています。そのような状況下で、同じ仕事がいつまであるか、その状況がいつまで続くか……そのことは、常に頭に留めて行動する必要があるでしょう。自ら成長に向けて行動し、成長を続けられる人が、独立や起業を成功に導くことができるといえるのです。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)