「フリーランスの将来性」決め手は人脈、学ぶ姿勢、専門性
最終更新日:2021/05/28
作成日:2018/07/06
デザイン、ライティング、エンジニア、コンサルタント…さまざまな業種、職種で、組織に所属するのではなく個人として活動する「フリーランス」という働き方を選択する人が増えています。政府もフリーランス人口の増加にあわせて、フリーランスの支援に取り組み始めています。
コンサルタントやエンジニアなど、自らのスキルで生きていこうと考えるプロフェッショナルにとっては、会社を辞めて独立しフリーランスとして起業する選択肢も遠い話ではありません。近い将来の具体的な進路としてフリーランスを検討する方もいれば、先々の選択肢として脳裏をかすめることがある方もいるかもしれません。
フリーランスとして独立を考える方も、なんとなくフリーランスという働き方に憧れる方も、あるいはすでにフリーランスとして働いている方も、一番気になるのはフリーランスの将来性ではないでしょうか。
そこでフリーランスの現状とあわせて、「今後フリーランスの需要が増えるのか?」「どんなスキルがフリーランスに求められるのか?」といったフリーランスの将来性について解説します。
目次
■若年層のフリーランス人口が増加!副業フリーランスも増えている
(1)フリーランスとして起業する人は若年層が多い
(2)若年層のフリーランスが増えている理由は、副業!
(3)働き方の変化によって、今後も若年層が副業へ取り組むトレンドは続く
■これから将来性が期待できるフリーランス人材とは
(1)エンジニアなどのIT系人材の不足が深刻化
(2)IT系フリーランスならではのメリットもある
(3)IT系フリーランスは収入アップも期待できる
■収入や社会的信用は?調査結果から見るフリーランスの課題
(1)プロフェッショナルとして活躍できるかが収入の差を生む
(2)フリーランスが感じる課題は「収入が不安定」と「社会的信用を得にくい」が多い
(3)フリーランス特有の課題をクリアする2つの解決策
■フリーランスという働き方に必要な3つのコツ
(1)継続して案件を受注できるよう、信頼を得て人脈を大切にする
(2)専門性の高い技術やスキルを磨いて仕事の単価を上げる
(3)フリーランスになる前から、自己研鑽力を磨いておく
※本コラムは、2021年5月28日に「調査結果からわかるフリーランスの実態」を再構成したものです。
若年層のフリーランス人口が増加!副業フリーランスも増えている
(1)フリーランスとして起業する人は若年層が多い
中小企業庁の「小規模企業白書」(2019年版)を見ると、フリーランスとして起業する人は若年層が多いという結果が出ています。この資料によれば、フリーランスとして起業した人のうち、50歳未満の人は男性の約50%・女性の約70%を占めています。
一般的な企業の社長の場合、50歳未満は約20%しかいません。このデータからも、フリーランスになる人は若年層が多いことが見えてきます(※1)。
(2)若年層のフリーランスが増えている理由は、副業!
理由その1:個人も企業も、副業や複業への関心が高まっている
50歳以下のいわゆる働き盛りの世代に、なぜフリーランスという働き方が広がっているのでしょうか。調査を見ても、副業を始めたい人は20代や30代に多いというデータがあります。若年層が副業への関心が高く、副業をきっかけにフリーランスを始める方が多いことがわかります(※2)。
理由その2:副業フリーランスが仕事を手軽に探せるサービスが増えている
クラウドソーシングを使って仕事を探す人が増える中、最近はビジネスマッチングサイトなども増えてきました。例えばAIを使ったビジネスマッチングアプリ「Yenta」は、2020年5月から全国展開をスタートしています。
気軽に副業の仕事を探せるサービスが充実してきたことも、若年層の副業フリーランスが増加している要因と考えられます。
(3)働き方の変化によって、今後も若年層が副業へ取り組むトレンドは続く
若年層は副業への関心は、これからも引き続き高まっていくことが予想されます。これは新型コロナウイルスの影響などで、働き方の大きな変化が起こっているためです。
・リモートワークによって、本業以外の時間が持てるようになった
2020年の新型コロナウイルスの影響で、日本でもリモートワークが急速に普及しました。パーソル総合研究所の調査によれば、2020年3月と4月のリモートワーク実施率を比べたところ、リモートワークを導入した企業数は約2倍にアップしています(※3)。
リモートワークによってプライベートな時間が増えたことで、副業に取り組む人が増えたと考えられます。ある調査によると、コロナ禍の影響で70%のビジネスパーソンが「自由な時間が増えた」と回答。そのうち10%が副業を始めたと言います(※4)。
リモートワークは、企業側にとってもオフィスの固定費を抑えられるなどのメリットがあるため、今後もリモートワークの普及・拡大が続くことが予想されます。
・企業側も副業をポジティブに捉え、社員の副業を解禁する動きが広がる
マイナビが2020年8月に行なった調査によると、国内企業の約50%が副業を許可しているという結果が出ています。この調査によれば、さらに将来的に副業を認める・拡充する予定の企業は57%という結果もあります(※5)。
コロナ禍で売上の減少が懸念される企業は、社員の収入補填のために副業を認めるケースもあります。しかしそれだけではなく、最近は副業が社員のスキルアップにつながることを期待して、副業を導入する企業も。こうした副業のメリットに注目する企業は増えており、今後も企業側が副業を認める動きはさらに進むでしょう。
これから将来性が期待できるフリーランス人材とは
(1)エンジニアなどのIT系人材の不足が深刻化
現在ではフリーランスにもさまざまな職種があります。その中で特に将来性が高いと言われているのが、エンジニアなどのIT業界でのフリーランスです。
これは、日本においてIT業界での人材不足が深刻化していることが大きな理由。経済産業省の発表によれば、先端的なITスキルを持つ人材が2030年には55万人不足する、という試算もあります(※6)。これはAIやDXといった技術を導入する企業が増え、IT業界で人材の需要が高まっているため。しかし人材の供給が追いついていないのが現状です。
こうした状況の中、IT業界では経験豊富な優れた人材をどう確保するかが企業の課題となっています。人材不足の中では、特に社員としての採用が難しくなります。そこでIT業界ではフリーランスへのニーズが高まってきています。
(2)IT系フリーランスならではのメリットもある
また最近は、常駐の社員ではないフリーランスのメリットに企業が注目し始めました。IT業界のフリーランスは、経験やスキルの豊富な人材が多いのが特徴。そのため企業側としては育成する必要がなく、即戦力をすぐに採用できるメリットがあります。また常駐する社員はプロジェクト終了後も雇用し続ける必要がありますが、フリーランスならプロジェクト期間だけ常駐してもらう、という働き方も可能です。
一方でフリーランスに転身するIT系人材も実は増えています。あるIT系エンジニアなどのフリーランスを扱うエージェントの調査によると、2020年の登録者数は5年前と比べて3.4倍となっています(※7)。エンジニアは、オフィスに常駐せず自宅でも働きやすい職種。コロナ禍におけるリモートワーク促進も後押しとなっています。こうした働きやすさもフリーランスに転身する人が多い要因だと考えられます。
(3)IT系フリーランスは収入アップも期待できる
さらにフリーランスに転身したIT系エンジニアのうち、フリーランスになって収入が上がった人が70%もいるという調査結果もあります(※8)。需要と供給の両面で高い伸びを見せているIT業界のフリーランス。フリーランスの中でも、今後の将来性が期待できる職種と言えるでしょう。
収入や社会的信用は?調査結果から見るフリーランスの課題
(1)プロフェッショナルとして活躍できるかが収入の差を生む
フリーランスの将来性を考える上で、まず気がかりなのが収入面ではないでしょうか。本業フリーランスか副業フリーランスかで、当然収入には大きな違いが出て来ます。
副業フリーランスは、当然ですが本業があるため働く時間が限られます。また副業では単価が低めの案件が中心。そのため専業である自営業系より、低めの年収となっています。
副業でフリーランスをはじめる場合、どうしても最初は低い収入からのスタートとなりやすいでしょう。その後プロフェッショナルとして活躍できるかどうか、ここが収入の差につながると考えられます。
(2)フリーランスが感じる課題は「収入が不安定」と「社会的信用を得にくい」が多い
フリーランスの職種や働き方によって、当然ながら課題は違ってきます。しかし多くのフリーランスが「収入の不安定さ」「社会的信用を得づらい」という2つの課題を感じていることは、あらかじめ知っておきたいところです。
(3)フリーランス特有の課題をクリアする2つの解決策
・解決策その1:フリーランスに転身する前にしっかりと準備をしておく
フリーランスとして起業した直後はさまざまな経費がかかる一方で、収入が増えるまで時間がかかります。フリーランスになる前に、数か月分の生活費・経費が払える程度の貯蓄をしておきましょう。
また日本では、フリーランスという働き方の社会的信用度がまだ高くありません。そのため収入があっても、クレジットカードや賃貸契約の際、審査に落ちることもしばしば。こういった場合に備えて、会社員のうちに引っ越しやクレジットカード作成は済ませておく方がいいでしょう。
・解決策その2:フリーランス向けのサポートサービスを活用する
少しずつですがフリーランス人口の増加に伴って、こうしたフリーランスの悩みを解決できるサービスが増えてきました。例えば、フリーランスでも借りられる賃貸物件を紹介する「smeta(スメタ)」というサービスもあります。こうしたサービスを活用することで、フリーランス特有の悩みを解決できるかもしれません。
フリーランスという働き方に必要な3つのコツ
(1)継続して案件を受注できるよう、信頼を得て人脈を大切にする
特に初心者フリーランスが求人を探す経路で最も多いのは「人脈」や「過去・現在の取引先」。つまり普段の仕事やそれ以外においても、人とのつながりを大切にすることがフリーランスには不可欠というわけです。また自分の信頼性を高めるために、常に責任をもって仕事に取り組む姿勢も求められます。
さらにフリーランスとして受注を増やすなら、SNSやビジネスマッチングサービス、エージェントなどをうまく使って営業活動に取り組みたいところ。例えばSNSを通じて自分の強みや経験を幅広くアピールすれば、これまで接点のなかったクライアントと出会える可能性もあります。
(2)専門性の高い技術やスキルを磨いて仕事の単価を上げる
「フリーランス白書」(2020年)の調査では、フリーランスに「現在の働き方を続ける・成功させるのに何が必要か?」を聞いています。この問いに対して最も多い回答は「成果に結びつく専門性・能力・経験」(約64%)となりました(※9)。
他の人が持たない、マネできないような専門性の高い経験やスキルがあれば、安定した仕事の受注につなげられます。希少なスキルなら、高単価の仕事を受注できる可能性も高まります。
つまりフリーランスとして安定した収入を目指すなら、専門性が必須というわけです。ただし得意分野の専門性を磨くだけでは、高単価は望めません。単価の高い案件を目指すには、今後ニーズの高まる分野を見据えて、新たな分野の経験を積んで専門性を磨くことも求められます。
(3)フリーランスになる前から、自己研鑽力を磨いておく
自ら学ぶ姿勢を持てるかどうか、ここも将来性を左右する大きな要素。会社員なら上司と相談しながら、自分の目標を設定できます。また会社側でさまざまな研修制度を設けている場合も多く、特に意識しなくてもスキルを磨く機会がそれなりにあります。
一方フリーランスの場合、自ら目標を設定して経験とスキルを磨く必要があります。とはいえ仕事が忙しいと、中長期的な目標を意識しないまま過ごしてしまうことも。しかし目標を設定してスキルを自分で磨かないと、スキルは徐々に陳腐化してしまいます。こうなると、仕事の受注が減っていく可能性も出てきます。
「フリーランス白書」(2020年)の調査結果でも、フリーランスの課題を解決するために実践していることとして、「書籍での情報収集」「社外セミナーの参加」「経験者への相談」「エージェントに登録」といった回答が上位となりました(※9)。さまざまな手段で常に新しい情報をインプットして、スキルや経験を身に着ける姿勢が自分の将来性につながります。
しかし、フリーランスになったからいきなり自分のスキルを磨けと言われても難しいでしょう。会社員として勤務しているうちから自分自身の目標を設定して、能動的に経験とスキルを磨くことに慣れておきたいところです。
フリーランスという働き方には、会社員にはないさまざまなメリットがあります。自分で仕事を調整できる自由な生活や、副業フリーランスの場合は本業以外で収入を手にすることができるのも大きなメリットのひとつ。
とはいえ、いきなり独立してフリーランスになるのは、それなりのハードルがあります。そこで若年層を中心に、副業からフリーランスにチャレンジする動きも広がっています。コロナ禍によって副業に注目が集まる中、今後も副業をきっかけにフリーランスに取り組む若年層は増えることが予想されます。
また特にIT業界では、人材不足によってフリーランスへの需要が増加しています。こうした状況を踏まえると、フリーランスの将来性は高いと言えそうです。
その一方で、まだまだフリーランスには収入や社会的信用の面で課題があるのも事実。フリーランスを継続して働くために、会社員として勤めているうちにしっかり準備をして、サポートサービスもうまく活用することを検討しましょう。またフリーランスとして収入を安定させるためには、人脈やスキルを磨き続けることが欠かせません。
<参照>
※1:
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b1_3_3.html
※2:https://www.persol-pt.co.jp/news/2020/03/11/4204/
※3:
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd123210.html
※4:https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1883.html
※5:https://www.mynavi.jp/news/2020/10/post_28795.html
※6:https://coeteco.jp/articles/11044#content_1
※7:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000348.000010591.html
※8:https://crowdworks.co.jp/news/0007892/
※9:https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2020/06/2020_0612_hakusho.pdf
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)