介護現場をITでサポートする「介護×IT」のいま

最終更新日:2023/07/24
作成日:2018/09/28

日本は少子高齢化がますます進み高齢者の介護を支える手も減っていくと予想されています。こうした介護・福祉の現場で山積する課題を解決する有力な手段として期待が集まっているのが、IT技術の活用です。今回は、現在の介護×ITについて解説します。

 

少子高齢化、人手不足、低賃金・・・課題山積の介護現場

課題山積の介護現場をITでサポートする「介護×IT」のいま_1

 

少子高齢化が加速する日本において、介護・福祉という業界はニーズが非常に高い分野であり、また唯一ともいえる成長産業です。ところが、そんな介護・福祉の現場も人手不足という問題に悩まされています。そもそも日本自体が、少子高齢化から労働人口が減少しており、大半のビジネスにおいて人手が不足している状況。介護・福祉業界も例外ではありません。

 

さらに、介護・福祉の現場では、ハードな仕事であることから離職率も高く、それにもかかわらず介護に携わるスタッフの賃金はなかなか上昇しません。高齢化によって介護・福祉サービスの利用者は爆発的に増えているのに、その現場で働くスタッフの数が追いつくめどが立っていないのです。

 

しかし、これからの日本は少子高齢化がますます進み、介護の現場は増える一方。高齢者の介護を支える家族の手も減っていきますし、病院の入院もどんどん短期間化して自宅での介護が避けられない情勢の中では、介護・福祉サービスなくしては高齢者介護が成り立ちません。そうした介護・福祉の現場で山積する課題を解決する有力な手段として期待が集まっているのが、IT技術の活用です。

 

国もこの動きを後押しすべく、補助金の助成を行なっています。たとえば、「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」は、中小企業や小規模の事業者がITツールを導入するとその経費の一部にあたる補助を受けることができるというもので、ITの活用による業務効率化や生産性向上を目的とした制度ですが、介護事業所でITツールを導入する場合もこの補助の対象となることがあります。そのように期待が高まる「介護×IT」の最新事例をご紹介します。

出典:IT導入補助金

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情報共有や相談をクラウドでリアルタイムに

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介護・福祉の現場におけるIT活用事例としてよくみられるのは、書類の処理に関する事務業務の負荷軽減でしょう。介護・福祉の現場では、ヘルパーさんがその日の業務内容などを日報に記すのをはじめとして、書類の作成ややりとりが多く存在します。情報共有の手段も、紙を郵送したりFAXしたりといった方法をとることが今も日常的です。加えて、同じ内容を複数の担当者がパソコンに入力するといった作業も少なくありません。

 

そういった場面で利用されるのが、介護・福祉の分野に特化した情報管理・共有のソフトウェアやクラウドサービスです。一例を挙げると、カナミックネットワークの提供するクラウド介護ソフトでは、書類に関する作業の負担を軽減するさまざまな機能が搭載されているほか、「ケアレポート」「フェイスシート」「サービスカレンダー」「おくすり手帳」といった情報と、「医師」「訪問看護師」「ケアマネジャー」「ヘルパー・介護スタッフ」「地域包括支援センター」などの介護に関わるスタッフがクラウド上で連携することができ、効率的な情報共有を可能にしています。

 

このシステムは多くの介護事業所や地域包括支援センターなどに導入されていますが、中には、東京大学高齢社会総合研究機構と千葉県柏市が共同で取り組む地域包括ケアのモデル事業「柏プロジェクト」といったところでの活用事例もあります。このプロジェクトでは、医療機関や歯科、薬局、在宅療養を支援する訪問看護や介護サービス、地域包括支援センターなどが参加していますが、システムを活用することで情報共有や相談といった連携をリアルタイムに行なうことができ、さながらクローズドな医療・介護特化のSNSのような存在になって高齢者の支援を後押ししています。

 

 

顔認識技術で無断外出を未然に防ぐ

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高齢化とともに増加傾向にある認知症患者。認知症の症状の一つである徘徊行動は、家や介護施設の中だけにとどまらず、1人で外出してしまうこともあります。捜索の結果保護されることも多いですが、中には事故が発生してしまうことも。対応の負担はもちろん、責任も大きいところであり、介護施設や介護にあたる方の負担が非常に大きい問題です。

 

そんな問題をITで解決につなげようとするシステムが、LYKAON(リカオン)の提供する顔認証徘徊防止システム「LYKAON」です。これは、家や介護施設の出口にカメラを設置し、そのカメラに映る人を顔認識技術で識別、特定の人が外出しようとするとスタッフに通知するといった仕組みです。

 

このシステムでは、徘徊行動を起こしてしまう患者の方を無理に拘束したり、家族や介護スタッフもつきっきりで監視する必要から解放されます。また、これまでは徘徊行動によって無断外出が発生した場合には総出で捜索する必要が生じていましたが、そうしたことも未然に防ぐことができます。そうしたことから、患者の方も周囲の方も、さまざまな肉体的・心理的負担を大幅に減らすことができるようになるのです。

 

 

センサー技術でベッドの上の要介護者を見守り

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リコーが、センサーモジュール技術を持つミネベアミツミと共同で事業開発に取り組んでいるのは、高齢者や患者の方を見守る統合型プラットフォームの構築。まず着手しているのが、ベッドの上にいる方の体の動きや呼吸状態などの生体情報を、体にふれず痛みもなく、ベッドに設置したセンサーでモニタリングするベッドセンサーシステムの開発です。

 

介護の現場では、介護を受けている方の呼吸に異常がないか、ベッドから落ちてしまっていないかといったことをチェックしたり、体重などを計測・記録する必要があります。そこで、こうしたベッドセンサーシステムがあれば、介護を受けている方がベッドにどのような姿勢でいるか、ベッドの上のどの位置にいるのか、起きているのか寝ているのか、呼吸などのバイタルサインはどういう状態かといったことを、人手を介さずに確認することができ、それだけ見守りの負担を減らすことにつながります。

 

同じセンサーでも、介護を受ける方の体に装着するようなタイプや、目に見えるところに明らかにセンサーとわかる状態で装着されているタイプでは、行動を監視されているような気持ちを与えてしまいます。目に見えず、体にもふれないかたちで確認できるベッドセンサーシステムは、そうした点にも配慮が行き届き、メリットが感じられやすい実用的なものなのです。

 

リコーとミネベアミツミでは、次のフェーズとして、人工知能を用いてベッドセンサーシステムを介護記録システムやナースコールなどと連携させることによって、見守りをさらに高次元のものへ発展させ、第3フェーズでは、ベッドセンサーシステムから得たデータなどを分析して利用する方に最適な介護・医療サービスの提供を可能にするような統合型情報サービスプラットフォームへの発展を目指しているとしています。

 

 

75歳を超えると「要介護」と認定される確率が急速に高まるといわれていますが、2025年には団塊の世代が、2050年には団塊ジュニア世代がそれぞれ75歳を超えるピークを迎えることになります。そうなれば、介護を必要とする人の数はさらに爆発的に増えていくのです。

 

介護・福祉の現場のIT活用を進めることによって、家族や介護スタッフの介護負担を軽減するだけでなく、周辺の事務業務などに時間を割くことなく介護そのものに注力できるようになるでしょう。日々進化するIT技術が、介護・福祉の分野でもイノベーションを起こすよう、引き続き注目です。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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