データ分析も働き方改革? BI(ビジネスインテリジェンス)ツールに中小企業が活用
作成日:2018/12/21
企業のデータを統合・可視化できるBIデータを取り入れる企業が増えています。BIデータの主な役割と重要な機能、国内で有効活用されている事例などを紹介します。
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは企業のデータを統合・可視化できる
経営判断やマーケティングの意思決定などのシーンに、欠かせないデータ分析。スピーディーにまとめたいところですが、Excelでのレポーティング作業に時間がかかってしまうことも多いのではないでしょうか。そこでデータ分析やレポーティングなどの業務効率化対策として、BIツールに注目が集まっています。BIは「Business Intelligence」(ビジネスインテリジェンス)の略。BIツールを一言で言うと、組織内のデータを集約・分析したりグラフなど可視化したりできる仕組みのことです。
組織内にはさまざまな業務システムがあり、それぞれのデータの保存場所やフォーマットがバラバラな状態ということが多いのではないでしょうか。そのためシステムを横断したデータ分析をしたいと思っても、相当の時間と手間がかかります。ところがBIツールではこうしたデータを統合管理し、グラフ化などのレポーティングを自動化する機能もあるため迅速な対応が可能になります。
またデータアナリストなど専門家ではない人でも、必要なレポートを出力できるという点も大きなメリット。もともとBIツールは、かつて外部のシンクタンクなど専門家へ委託していたデータ分析業務を、社内で対応できるようにするのが目的。BIツール導入により高度なデータ分析が迅速にできるようになれば、業務効率化につながるだけではなく、新たなビジネスチャンスの発見につながるはずです!
大企業ではBIツールの導入は8割
ガートナー社の調査によると、BIツールを導入している企業の割合は年々増加傾向ですが、2016年時点では37%。ただし従業員2,000人以上の大企業に絞ると、利用率は80%に達しています。中小企業では導入コストが気になるところですが、最近では無料のBIツールも登場しています。今後は大企業だけではなく、中小企業やスタートアップ企業においてもBIツールの活用が進むことが予想されます。
出典:「ガートナー、BIとデータ活用に関する調査結果を発表」(Gartner)
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BIツールが持つ代表的な機能
BIツールによって機能は異なりますが、大きく「データ統合管理機能」と「分析レポーティング機能」に分かれます。それぞれの代表的な機能を紹介しましょう。
【データ統合管理機能】
ETL機能
ETLとは、データの抽出(Extract)・変換(Transform)・書き出し(Load)の頭文字をとっています。いずれも、複数のデータベースのデータをまとめるための機能。必要なデータを抽出し、同じフォーマットに変換、ひとつのデータベースに統合するため書き出す、というのが基本的な流れです。
DWH(データウェアハウス)機能
複数のシステムから毎回データをETLによって加工していてはスピーディーな分析はできません。そこであらかじめ必要なデータをひとつの箱に蓄積しておく、というのがDWHの発想。DWHでは、さまざまなデータを時系列に蓄積しておくことでその後の分析をスムーズにします。
【分析・レポーティング機能】
OLAP分析
OLAPはOnline Analytical Processingの略で、大量のデータを素早く分析するデータベース技術。通常のデータベースでは二次元のテーブルにデータがありますが、OLAPではキューブと呼ばれる多次元のデータという点が特徴。複数の属性でも、すぐに分析ができるメリットがあります。
データマイニング
ビッグデータ活用のひとつがデータマイニング。蓄積データを分析することで、今まで見えていなかった関係性を見つけ出すことを言います。
シミュレーション
蓄積された過去のデータをもとに、自動的に将来の売上予測などのシミュレーションを行うBIツールも多くあります。
レポーティング
BIツールは、分析結果をチーム内で共有することもミッションのひとつ。そのため、分析結果を自動的にグラフ化したり資料の体裁で出力できたりするBIツールがほとんどです。
BIツールとMAツールの違い
データを集約・分析して今後のプランニングにつなげるツールと言えば、MA(マーケティングオートメーション)ツールをイメージする方も多いかもしれません。それぞれの目的を整理してみましょう。
MAツールの目的:マーケティングプロセスの自動化。見込みの高い顧客を発掘・絞り込みによって、効率的な営業活動につなげる。また自動メール配信機能などを使い、最適なタイミングで顧客にリーチする。
BIツールの目的:組織内のさまざまなデータを集約、レポーティングなどを自動化。経営やマーケティングの判断材料となるデータや資料を作成するために使われる。
どちらも業務効率化につながるという点では共通していますが、役割は異なります。BIツールはマーケティングや営業のデータも扱いますが、それだけではなく組織に関わる幅広いデータを扱う点が特徴です。
また、BIツールはMAツールのように具体的なプロモーション機能までは持っていません。それぞれの特性がありますので、BIツールとMAを組み合わせている企業も多くあります。
実際に日本で使われているBIツールとは?
現在では国内でも多くのベンダーがBIツールを提供しています。「BIツール徹底比較」という記事も増えていますが、他社が実際に導入しているBIツールをまずはチェックしましょう。ノークリサーチ社が企業へ2017年に実施したアンケート調査によると、中小企業が導入しているBIツールの上位は以下のような結果となりました。
・SAPジャパン SAP Business Objects/Edge/BI OnDemand:(15.8%)
・日本マイクロソフト Microsoft Office製品を利用:(15.8%)
・日本IBM IBM Cognos /Express(14.5%)
・日本オラクル Oracle Business Intelligence Enterprise Edition/SE One (9.2%)
・日本マイクロソフト Microsoft SQL Server(RDBのみの利用は除く)(9.2%)
出典:プレスリリース「2017年中堅・中小企業における「BI・帳票」の導入社数シェアとユーザ評価」(ノークリサーチ)
やはり業務用DBやシステムを手掛けるSAPやIBM、オラクルのBIツールが上位に来ています。その一方で存在感があるのがマイクロソフト。専用のBIツールではなく、従来からあるOfficeやSQL ServerをBIツールとして利用するところもそれなりに多いことがわかります。これは費用面などBIツール導入のハードルが高いことが理由と考えられます。なお最近では、無料で利用できるBIツールも増えてきました。
無料BIツールの中で今注目を集めているのが、マイクロソフトの「Microsoft Power BI」。このBIツールは、2015年から無償版の提供がスタートしました。Microsoft Power BIツールの大きな特徴が、Excelと連携しやすい点やOfficeソフトと操作感が近い点。そのため一般のビジネスパーソンでも使いやすいという点に定評があります。実際にExcelとPowerBIを利用している企業として良品計画が紹介されたケースがありましたが、日本のサラリーマンは「Excelなら使ってみたくなる」とExcelとの連携できるメリットを強調していました。
またジャストシステム社もセルフBI機能を強化したBIツール「Actionista!」を2017年にリリースするなど、国内企業が参入するケースが増えています。
大量データに対して複雑な分析ができ、しかも結果を素早く可視化できるのがBIツールの強み。BIツールを導入することで、データ分析の専門スタッフ以外でも、自分に必要な分析ができるというメリットもあります。可視化したデータをもとにすれば意思決定のスピードも向上するはずです。また、経営管理やマーケティングなど、幅広い部署で活用できます。もちろんツールはあくまでアウトプットするものなので、分析前に仮説を立てる(アブダクション・仮説的推論とも言います)プロセスも重要です。
大企業向けのBIツールも多くありますが、無料BIツールも出てきています。まずは使ってみてBIツールの活用方法を探るということも可能です!
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)
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