マーケティングと経営の違いを知れば成功戦略が見えてくる
最終更新日:2023/10/12
作成日:2022/05/13
マーケティングや戦略をテーマにした今回のコラム。前編の今回は、フリーランスコンサルタントがクライアント企業の戦略プロジェクトに関わる際に、あらためて整理しておくべきマーケティングと経営の違いについてまとめます。
目次
■マーケティングにおける戦略の定義と重要性
(1)セグメンテーションとターゲティング
(2)マーケティングミックス(4P)
■経営戦略の定義と重要性
(1)全社戦略
(2)事業戦略
(3)機能戦略
■定義から見るマーケティングと経営との違い
(1)マーケティングとは
(2)経営とは
■マーケティングと経営の違いの整理がコンサルティングの第一歩
マーケティングにおける戦略の定義と重要性
コンサルティングを行う上で、いかなる業種においても経営戦略とマーケティング戦略はプロジェクトの中心に据えられるものです。その理由はもちろん、クライアント企業の業績を伸ばすためには両者が欠かせない重要な要素となるためです。
ただプロジェクトに関わるすべての人員が、この2つをきちんと理論的に棲み分けて考えられているとは限りません。
フリーランスコンサルタントとしては、その説明からスタートしなければならないシチュエーションも多々ありますが、第三者が真に理解できるように説明するのはなかなか大変な作業です。
それでも全社戦略や事業戦略、機能戦略を立案する上で、定義を明確にしないままプロジェクトを走らせてしまうことには高いリスクを伴います。
まず、マーケティングにおける「戦略の考え方」について掘り下げて考えてみましょう。
マーケティングでは、ターゲットとする顧客のリサーチが最重要項目となります。マーケティングの定義が、顧客の潜在的・顕在的ニーズを探り出し、顧客が満足する製品やサービスを提供することだからです。
フリーランスコンサルタントとしては、クライアント企業の製品やサービスを求めていると想定される顧客を見つけることから、マーケティング戦略の立案を始める必要があります。
そしてターゲットをある程度絞り込んだ段階で、ターゲットとなる顧客層を満足させるためのあらゆる活動を設定するのがセオリーです。この「顧客を満足させる行動」というのが経営戦略と混同されやすい部分なのですが、マーケティング戦略においてはアプローチが異なりますのでその点を押さえておきましょう。
メインとなる活動に「セグメンテーションとターゲティング」「マーケティングミックス(4P)」がありますので、それぞれを解説します。
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(1)セグメンテーションとターゲティング
セグメンテーションはご存知の通り細分化のことですが、マーケティングにおいては市場の切り分けを意味します。
わかりやすい例で言えば、商品やサービスを性別や年齢などで分類する行動が該当します。ターゲティングとは、このセグメンテーションで切り分けた市場のうち、どこを狙うか市場を決定する行動を指します。
フリーランスコンサルタントとしては、この行動でクライアント企業の商品やサービスが狙うべき市場を明確にし、有効な展開を図ることがスタートとなるでしょう。
(2)マーケティングミックス(4P)
マーケティングミックスは、ターゲットとする顧客に対するアプローチの仕方を決定する行動です。
要素としては当然ながら製品やサービス、どのように顧客に届けるかの流通、プロモーションなど広告や販促活動、価格が挙げられます。この行動はProduct、Place、Promotion、Priceという英語の頭文字を取って4Pと呼ばれるマーケティング手法としても有名です。
製品やサービスは機能や性能だけでなく、デザインやクオリティなどの特徴はもちろん、保障やアフターサービスなどの要素もすべて含めて戦略の対象と考えます。流通は非常に重要で、いかに良い製品やサービスであっても、顧客の手元に届けられなければ成功はしません。
近年のインターネット通販で市場が劇的に変わったように、製造者からどのようなルートをたどって顧客へ到達するかは重要な戦略です。卸売業者や小売店を利用するケースなども含めて、あらゆる流通を考える必要があります。
プロモーションはご存知の通り、顧客にいかに製品やサービスの情報を伝えるかを意味します。
ひと昔前はTVCMや新聞広告、雑誌広告が主でしたが、こちらもインターネットの普及で大きく広告手法が変わったことは言うまでもないでしょう。またプロモーションはメディアを利用した広告や販促活動だけでなく、セールスマンが直接営業する販促活動も含みます。
店頭でデモンストレーションを行う販売方法もプロモーション活動ですし、営業力強化を図る手法すべてが該当します。
最後に価格ですが、これは製品やサービスの価値を明確にする重要な行動です。決め方にはコスト調査や競合他社との価格バランスなどがありますが、安易な値下げで成功するケースはほとんどなく、ギリギリの調整が必要となる難しい戦略です。
以上がセグメンテーションとターゲティング、マーケティングミックスですが、これらが主にマーケティング戦略の定義となります。
経営戦略の定義と重要性
それでは次に、経営の視点から考えた戦略はどのような行動を指し、組み立てていくべきかに移りましょう。
経営戦略は会社が長期的に利益を獲得するためヒト・モノ・カネ・情報を配分する活動です。これらヒト・モノ・カネ・情報は「経営資源」とも呼ばれますが、以前はヒト・モノ・カネという3つの要素だけでしたが、新たに「情報」が加わったのです。もちろん昔も情報は重要な資源だったのですが、インターネットの普及により顧客間で情報の伝達スピードが飛躍的に上がり、比例して市場の進化スピードも劇的に上がったことが情報の重要性を更に増しました。
企業にとって命題である利益追求のため、これらの経営資源をいかに有効に配分していくかを決定するのが「経営戦略」です。考えるべきは全社戦略、事業戦略、機能戦略であり、前述のマーケティングは機能戦略の一環となります。
それではそれぞれを解説しましょう。
(1)全社戦略
会社が取り組むべき事業領域の決定が「全社戦略」です。
規模が大きくなればなるほど事業を多角的に経営するケースが増えますが、それらの各事業をどのように展開していくかを決定する重要な戦略となります。すでに事業展開している状況でビジョンの再設定を行う場合もありますし、これから新規事業を立ち上げるにあたりビジョンを明確化させる場合もあるでしょう。
フリーランスコンサルタントとしては、経営者の描いているビジョンを正確に理解し、それを全社的なビジョンに昇華させる活動も主になります。
つまり、具体的な事業展開のビジョン確立だけでなく、会社全体のイメージを会社内外に発信する役割もあります。まず全社戦略を固めて基軸としなければ、他の戦略立案は成り立たないと考えて良いでしょう。
(2)事業戦略
事業戦略は、より具体的な行動になります。全社戦略に基づき、各事業部がどのように市場で競合していくかを決定する行動です。まず競合他社を調査分析し、どのようにして対抗すべきか戦略を練ります。例えば価格対抗は挙げられやすい手段ですが、安易な価格対抗ではなく、何らかの特徴や強みで差別化を図るといった対抗策を練ることが主流です。
この場合、会社規模にもよりますが、フリーランスコンサルタントとしては事業部をまたがって活用できる経営資源を探すのも重要な役割。大きな組織になればなるほど縦割りになりがちですが、全社的に横断して資源活用を検討できるのが第三者の強みでしょう。フリーランスコンサルタントが大企業の業務改革プロジェクトに引っ張りだこなのも、このように全社を俯瞰できる立場にあるからです。
(3)機能戦略
機能戦略は事業部内の各部門の活動を具体的に決定していく行動です。
どのような部門があるかは会社によってケースバイケースですが、研究開発部門や生産部門、販売部門などのほか、人事や財務などバックオフィス部門を含めて具体的な活動を決定していきます。
全社戦略や事業戦略を踏まえ、どのようにマーケティング活動を行うかを決定することになりますので、マーケティングも機能戦略の一環と言えます。顧客とダイレクトに関係する部門となりますので、販売部門の中にマーケティング部門がある場合もありますし、どのような製品やサービスを創造すべきかリサーチするために研究開発部門内にある場合もあります。
プロモーションなど宣伝広告や販促であれば営業力強化部門とも言えますが、機能戦略では企画開発力を支える後方支援部門とも言えます。いずれにしても全社が掲げるビジョンに近づくために、自社と市場とをつなげる活動がメインと言えるでしょう。
定義から見るマーケティングと経営との違い
ここでは、少し視点を変えてマーケティングと経営、それぞれを定義の面からまとめてみましょう。
(1)マーケティングとは
日本マーケティング協会が1990年に定めた定義によると、「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」とされています。
アメリカのマーケティング協会が2007年に定めた定義によると、「顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセス」とされています。
これらの定義するところはいずれも社会市場創造の行動であり、そこには顧客の理解や利益が伴うということです。
マーケティングは企業や組織などからの一方的な押し付けではなく、顧客や社会の潜在的もしくは顕在的欲求を理解した上で実行されるべき活動と言えるでしょう。
つまりそのプロセスにおいては顧客が求めるものをリサーチする行動が必須ですし、それをもとに商品やサービスを企画開発、製造し、提供する流通までを含めた過程全般がマーケティングと言えます。
また、それに不随する販売促進やプロモーションも含めて購買プロセスとなりますので、マーケティングの対象領域に宣伝広告活動も含まれると理解できます。
(2)経営とは
「経営」という言葉はとても古くからあるため、その語源にも諸説あります。現在最も代表的な説は、紀元前に書かれた「詩経」にて初めて登場したとする説です。
寺院建築などの最初の区割り作業を指す言葉だったようですが、そこから大規模プロジェクトの立案から運営維持まで全体を含めて経営と呼ぶようになったとされています。
別の説では仏教経典が原点であったり法要の運営を指す言葉だったりもしますが、現在では事業目的を達成するために計画立案し、継続的に事業を管理遂行することを指すとしています。
簡単に言えば、経営とは会社を継続成長させることであり、そのために必要な社会的存在価値を高め続ける活動と言えるでしょう。
ここまで読み進めればおわかりのように、マーケティングでは顧客の存在がメインとして現れるのに対し、経営ではあくまでも自組織がメインに据えられています。経営戦略を立てる際には、全社戦略、事業戦略、機能戦略を決定し、長期的に利益を得るためのヒト・モノ・カネ・情報の配分を行います。
当然、社会的存在価値を生むためには顧客や市場など社会へ目を向けなければなりません。広い目で見れば両者が似通ったイメージになるのも当然でしょう。また結論から言えば、マーケティングは経営戦略の中の機能戦略の一つと言えます。
つまりマーケティングは経営戦略の一部ということになりますが、あえてベクトルを見出すなら、マーケティングの初動では矢印が外向きに、経営では内向きに向くことになります。
いずれにしても会社を持続成長させるためには必須の柱であり、真に理解した上でそれぞれの戦略を立案遂行することが重要だといえます。
マーケティングと販売促進活動との違い
ここまでマーケティングと経営の違いについて述べて来ましたが、より混同しやすく、明確に棲み分ける必要がある項目がほかにもあります。
それが「マーケティング」と「販促活動」です。営業力強化という点で共通テーマがある分、非常に多くの経営者が混同しがちですが、営業力強化の方法が両者で大きく異なる点を明確にしなければなりません。
それがマーケティングはあくまでも顧客視点、販促はあくまでも商品視点だという点です。
頭では理解しているつもりでもなかなか真に理解しにくい点でもあるため、フリーランスコンサルタントとしては苦労する点ではないでしょうか。
マーケティングが「顧客が自発的に商品やサービスを入手したくなる仕組みづくり」だとすれば、販促は「顧客にいかにして該当商品を売り込むかの手段構築」となります。マーケティングの考え方において、クライアント企業の商品やサービスを選んで買うのは顧客であり、主眼はあくまで顧客側です。
その上で顧客は誰か、なぜ買うのか、もしくはなぜ買わないのか、どうすれば他社製品より魅力を感じて買ってくれるのかを熟考し、戦略を立てて実践するのがマーケティングです。
これに対し販促は、営業力強化という共通目的はありながらも根本がまったく異なります。そこに顧客の求めは関係なく、商品をいかに売り込むか、商品だけに主眼を置いた行動が実施されます。もちろん業績を上げるためには製品やサービスを積極的に売り込む営業力強化手段は必要ですから、販促が重要な行動であることに違いはありません。
ただそこに至る前にしっかりとしたマーケティング戦略があり、それに基づいて販促活動が行われるか否かで、成功・不成功が大きく分かれることは認識しなければならないでしょう。
マーケティングと経営の違いの整理がコンサルティングの第一歩
前編では、マーケティングと経営の違いについて解説しました。
マーケティングはターゲットとなる顧客を探り、満足させる製品やサービスを提供する活動、経営は会社組織が継続的に利益を獲得するために、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源を配分する活動です。
マーケティングは経営戦略の中の「機能戦略」に含まれ、あくまでも顧客視点で展開されるべきものであることも重要なポイントです。
企業において経営活動はすべてが連動するため、経営戦略やマーケティング戦略、販促活動などが混同される誤解が生まれやすいことも事実です。フリーランスコンサルタントがクライアント企業の戦略プロジェクトに関わる場合には、まず経営者と共に両者の棲み分けを明確にする必要があるでしょう。
後編では、「市場価値を生み出すために必要な戦略立案」などについてお届けします。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)
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