【SAPコンサルタントとは】未経験OK?激務?つまらない?資格が必要?仕事内容・年収・今後の将来性を解説!
最新更新日:2024/08/21
作成日:2022/04/08
現在、SAPコンサルタントの市場価値は非常に高いといわれています。今後もSAPを導入する企業は増え続けるとみられていて、力のあるSAPコンサルタントは転職やフリーランス案件の獲得にも有利な状況です。SAP導入を考える企業人やSAPコンサルタントを目指す人に改めて整理してほしい「SAP」と「SAPコンサルタント」の特徴や魅力について、Q&Aも交え詳しくご紹介していきます。
目次
■SAPとは
(1)SAPの特徴
(2)圧倒的シェアと実績を誇るSAP
(3)SAPの主要製品
■SAPが人気の理由とは
(1)あらゆる基幹業務をリアルタイムに一括処理
(2)プラットフォームが自由
(3)機械学習でさらなる業務の効率化
(4)モジュール管理により業務の効率化が可能
(5)グローバル対応
■SAPモジュールの機能と特徴
(1)会計モジュール
(2)ロジスティクス・モジュール
(3)人事モジュール
(4)その他のモジュール
■SAPコンサルタントとは
(1)SAPコンサルタントの役割
(2)SAPコンサルタントとSEの違い
■SAPコンサルタントの魅力
(1)専用コンサルタントとして能力を発揮
(2)大手企業もクライアントである
(3)上流のコンサルタントになれる
(4)グローバルな活躍の場
(5)多様な業界経験
(6)キャリアの安定性
(7)SAPコンサルタントの年収
■SAPコンサルタントに関するQ&A
(1)SAPコンサルタントとは?何の略?
(2)SAPコンサルタントは何をする?
(3)SAPコンサルタントは不足している?
(4)SAPコンサルタントはつまらない?
(5)SAPコンサルタントは激務?
(6)SAPコンサルに資格は必要?
(7)SAPコンサルに向いている人は?
(8)SAPコンサルタントの今後の将来性は?
(9)SAPコンサルタントの主な種類は?
(10)SAPコンサルタントになるためにはどうすればいい?
SAPとは
「SAP」はドイツを拠点とした世界で最大クラスのソフトウェアメーカー「Systemanalyse und Programmentwicklung」の略称です。そのSAP社が開発した代表的なERPパッケージの商品名としても知られています。
ERPパッケージ「SAP」はどのような特徴があり、どのような点が魅力なのでしょうか。あらためて紹介します。
(1)SAPの特徴
SAPとは、経営資源を一元的に管理できるERPパッケージの1つ。 ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業のヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を一元的に管理・活用することのできるITシステムのことです。
企業の業務改革・ビジネス環境改善に大きな効果があることから、日本企業をはじめとして世界中の多くの企業が導入していることで知られています。
(2)圧倒的シェアと実績を誇るSAP
ERPパッケージは、マイクロソフトやオラクルなど世界の名だたるソフトウェアメーカーでも開発されていますが、その中でもSAPは、2019年度の調査では世界で26000社強が導入し、シェア率57%と圧倒的な人気とシェアを誇る業務系パッケージです。
もちろん日本でも49%の企業が導入する、トップクラスのシェアのERPパッケージであり、1992年に日本法人が設立されて以来、多くの日本企業がITシステムとしてSAPを導入しています。
(3)SAPの主要製品
SAPには多様な製品ラインナップがありますが、主要な製品としては以下のようなものが挙げられます。
ERPソリューション
SAP S/4HANA
SAPの最新世代のERPシステムです。インメモリデータベース技術を活用し、超高速なデータ処理を実現しています。大企業向けの包括的なERPソリューションとして位置付けられています。
SAP Business ByDesign
中堅企業向けのクラウドベースERPソリューションです。
SAP Business One
中小企業向けのERPシステムで、財務、販売、購買、在庫など主要業務を網羅的にカバーしています。
特定業務向けソリューション
SAP Concur
出張・経費管理に特化したクラウドシステムです。
SAP SuccessFactors
人材管理から給与計算まで、人事に関わる業務を包括的にカバーする人事ソリューションです。
SAP Commerce Cloud
eコマース向けのソリューションで、オムニチャネルの買い物環境を提供します。
分析・BI関連
SAP BusinessObjects BI
データのレポーティング、ビジュアル化、共有機能を提供するBIソリューションです。
プラットフォーム
SAP Business Technology Platform (BTP)
PaaS型のクラウドサービスで、SAPのオンプレミス製品やクラウド製品の拡張、IoTなどの新技術の活用をサポートします。
SAPが人気の理由とは
SAP社の現在の主力商品は「SAP ERP」というパッケージソフト(最新版はSAP S/4HANA)ですが、SAPのERPパッケージの人気に火がついたのは、もう1つ前の世代の「SAP R/3」という製品の登場によるものです。SAPの魅力に迫ってみましょう。
(1)あらゆる基幹業務をリアルタイムに一括処理
SAPに限らず、これより前のシステムは「会計システムは会計のみ」「在庫システムは在庫管理のみ」と縦割り型の管理を行なっていました。そのせいで取引のデータ内容が、複数のシステムに残されていました。このような場合、取引の重複を解消するため、人の手によって修正が必要です。
しかし、「SAP R/3」ではERPパッケージという概念を導入することで、あらゆる業務を横断する処理が可能になりました。ERPパッケージの導入により業務プロセスの簡略化や効率化などの業務改革やビジネス環境改善を実現することができるようになり、利用する企業が一気に増えることにつながったのです。
(2)プラットフォームが自由
ERPを活用した業務改革は、アメリカでは1990年代から積極的に採用されるようになりました。しかし、当初は企業が独自のITシステムを開発し、保守や管理も行っていたため、非常にリソースやコストがかかるのが課題でした。また、システムはハードウェアやOSなどに依存していたため、使用できる環境が限られていたのも問題だったと考えられています。
その後、ソフトウェアメーカーからERPパッケージが発売されました。SAP社をはじめ、大手ソフトウェア会社の開発するERPパッケージはオープンソースに対応しているため、ハードウェアやOSを気にすることなく、それぞれの企業環境に応じて自由に導入できます。これにより企業は自社でのシステム開発や人材育成にかかるコストを削減できるようになったため、EPRパッケージが急速に普及し始めたという経緯があります。
なお、現在SAPをはじめとするERPパッケージの多くはクラウド化の方向へと進んでいます。クラウドERPの登場によりパッケージを購入する必要がなくなり、インターネットを利用できればプラットフォームに関係なく誰でもアプリケーションを利用できるようになります。もちろん、わざわざバージョンアップやセキュリティ対策をする手間も不要です。
(3)機械学習によるさらなる業務の効率化
SAPでは業務をさらに効率化するために、AIを活用した機械学習を積極的に取り入れています。SAPの持つ膨大なビッグデータの中から、高度なアルゴリズムを活用して学習を進めていくことで知識が増えていきます。製造現場での機械学習が進めば品質管理のアルゴリズムに応用することが可能ですし、需要予測や予知保全にも使用が可能です。
また、経理財務部門で機械学習が進めばローンの承認やリスク評価、株取引といったことにアルゴリズムを活用することができます。さらに、医療機関で機械学習が進めば特定のパターンを持つ患者のがんの早期発見など、機械学習の可能性に期待が寄せられています。
(4)モジュール管理により業務の効率化が可能に
SAPは事業分野を「SAPモジュール」と呼ばれる単位で分割し、このSAPモジュールを分離させたり連携させたりすることで、業務効率化やビジネス環境改善を実現します。SAPモジュールについては、次の項で詳しく説明します。
(5)グローバル対応
SAPは多言語・多通貨に対応しており、各国の商慣習や法令にも対応しています。グローバルに事業を展開する企業にとって、この点は大きな魅力と言えるでしょう。
SAPのグローバル対応機能は、単なる言語や通貨の変換にとどまりません。各国固有の会計基準、税制、労働法など、複雑な法規制にも柔軟に適応可能なシステム設計がなされています。例えば、欧州のGDPR(一般データ保護規則)や米国のSOX法(サーベンス・オクスリー法)など、国際的なコンプライアンス要件にも対応しています。
さらに、SAPは世界各地にサポート拠点を設けており、導入後のサポートも現地語で受けられる体制を整えています。グローバル展開を行う企業は、海外子会社や支社においても本社と同じレベルのITサポートを受けられる点を高く評価しています。
グローバル市場での競争が激化する中、SAPのこのようなグローバル対応機能は、企業の国際競争力強化に不可欠なツールとなっています。
SAPモジュールの機能と特徴
SAPのモジュールの中でも主要なモジュールの機能と特徴をまとめました。
(1)会計モジュール
会計モジュールを構成している領域は「財務会計(FI)」と「管理会計(CO)」の2つです。
FIは外部会計や制度会計を担当しており、他のモジュールで発生した財務データを管理・集約して表計算ソフトへのデータ入力やアップロード作業を自動化します。
COは内部会計を担当しており、企業全体の調整や予算管理を最適化します。
(2)ロジスティクス・モジュール
ロジスティクス・モジュールを構成するのが「販売管理(SD)」と「在庫管理(MM)」です。
SDは販売管理の領域を担当し、販売データの入力を実施しなくても各部門へデータを自動的に引き継ぐので大幅な業務効率化を実現できます。
MMは在庫管理を担当するモジュールで品目マスタ・商品マスタ部品表の登録やメインテナンスを司ります。MMを活用することで、手でデータ入力を行なう必要がなくなるので誤入力を防ぐことができ、棚卸業務が効率化されます。
(3)人事モジュール
人事モジュールは「人事管理(HR)」のみを担当しており、一人ひとりの従業員について採用から退職するまでの部署移動や勤務時間といったすべての管理が可能です。
人事管理データは一般的にEXCELなどの表計算ソフトにより作成されますが、HRを活用すればデータを自動的にロードしてくれるので効率的に管理することができます。
(4)その他のモジュール
「生産管理(PP)」「プロジェクト管理(PS)」「プラント保全(PM)」も主要なSAPモジュールです。
PPは詳細計画とセットで管理されるもので、商品を生産する際に経営資源の最適化を行なうモジュールです。たとえば、部品は内製と外注のどちらが良いのか、いつオーダーしたら良いのか、といった計画を実行します。
PSはプロジェクトを効率よく進めるため、当初の予定通りにプロジェクトを実行できるよう管理するモジュールです。作業項目からプロジェクトを定義することも可能ですので、他のモジュールから統合されたデータをリアルタイムで集計し実績を洗い出せます。
PMは機能場所の登録や変更、整備マスタなどを実行するモジュールです。設備の保全業務を効率化することで計画業務の迅速化に貢献します。
SAPコンサルタントとは
ITシステムを活用して企業の経営課題を解決する専門家のことをITコンサルタントと呼びますが、その中でもSAPのERPパッケージを専門とするITコンサルタントを総称して、SAPコンサルタントと呼びます。つまり、SAPコンサルタントとは、SAPに関して専門的な知識を有するITアドバイザーのことです。
効率的な経営のためにSAPを導入する大手企業も多く、SAPコンサルタントの需要も増しています。
(1)SAPコンサルタントの役割
SAPコンサルタントの役割は大きく2つあり、1つがSAPシステムの導入コンサル。もう1つは、各企業がシステムをより便利に、より効率的に使用するためのカスタマイズです。
まず、導入コンサルについてですが、大きな企業であればSAPを導入する前にも他社のERPパッケージを利用しているケースが考えられますので、現在使用しているシステムやデータをSAPへとスムーズに移行させるためのサポートを行います。業務系パッケージを初めて導入する企業には、導入前に業務分析を実施したり、業務改革を提案することもあります。
SAPは導入してすぐに使えるようにテンプレートが充実していますが、業務内容に応じて必要なカスタマイズを施すのもコンサルタントの重要な役割です。
もちろんシステム稼働後のアフターフォローも大切な仕事であり、ソフトウェアがバージョンアップした際にサポートしたり、使い方がわからないときなどはフォローアップも行います。
(2)SAPコンサルタントとSEの違い
「SAPコンサルタントの仕事内容はSEと変わらない」と考えている方も多いようです。確かに、SEからSAPコンサルタントに転職する方は多いのも事実であり、仕事内容は似ているかもしれません。
しかしながら、SAPコンサルタントはより経営に近い位置で要件定義ができる点で、ビジネスコンサルタントのような役割も兼ねています。SAPコンサルタントの仕事内容を一言で表現するならば、SAP運用を通じてクライアントの業務効率化やビジネス環境の改善に貢献すること。要件定義により経営課題を解決するのがミッションなのです。
具体的には、クライアントの基幹システムを設計導入したり、導入後も安心してITシステムを使い続けられるようバージョンアップしたりなどの保守業務も重要な使命です。システムへの具体的な提案を行う点で、プログラムの構成と納品がメイン業務のSEとは異なります。
SAPコンサルタントの魅力
いまやIT系コンサルタントの中でも花形といえるSAPコンサルタントですが、需要の高さ以外にどのような魅力があるのでしょうか?SAPコンサルタントの魅力についてまとめました。
(1)専用コンサルタントとして能力を発揮
一般的にコンサルタントとして働くにはさまざまなパッケージソフトに精通していることが求められますが、SAPの場合はシェア率が非常に高いため、専門コンサルタントとして十分に成り立つのが魅力です。
1つのシステムに集中することで、より高度で専門的なスキルを身に付けることもでき、コンサルタントとしてキャリアアップを目指すには最適です。
(2)大手企業がクライアントである
SAP社のERPを導入している企業のほとんどが世界的な大手企業です。しかも、システム導入は1つの拠点だけでなく全社・全拠点に導入するのが一般的なので、仕事で海外にいくことも決して珍しくありません。
大手企業のクライアントが求めるもの、抱えている課題をヒアリングして最高のソリューションを提供します。世界の名だたる大企業の経営戦略に深く張り込みながら、クライアントの経営課題を解決していく仕事は、非常にやりがいがある仕事だといえるでしょう。
(3)上流のコンサルタントを目指せる
SAPコンサルタントは、SEに比べて上流工程から関わるケースが多いことは先述した通りです。単にソフトウェアを導入するだけではなく、多くの業務要件をシステムに乗せることで、クライアントに快適なシステムを提供できます。
企業が競争力をつけ、経営資源を管理していくサポートができることは、コンサルタントにとっても大きな成果となるでしょう。ゆくゆくは上流コンサルタントとしてのキャリアパスにつながります。
(4)グローバルな活躍の場
SAPは多くの大企業で導入されているため、グローバルな舞台で活躍する機会が豊富です。海外拠点への展開プロジェクトに携わったり、オフショア開発チームとコミュニケーションを取りながら仕事を進めたりする機会も多くあります。
(5)多様な業界経験
SAPコンサルタントの大きな魅力の一つは、様々な業界のクライアントと仕事をする機会が豊富にあることです。SAPは製造業、小売業、金融業、公共セクターなど、幅広い業界で利用されているため、SAPコンサルタントは多岐にわたる業界の業務プロセスや課題に触れることができます。
この多様性は、コンサルタントとしての視野を広げ、問題解決能力を高める絶好の機会となります。異なる業界のベストプラクティスを学び、それを他の業界に応用することで、より革新的なソリューションを提案することができます。また、様々な業界の知識を蓄積することで、将来のキャリアオプションも広がります。
例えば、製造業のSAPプロジェクトで培った在庫管理のノウハウを小売業に応用したり、金融業での厳格な規制対応の経験を他の業界のコンプライアンス強化に活かしたりすることが可能です。このような 業界横断的な知見は、SAPコンサルタントの価値を高める重要な要素となります。
(6)キャリアの安定性
SAPシステムは世界中の大企業で広く採用されており、その需要は今後も継続して高まると予想されています。この状況は、SAPコンサルタントにとって長期的な職業安定性をもたらします。
技術の進化や企業のニーズの変化に合わせてスキルアップを続けることで、長期的に安定したキャリアを築くことができるでしょう。また、需要の高さから、フリーランスとして独立するオプションも開かれており、キャリアの選択肢が豊富なのも魅力の一つです。
(7)SAPコンサルタントの年収
SAPコンサルタントを目指す方にとって気になるのは、やはりどのくらいの収入があるかという点でしょう。
年収は担当する領域や経験年数、所属する会社などによってかなり幅がありますが一般的なIT職やコンサルに比べて高額で平均600万円ほど、プロジェクトリーダーなどマネージャークラスであれば1,000万円を超える年収も可能です。
ERPパッケージを提供するSAPの日本法人「SAPジャパン」のコンサルタントなら、平均年収で1,065万円から1,259万円とさらに高額な年収です。
フリーコンサルタントならば能力次第でさらに高額な年収も期待できるかもしれません。
SAPコンサルタントに関するQ&A
SAPコンサルタントに関するQ&Aを整理します。
(1)SAPコンサルタントとは?何の略?
まず、SAPとは、ドイツに本社を置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社の企業名です。ヨーロッパのみならず世界中でトップシェアを誇ります。
SAP社が開発・販売する代表的なERPパッケージソフトの商品名が企業名を冠した「SAP」。このSAP専門のITコンサルタントを総称して、SAPコンサルタントと呼びます。
(2)SAPコンサルタントは何をする?
SAPコンサルタントは、主にSAPの機能を企業によって最適化し、経営戦略・事業戦略を成功に導きます。SAPには、一般的な業務処理や管理に必要な機能がパッケージ化されています。そのまま使うのであれば、導入が簡単でコストが抑えられるのですが、企業の特徴や戦略に合わせて、実用的にカスタマイズするのが主流です。
SAPコンサルタントは、クライアントの要望に合わせ、SAPにどのような機能が必要かを見極め、開発に向けて要点を洗い出す業務を請け負います。
また、導入後のアフターフォローもSAPコンサルタントの業務の一つ。バージョンアップやさらなる追加機能のシステム開発についても知見が必要です。それに伴う人材やコストの確保、進捗管理などがSAPコンサルタントに求められる業務です。
(3)SAPコンサルタントは不足している?
「SAPコンサルタントは慢性的に不足している」といえるでしょう。SAP案件が急激に増加する一方で、求められる専門性が高く、SAP開発で習得したスキルはSAP以外の領域で応用が効きにくいことが原因だといわれています。また、こうした理由からSAPコンサルタントを目指す人が少なく、現在活躍するSAPコンサルタントに案件が集中してしまう事実もあり、別のキャリアに乗りかえる人も少なくありません。
また、SAPジャパンは「今後、数年間のうちに数千人規模でSAPコンサルタント人材不足が顕在化する」と予想しています。特に近年は「2025年問題」といわれるERPのサポート終了への対応、「2027年問題」と呼ばれる「SAP S/4 HANA」への移行に併せてSAPコンサルタントのニーズが高まっています。
(4)SAPコンサルタントはつまらない?
SAPコンサルタントは、SAPに特化した能力を望まれるため、本人が成長や変化を感じにくい側面もあるかもしれません。しかし、現在SAPコンサルタントの需要が非常に高いため、キャリアパスを描きやすかったり、就業先で大事に扱われたりと働きやすい環境で就業できる可能性も高いです。
業務自体がつまらないかどうかは、本人の感じ方によりますが、もともとSAPコンサルタントはSAPに興味がある人しか習得できないスキルが必要です。さらに、活躍できるようにSAP社の動きにあわせて、また経営へのセンスを磨くために学び続ける姿勢も求められるでしょう。「自分の腕を試せる」「新たな知見を学び続けられる」ととらえられると「つまらない」と感じることは減るかもしれません。
(5)SAPコンサルタントは激務?
先述した通り、SAPコンサルタントは引く手あまたな状況です。「2025年問題」「2027年問題」からの影響もありますが、現状、SAPコンサルタントとして経験豊富な人材が少ないことも市場価値が高い一因といえるでしょう。
そのため、SAPコンサルタントの一人ひとりに案件が集まり、キャパオーバーや激務という話も時折耳にします。しかし、同時にSAPコンサルタントのニーズが高いことから、就業条件を取り決める際にSAPコンサルタント本人の希望を通しやすいメリットもあるようです。
繁忙期などの一時であっても、激務に身を置くのが難しい場合は、こうした機会にしっかりとすり合わせをしておくとよいでしょう。
(6)SAPコンサルに資格は必要?
SAP社では、SAPに関わるコンサルタントのために「SAP認定コンサルタント」という資格試験を設けています。内容はERPやSAPにまつわる領域のもので、日本語で受けられる試験だけで50種類以上にも及びます。このうちの1つでも資格を取得している人はSAPコンサルタントを名乗れます。
現在、ERP・SAPにまつわる業務についている人はもちろん、未経験からSAPコンサルタントへのキャリアシフトはかなり困難とみられていますが、興味がある人はぜひ資格取得を考えてみましょう。
(7)SAPコンサルに向いている人は?
SAPコンサルタントには、SAPに関する知見のほか、ERPパッケージソフト各種の設計・導入経験がある人が向いているでしょう。
また、SAPは経営戦略や課題解決のために導入を考える企業がほとんどです。そのため、
- 経理や会計等の業務経験
- 企業のトップと信頼関係を築けるコミュニケーション能力
- 課題を見つけ出し解決に導くリスクマネジメント能力
などに長けた人がSAPコンサルタントに向いている人物像として浮かび上がってきます。
SAPコンサルタントの高い需要を顧みると、ITシステム系のコンサルタントとして独立を考える人にもおすすめの職種といえます。
(8)SAPコンサルタントの今後の将来性は?
現在「2025年問題」「2027年問題」などを前に、SAPコンサルタントのニーズが非常に高まっていますが、それ以降の将来性について不安を感じる人もいるでしょう。
しかし、SAP社は今後も中小企業・中堅企業に向けたパッケージ開発や営業に力を入れると考えられており、2027年以降もSAPコンサルタントのニーズが下がることはないとみられています。
また、SAPコンサルタントはシステム設計や導入だけでなく、就業先企業の経営戦略や業務改善などに尽力します。こうした経験からSAP領域だけでなく、経営コンサルタントや業務改善コンサルタントといったキャリアパスを目指すことも可能です。
(9)SAPコンサルタントの主な種類は?
SAPコンサルタントには、専門分野や役割によって様々な種類があります。主な種類としては以下が挙げられます。
機能コンサルタント(Functional Consultant)
特定のSAPモジュール(財務会計、管理会計、販売管理、生産管理など)に特化し、ビジネスプロセスの分析や設計を行います。
テクニカルコンサルタント(Technical Consultant)
ABAPプログラミングやシステム管理など、技術的な側面を担当します。
ソリューションアーキテクト(Solution Architect)
SAPシステム全体の設計や最適化を行い、ビジネス要件と技術的実装のバランスを取ります。
プロジェクトマネージャー(Project Manager)
SAP導入プロジェクト全体の管理や調整を行います。
ビジネスインテリジェンス(BI)コンサルタント
SAP BW(Business Warehouse)やSAP BO(Business Objects)などを使用したデータ分析や報告システムの構築を行います。
クラウドコンサルタント
SAP S/4 HANAクラウドなど、クラウドベースのSAPソリューションの導入や移行を支援します。
各専門分野によって必要なスキルセットや経験が異なるため、自身の強みや興味に合わせて特定の分野にフォーカスすることが、キャリア形成において重要です。
(10)SAPコンサルタントになるためにはどうすればいい?
SAPコンサルタントになるためのルートは主に以下の3つがあります。
1. IT企業や大手コンサルティング会社に新卒入社し、社内でSAP関連の研修を受けてSAPコンサルタントとしてキャリアをスタートさせる。
2. 他の職種からキャリアチェンジする。特に経理、財務、人事などの業務経験者や、他のERPシステムの経験者が転向しやすい傾向にあります。
3. 独学でSAP関連の知識やスキルを身につけ、SAP認定資格を取得してからSAPコンサルタントの職に応募する。
キャリアチェンジを考えている場合は、まず自社でSAP導入プロジェクトがある場合にそれに関わってみるのも良い方法です。実際のプロジェクト経験を積むことで、SAPコンサルタントとしての適性を確認することができます。
SAPの成長が続く限りSAPコンサルタントは魅力的な仕事
SAPコンサルタントは非常にやりがいのある仕事であり、魅力的な仕事です。今後はクラウド化が進むことで課題であった導入コストも下がると考えられることから、これまで導入をためらっていた中小企業でも導入に踏み切るところが増えると予想されます。その動きに伴って、当然SAPクライアントのニーズも高まるでしょう。
次回はフリーランスとしてのSAPコンサルタントの働き方や転職事情などについて詳しく解説していきます。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)