<プロが語る>Webマーケティング領域のフリーランスのニーズ

作成日:2021/06/25

既刊コラム「<プロが語る>Webマーケティング領域のフリーランス案件を解説」にて、Webマーケティング領域のフリーランスについてご紹介しました。

今回はより掘り下げて、案件を獲得するための準備や採用企業が何を求めているのかなどについて、筆者の体験をもとに取りまとめました(2021年5月時点の状況で執筆しています)。

 

目次

■Webマーケターで独立!将来性、案件、収入について考察
(1)Webマーケティングのニーズ
(2)業務のデジタル化に伴う経験者不足
(3)どんな仕事?収入は?

 

■Webマーケティング業界の今。企業がフリーランス人材に求めていること
(1)フリーランスは何を求められる?
(2)フリーランスへの期待-新たな視点-
(3)フリーランスへの期待-経験値の蓄積-
(4)企業の規模と求められることの違い

 

■高単価人材を目指す!独立するなら事前に準備しておきたいこと
(1)ポートフォリオの制作
(2)人脈の再確認
(3)自分自身のストロングポイント

 

■Webマーケティングの案件例
(1)新規事業の相談
(2)事例1:製造業
(3)事例2:メディア企業

 

まとめ

 

※本コラムは、スマートフォンマーケティングに広く精通し、企業/プロダクトのマーケティング戦略を支援するプロフェッショナル人材が執筆しています。

 

Webマーケターで独立!将来性、案件、収入について考察

(1)Webマーケティングのニーズ

世界的に見ても「マーケティング」という仕事自体の歴史は浅く、日本は特に「マーケティング」という考え方があやふやなところがありました。

十数年前までは「いい商品さえ作ればそれだけで売れる」という認識が根強く、特に中小企業おいてはマーケティングに対する考え方がないがしろにされてきた時代があります。

 

インターネットの普及によりコミュニケーションの手段が増えた現代。コストを抑えて手軽にプロモーションを行なえる手段が出現し、マーケティングに取り組む企業が増えてきました。そうして企業のマーケティングに対する意識が成長し、ようやく世間に「マーケティング」という領域が認識されるようになり、今やtoC領域のみならずtoBの領域でも必須の取り組みになりました。

(2)業務のデジタル化に伴う経験者不足

さまざまなマーケティング手法の中でも、コストを抑えることができ、かつ費用対効果が見えやすいWebでのマーケティングは多くの企業が実施しています。

しかしそもそも日本では1990年代半ばに始まった若い手法であるWebマーケティングは、必然的にまだ経験者が少ないのが現状です。

 

仕事を依頼できる人材そのものが少ないことに加え、コロナ禍をきっかけにWeb上の販路拡張を必要としている企業が増えたことや、リモートでの仕事の機会増加によって、業務の外部委託に対する企業の抵抗感が軽減されてきたことなどから、フリーランスの採用機会は増加傾向にあるようです。

 

また、最近ではDX化による業務効率化に注目が集まっていますが、この分野もコロナ禍によってさらにDX推進に拍車がかかっています。筆者自身も、知人からさまざまな社内業務のDX化について相談を受けるようになり、加速度的に増えていると体感しています。

今まで業務のデジタル化が進んでいなかった企業はもとより、Web上でのコミュニケーションのウエイトが増えた企業、そして販路をWebへ拡張していく企業などDX化を検討し始めています。

(3)どんな仕事?収入は?

最近のWebマーケティング領域では、ECサイトの構築SNSの運用Web上でのPR施策についての話題が多く聞かれます。

案件の規模や依頼主の考えによりますが、広告運用、SEO、データ分析、コンテンツマーケティング、SNS運用、クリエイティブ制作、UI/UXデザイナー、コンサルティングの全てのニーズが高まっています。

収入面に関しては、業務内容や自分自身のスキルや経験、工数などによって左右されますが、非常に高単価の案件もあれば、作業をルーティン化し低単価にしている案件もあります。高単価案件を一つ受ける、低単価案件を数多く受けるなど、受注方法も多様です。

フリーランス仲間を見ていると、高単価の案件は景気や社会情勢などさまざまな状況に影響を受けるので、低単価の案件を数件こなし会社員時代の年収を確保しながら、高単価の案件も狙う傾向にあるようです。

 

 

Webマーケティング業界の今。企業がフリーランス人材に求めていること

(1)フリーランスは何を求められる?

あらゆる角度でニーズが高まっているWebマーケティング業界。

企業側が(フリーランスに限らず)人材を求めるのは、単に人手が足りないケースばかりではありません。課題の解決社内での経験者がいない新しい考え方や手法を取り入れたいなどのさまざまなニーズを抱えています。

大企業は人手不足のケースが多く中小企業やスタートアップ企業は、課題の解決、新しい考え方や手法を取り入れたいという要望を抱えているケースが多く見受けられます。

(2)フリーランスへの期待-新たな視点

コンサルタントをご依頼いただくケースで、ソフトやアプリ開発会社にて開発者自身の観点で開発を進めてリリースしたものの、想定より売上が上げられずに困っているとお声がけいただくことがよくあります。

 

筆者が対応したケースでは、開発会社が分析しきれていなかった計測内容を適切に分析することで課題の原因を探り当て、課題解決へと導いた事例があります。

このような実例は数多くありますが、ほとんどの場合もう手が付けられない段階になってご相談いただくことが多く、あと数ヶ月前にご相談いただければ…と悔しい思いをする時もあります。

 

また、ありとあらゆる施策をやり尽くした企業から、新たな施策を求められるケースもあります。

このような課題は比較的大きなプロダクトに多く、次なる施策への具体性はなく「なんとなくの感覚」でご相談いただく場合が多いです。

そのため、まずはクライアントの目的をはっきりさせ目標となる数字を設定し、その数字を達成させるために動く必要があります。

 

女性向けゲームでの実例では、Instagramでの認知を促進させることに主軸を置きました。通常、ゲームでは出稿しないような媒体に記事広告を出稿し、消費者の皆さんが作った作品をInstagramに投稿してもらう企画を実施。

媒体との親和性を優先しコンテンツ制作したため、記事広告を出稿した媒体の反応もよく、Instagramへの投稿数は目標数字を大きく超える結果になりました。クライアントの課題解決につながったようです。

(3)フリーランスへの期待-経験値の蓄積

マーケティングの経験者が少ない企業の場合、プロモーション活動のみならず、マーケティングの全てを広告代理店に委託している企業もあります。しかしこの場合、マーケティング手法が社内で蓄積されないという課題が浮上します。

その課題の改善策のひとつがフリーランスの採用

広告代理店への発注に比べてコストを抑えられるという理由だけでなく、将来的な展望を鑑み、自社内でWebマーケティングの経験値を蓄積することを目的に外部の経験者であるフリーランス人材が活用できるというわけです。

また心情として、コストだけの問題だけではなく、実際は広告代理店に不信感を抱いているケースも少なくないようです。

 

まず、自社内でのWebマーケティングの経験値蓄積を目的に、広告予算の一部を自社内で運用。並行して、広告代理店のスイッチングやクリエイティブ制作などの業務外注化などを実行するなど、まずは体制整備から行なうべき企業が多く見受けられます。

(4)企業の規模と求められることの違い

フリーランスの起用には、その企業が抱えている課題に対して、新たなWebでのマーケティング手法を用いての課題解決が期待値の大きな部分を占めています。当然、速やかに課題を把握し、解決に向けて施策提案ができるような経験と知識が求められます。

大企業には新しい技術などを用いた目新しい手法が好まれ、中小企業やスタートアップには確実な手法を求められるケースが多いと感じます。

もちろん、大企業の方が比較的高単価のため年収アップも期待できますが、常に情報のインプットやアウトプットを求められるため相応の努力も必須。

年収を優先するのか、ワークライフバランスを優先するのか、ご自身が進みたい方向との相談も必要です。

 

 

高単価人材を目指す!独立するなら事前に準備しておきたいこと

(1)ポートフォリオの制作

採用する企業側も「Webマーケティングでどのようなことをしたいのか?」、「どのような人が適材なのか?」、そもそも「どの方法論が適切なのか?」と、Webマーケティングそのものに頭を悩ませている場合もあります。

目的と施策の単純なミスマッチもよくありますが、企業側がWebマーケティングに対する理解が浅いために、インフルエンサーなどのバズワードに飛びついてしまうケースが見受けられます。

インフルエンサーを起用したPR施策を実施したものの、受け皿になるべきECサイトが最適化されておらず、失敗に陥るケースなどよく聞きます。

 

そのような事故を防ぐためにも、職務経歴書より具体的な事例に落とし込んだポートフォリオを準備することで、自身のスキルをアピールすることができる同時に、どのような取り組みが効果的なのかを伝えることができます。企業に合わせたポートフォリオを制作するのが適切ですが、まずは全企業向けのポートフォリオを作成し、フォーマットとして活用しましょう。

 

「○○社において、▲▲案件にて広告運用」のように今までの経験だけでも良いですが、他業種の方にも伝わりやすくなるような実例を入れ込むのもおすすめです。

 

例えば「○○社において、▲▲案件にて広告を運用し120%効率化」、もっと詳しく「○○社において、▲▲案件にて広告を運用し、Facebook広告の獲得単価を下げることに成功。運用広告の120%効率化を達成」など、結果を具体的に記載するとコンサルタントを採用したことによる効果が伝わりやすくなります。

 

ここで注意したいのは、極力横文字や省略語、専門用語などを使わないこと。何より先方に伝わることが重要なので、フォーマットの時点では誰にでもわかる言葉で記載しましょう。

また、一文でもいいので細かな実績を記載しておくことをおすすめします。その細かな実績が採用する企業にとって大きなフックになるかもしれません。

 

このフォーマットをベースに、事前にヒアリングした各企業の課題感に合わせた形に加筆修正していきます。

この作業を繰り返すことにより、広告運用に課題を感じている企業向け、PR施策に課題を感じている企業向け、マス向けの広告とWeb広告の連動性に課題を感じている企業向けなどさまざまなポートフォリオができ、目に留まりやすくなるはずです。独立したてのフリーランスにとって、名刺と同様にポートフォリオは非常に重要です。

(2)人脈の再確認

ポートフォリオの制作で今までの経験を整理し、並行して人脈の再確認も行ないましょう。自分の知識や経験、スキルだけで企業が抱える課題解決ができれば良いですが、実際には知人や他企業のスキルを借りるケースも多くあります

媒体にいる知人から改めて媒体資料を提供してもらったり、グラフィックや動画の制作を依頼できる人材、SEO対策の相談ができる人材にあたりをつけておくなど、あらかじめ準備をしておきましょう。

未経験の領域で人脈がない場合、FacebookやTwitterなどのコミュニティに参加するなどして、相談相手の目星をつけておくという方法もあります。

(3)自分自身のストロングポイント

経験と人脈の整理ができれば、おのずと自分自身のストロングポイントが見えてくるはずです。

しかし、ストロングポイントをそのまま押し出すのではマーケターとしては能がありません。採用面談もマーケティング活動の一つと捉え、推測でもいいのでその企業が抱える課題に合わせた形で自分自身のストロングポイントを押し出してみましょう。合致すれば高単価案件の獲得につながり、年収アップの可能性も高まります。

 

 

Webマーケティングの案件例

(1)新規事業の相談

リーランスのWebマーケターとして活動していると、色々と相談を受けることがあります。DX化の相談や、人材育成、販路拡大などさまざまありますが、最も多いのが新規事業の相談です。

 

既に完成した新しいプロダクトの提案資料のレビューにはじまり、新規事業の壁打ち、企画書やPLの制作など多様な形で支援を求められます。そして、その新規事業が始動した際に、外部委託として採用されるケースもよくあります。

(2)事例 1: 製造業

 

とある小さな製造業の代表の方から、ECサイトの立ち上げの相談を以前から受けていました。

代表の方が日頃の業務で忙殺され、ECサイトの取り組みは未経験のせいもあってか浮いては消えてを繰り返していました。しかしコロナ禍の影響もあり、いよいよWebでの売上を開拓するためにECサイトの立ち上げを実施することに。そして、ECサイトの構築とWebマーケティングのコンサルとしてお手伝いすることになりました。

 

筆者にWeb制作経験やECサイト構築を完結できるスキルがあれば良いのですが、装飾などのデザイン面などもあるため、知人のWebデザイナーに協力を仰ぎました。

私は代表の方と相談し、決済手段やさまざまなツールの選定を行ない、昨年末無事ECサイトをリリースしました。

 

現在はWebマーケティングとして、元々あるコミュニティを生かしSNS上でのコミュニティを拡大させる方向で運用しています。小さな製造業社なのであまり予算を掛けられませんが、元々あるコミュニティをWeb上に移行し、徐々にSNSでのコミュニティが拡大。順調に新たな売上源として成長しているようです。

(3)事例 2:メディア企業

 

前職時代に広告出稿していたメディア企業と、何年か新規事業の壁打ちを繰り返していました。こちらもコロナ禍の影響により、新たなマネタイズ手段としてWebへ新しいサービスを展開することになり、Webマーケティングのコンサルとしてお手伝いすることになりました。

現時点で、ベータ版としてサービスをリリースしています。

 

元々メディア企業として活動していたのでコンテンツは多々ありますが、データ化されていません。そのためまずは、どのコンテンツを優先的にデータ化すべきかを調査する意図で、広告出稿を実施。現在精査を行なっている最中です。

 

並行して、正式リリースするタイミングである程度プロモーション予算を投入できるので、広告手法や広告運用を委託する代理店の選定を行なっています。正式にリリースされたら、次はサービスとしてのボトルネックを見つけ出すためにKPIツリーの設計と運用に進む予定です(2021年5月時点)。

 

これらは一例ですが、ECサイトの立ち上げにしても、新規事業やDXにしても、直接的にWebマーケティングの相談という形ではなく、広い範囲でのさまざまな相談として依頼が来るケースが多いです。

このような場合、まず目の前に大きな課題があり、マーケティング的な課題が見えていません。

 

Webマーケティングの思考を用いて大きな課題を解決へ導けるよう、視座を高める習慣を身に付けておきましょう。結果が実らないケースもありますが、いつかその経験がフリーランスとして大きな経験になるはずです。

 

 

まとめ

このようにWebマーケティングと言ってもその依頼内容は多岐に渡りますが、実際のところその依頼内容はまだまだ「マーケティング」の本質には達していないように思えます。

マーケティングコンサルをされている高広伯彦さんの言葉で、

「【セールス】というのは、“売る”ためのもの
【マーケティング】というのは、“買って”もらえる仕組みや流れをつくるもの
【ブランディング】というのは、原価に対する“付加価値を高く”するためのもの」

というものがあります。

引用:https://www.facebook.com/nori.takahiro/posts/10160915800284535

 

まだまだ世間のマーケティングへの認識はセールスとブランディングの範ちゅうにあり、本質的なマーケティングに関してはやるべきことがたくさんあります。その中でも、Webマーケティングはセールスの範ちゅうで止まっている部分が大半で、本来マーケティングとしてやるべきことは手つかずの状態、課題も数多くあります。

それらの課題を解決し、本質的なマーケティングに近づけていくことができれば、Webマーケティングは再認識され、将来的な需要も高く、高額な年収も期待できるのではないでしょうか。

 

 

< 監修者プロフィール >
羽木 昌尚(はぎ まさなお)

大学卒業後、電気系商社にて営業、仕入れ担当として従事。
2004年にコンテンツプロバイダーに入社。デジタルコンテンツの権利の許諾獲得、自社サービスのプロモーション業務に従事。
2006年にスマートフォンアプリデベロッパーに入社。自社サービスの広告出稿業務に従事し、担当アプリにて900万DL突破。また、自社メディアでの広告マネタイズも担当し、スマートフォンマーケティングに幅広く精通している。
2018年より独立し、モバイルゲームやアプリをはじめおもちゃメーカーなどさまざまな企業、プロダクトのマーケティング戦略の立案と実行を支援。

 

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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