ソーシャルビジネスの事例8選や相似事業など多数解説
最新更新日:2023/12/14
作成日:2023/01/31
ソーシャルビジネスとは、住民、NPO、企業等が「さまざまな社会的課題や地域社会の課題を、ビジネスの手法を用いて解決に取り組む」ことを指します。今回のコラムでは、ソーシャルビジネスの特徴や事例についてご紹介します。
目次
■ソーシャルビジネスの特徴3つ
(1)社会問題を解決する
(2)一時的ではなく継続的
(3)利益はさらなる自社投資に回す
■類似した事業3つ
(1)一般的なビジネス
(2)NPO法人
(3)ボランティア
■ソーシャルビジネスの事例8選
(1)マイクロクレジット
(2)モバイル送金サービス
(3)遊休農地の開墾
(4)バイオトイレカーの開発
(5)過疎地での公共交通運営
(6)動物実験なしのコスメブランド
(7)病児保育の事業拡大
(8)就労支援
■今後の5つの課題
(1)確実な資金調達
(2)ソーシャルビジネスの社会周知
(3)人材確保
(4)マーケティングの知識を習得
(5)外部機関とのスムーズな連携
■まとめ
ソーシャルビジネスで社会問題を解決しよう
ソーシャルビジネスの特徴3つ
ソーシャルビジネスとは「社会性」「事業性」「革新性」の3つを満たしていることを定義としたビジネスです。さまざまな立場の人々が自分の強みや良さを活かして多様な形で社会と関わりを持つビジネスで、新たな雇用、新たな市場の創出にもつながります。
国によってソーシャルビジネスの捉え方は異なります。ヨーロッパ諸国ではNPOや共同組合、非営利団体であることがほとんどです。日本では経済産業省が発表した研究がソーシャルビジネスの定義とされています。
(1)社会問題を解決する
ソーシャルビジネスの特徴に、現在解決が求められている社会的問題への取り組みをミッションとしていることが挙げられます。
環境問題、貧困問題、少子高齢化問題、まちづくり、地域おこし等さまざまな解決するべき課題があります。
(2)一時的ではなく継続的
社会的課題にビジネスの手法を用いて取り組み、継続的に事業活動を行ない展開します。経営基盤の強化に事業性の確保、そしてサービスの質を高めつつ継続的に事業を推進することが望まれています。
(3)利益はさらなる自社投資に回す
その活動で生まれた利益や売上は、投資家への再分配ではなく社員の福利厚生の充実、自社のさらなるソーシャルビジネスに再投資します。
社会的課題の解決のみを目標とし、「損失なし、配当金なしの会社」を経営することに専念しているのです。
類似した事業3つ
ソーシャルビジネスと似た事業には、一般的なビジネス、NPO法人、ボランティアが挙げられますが、それぞれ定義や目的が異なります。
ここからは、上記で挙げた3つの事業と、ソーシャルビジネスの違いを具体的に解説します。
(1)一般的なビジネス
一般的なビジネスとソーシャルビジネスは、事業で目指す目的が違います。
一般的なビジネスでは、利益を最大化させて儲かるシステムを作ることを目的としていますが、ソーシャルビジネスは「社会的課題の解決」を目的としています。
(2)NPO法人
NPO法人とソーシャルビジネスの違いは、定義となっている3要素「社会性」「事業性」「革新性」の全てを満たすことができているかの違いです。
「自ら事業収益を上げながら継続的に課題解決に取り組む」と考えた場合、NPO法人がこれを満たせているかは判断が難しいところです。NPO法人では事業で収益を上げ、外部資金に依存しない体制を整えているところもあります。
約3割強の割合で有給常勤職員数がゼロという調査データがあり、人件費計上の上で利益が出ていないと継続が難しいと予想されます。
(3)ボランティア
ボランティアとソーシャルビジネスの違いは、「自ら収益を生み出すための活動」をしているかという視点で見た時に違いがあります。
ボランティアは資金調達を外部に頼らなければ社会貢献活動資金を捻出できません。そのため活動内容の変更などを自分たちで決めることができない場合が多くあります。
また、やりがいは感じられるものの給料の発生がないためボランティア活動のみで生活していくことは困難です。
ソーシャルビジネスの事例8選
ソーシャル・ビジネスの取り組みには、高齢者の介護、女性活躍推進、商店街の空き家や空き店舗対策、貧困解決策、被災地復興、子育て支援、自然・環境保護、途上国支援、過疎地域の活性化、地域貢献、障がい者の就労支援などがあります。
ここからは、ソーシャルビジネスで成果を上げたモデルをご紹介します。
(1)マイクロクレジット
貧困層への無担保小口融資を行なう銀行(マイクロクレジット)があります。1983年に「貧しい者のための信用制度には、抵当も担保も必要ない」という理念のもとバングラデシュにグラミン銀行が設立されました。貧困にあえぐ人々の自立支援、低所得者層の自営業者や生活に困難を抱える女性、難民に小口融資を行ないバングラデシュの貧困対策に大きく貢献しました。グラミン銀行の創業者のムハマド・ユヌス総裁にはノーベル平和賞が贈られました。
(2)モバイル送金サービス
ケニアの携帯電話事業者、サファリコムでは、M-PESAというオンラインサービスを開始。これは、銀行口座を持てない人でも、携帯電話によってモバイル送金が可能になるサービスです。低所得層の人々に焦点をあて顧客層を増やし、発展途上国に変革をもたらしました。
(3)遊休農地の開墾
宮崎県児湯郡新富町と株式会社ボーダレス・ジャパンは、遊休農地を開墾することで、地域課題を解決しビジネスにつなげました。耕作放棄地を再生し、地域の高齢者を雇用、オーガニック野菜の生産・販売を通常よりも少ないコストで実現するなど、地方地域活性化に貢献しました。同社は他にも、フードロスに注目したエコシステム開発や、自然エネルギーを使うことでの地球温暖化への取り組みを行なっています。
参考:https://www.borderless-japan.com/
(4)バイオトイレカーの開発
おがくずで排せつ物を分解し、水を使わず下水処理も不必要でどこにでも設置が可能な「バイオトイレカー」。開発したのは、優成サービス株式会社という会社で、警備や建設業務等を行なっています。従業員のトイレ問題を解決するために、エコロジーな「移動式バイオトイレカー」の開発に至りました。おがくずは、使用後有機肥料として活用されています。障がい者の外出の妨げとなっているトイレ問題に着目し、障がい者でも使用できるように改良も加えました。また、イベント会場などへのレンタルも行っています。
参考:https://www.navida.ne.jp/snavi/100487_1.html
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(5)過疎地での公共交通運営
北海道ニセコ町では町内循環バスを「人を運ぶ道具」ではなく「コミュニケーション・インフラ」として再構築を図りました。町内循環バスの利用者が少なくバスを維持するための費用が大きな負担となっていましたが、高齢者等の日常的な移動手段のためバスは必要不可欠な存在です。バスの運行を継続させるため、町内循環バスのデマンド化を図り(高齢者世帯などに向けた購入商品配達手段としての利用、自給エネルギーのデマンド交通への利用検討など)、 利便性を向上させたことにより利用者増加に成功しました。
参考:https://www.town.niseko.lg.jp/kurashi/seikatsu/kotsu/nikotto_bus/
(6)動物実験なしのコスメブランド
ザ・ボディショップは化粧品の動物実験と戦う最初のビューティーブランドです。動物は危害を加えられるべきではないと考え、動物実験を廃止しました。これまでに化粧品の動物実験廃止の嘆願書や署名を幾度も提出しました。ザ・ボディショップの製品は全てクルエルティフリー(動物実験をしていないことを指す)です。
参考:https://www.the-body-shop.co.jp/shop/
(7)病児保育の事業拡大
認定NPO法人フローレンスは、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを提供しています。病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたいとの考えのもと設立されました。寄付会員や企業寄付の協力を得てサポートを行なっています。
(8)就労支援
株式会社エスプールプラスは障がい者の就労を支援する企業です。さまざまな企業がミッションに賛同し、多くの大企業と取引を行っています。
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今後の5つの課題
ソーシャルビジネス事業に対する期待は大きいですが、社会性・事業性の双方を追求することは容易ではありません。成功例もあるものの、さまざまな課題に直面するのもまた事実。ソーシャルビジネスの始め方やノウハウを学べる仕組み作りを整えるなど、課題解決が重要です。
(1)確実な資金調達
日本政策金融公庫では、ソーシャルビジネスのための融資制度があります。子育て分野・介護サービス分野などでは特別利率が適用されます。
融資制度が創設された当初より特別利率の適用要件が緩和されているため、さらに使いやすくなっています。しかし資金調達に苦労することも多く、政府等による補助金新設に期待の声が上がっています。
※詳細は日本政策金融公庫ホームページにてお調べください。
(2)ソーシャルビジネスの社会周知
ソーシャルビジネスの知名度を上げることを目的に、大学や地域でセミナー等が行なわれています。
ソーシャルビジネス事業者の活躍などによりマスコミやメディア、ニュース等で取り上げられる回数が増え、一般的な認知度は上がってきました。今後はソーシャルビジネスがなぜ必要なのか本質を伝えることや、戦略的な普及が必要だと考えられています。
(3)人材確保
人材確保、人材育成が今後のソーシャルビジネスの重要な鍵と考えられています。
高校生や大学生・大学院生など、若者に対する専門知識の教育の充実が、人材確保につながると期待されています。また新卒者や未経験者に、ソーシャルビジネスを成功させた事業者が実地訓練の機会を提供することもまた有効だと言われています。
人手不足解消の対策のひとつとして、ソーシャルビジネス成功者による積極的な人材育成に対する支援補助や拡充も求められています。
(4)マーケティングの知識を習得
ソーシャルビジネス事業を発展させるためには、マーケティングなどの専門知識の取得も必要です。
中小企業の早期退職者や転職活動中の人材など、専門知識を既に持つ人材を確保することで効率よく事業の専門性が高まり、事業拡大に一歩近づけることができるかもしれません。
(5)外部機関とのスムーズな連携
ソーシャルビジネス事業者と協力企業連携のためには、ニーズを踏まえた丁寧なマッチングが必要です。
期待されているのは「ソーシャルビジネス・ネットワーク」。「ソーシャルビジネス・ネットワーク」は日本唯一のソーシャルビジネスの経済団体です。事業計画の策定や資金調達、人材育成といったソーシャルビジネス事業者が抱える経営課題の解決を支援しています。
※詳細はソーシャルビジネス・ネットワークホームページをご覧ください。
まとめ
ソーシャルビジネスで社会問題を解決しよう
ソーシャルビジネスは、社会的課題の解決にビジネスの手法で取り組むことを目的としています。ソーシャルビジネスを始める前に利点や問題点、課題を踏まえた上で、新しいアイデアを生み出しビジネスを始めることが好ましいでしょう。
世界の社会的課題やニーズを捉え、継続的な事業活動を行ない社会の問題点を解決しましょう。
<参照>
※1:https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/h29_houjin_houkoku.pdf
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)