DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義や推進の背景と業種別DX実現事例
作成日:2022/03/18
世界的に推進されているDX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業や社会全体が今後も取り組むべき課題です。現在、転職エージェントなどでもDX関連のIT人材の案件が増えています。DXの定義やDXについてDXが加速する理由、国内の大手企業の成功事例を取り組みの詳細とともに紹介します。
目次
■日本企業のDX化成功事例
(1)【建設:コマツ】ICT装置の開発やスマートコンストラクションの実現
(2)【製造:三菱電機】FA関連のソリューションをつないで工場を最適化
(3)【不動産:長谷工コーポレーション】LINEで物件探しと見学予約が完結
(4)【保険:住友生命】アプリで計測した健康状態が保険料に反映される仕組みを開発
DX:デジタルトランスフォーメーションとは?
DXはデジタルフォーメーションの略語で、もともとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という仮説です。2004年頃にスウェーデンのエリック・ストールターマンによる、この仮説を受け、世界中の企業や地域がDXを推進し、何らかのプロジェクトが進行しています。
経済産業省は、ビジネスにDXを取り入れるメリットに「レガシー文化の脱却」をあげています。
レガシー文化を脱却することにより目指すべきデジタル社会の姿「社会課題の解決や新たな価値、体験の提供が迅速になされ、安心・安全な社会が実現」「デジタルを活用してグローバルで活躍する競争力の高い企業や、カーボンニュートラルをはじめとした世界の持続的発展に貢献する産業が生まれる」などが実現するとしています。
DXが加速する理由
前項で紹介した経済産業省の調査結果の中では、「2018年以前はビジネスシーンで『DX=レガシーシステム刷新』な ど、本質ではない解釈を生んでしまい、また『現時点で競争優位性が 確保できていればこれ以上のDXは 不要である』という受け止めもあった」と触れられています。ところが、その後の2,3年の間に企業、社会全体のDX化が加速しました。
(1)2025年問題
近年DX化推進の動きが活発化しているのには「2025年の崖」といわれる問題が関係しているといわれています。「2025年の崖」は、IT人材の不足や基幹システムの老朽化により、2025年以降に約12兆円の経済損失が起こると指摘されている問題です。
したがって、2025年までにデジタル競争に取り残されてしまわないように、国内外の企業や自治体でDX化の動きが加速していると見られています。
(2)コロナ禍
ここ数年、非常に速いスピードでDXが推進されたのには、2020年以降の世界的な感染が続くコロナウイルスの影響もかなり大きいでしょう。
先程の経済産業省による調査結果でも、コロナウイルスまん延防止の観点から、フィールドセールスや通勤を控える企業が続出する中
- 事業環境の変化に迅速に適応できた企業と、そうでない企業の差が開いている
- 押印、客先常駐、対面販売など、これまでは疑問を持たなかった企業文化(業務・慣習)が変革の阻害要因に先送りしてきた課題がコロナ禍により一気に表出
といった事象があったと明記されています。コロナ禍が結果としてそれまでも指摘され、一部で拒否反応があった、国内企業のレガシー文化を見直すきっかけになりDX化が一気に進んだとみられています。
日本企業のDX化成功事例
海外のほうが、ITを活用したDX化が進んでいるといわれています。特に、GAFAを始めとした先進企業がDX化で世界をリードしています。
しかし、日本国内企業の中にもすでにDX化が一定の成功を収めている企業も存在します。多くの企業の手本となり、国内のDX化を引っ張っている企業のDX化成功事例を紹介します。
(1)【建設:コマツ】ICT装置の開発やスマートコンストラクションの実現
建設業大手コマツの事例です。コマツでは、建設機械に後付できるICT装置の開発に長年尽力してきました。現在は多くのコマツ製建設機械に通信機能やGPSを備えた装置を搭載しています。
これらのシステムの活用により「稼働状況」「機械の位置」「燃料の残量」などを遠方から確認できるようにしたのです。盗難防止やメンテナンス時期の把握にも役立つため、セキュリティと安全性の強化、コストの削減にもつなげています。
また、測量や施行後の検査にドローンを活用したり、3Ⅾによる計画・施行・管理データを活用したりと「すべてのプロセスが『デジタル化』され『つながる』”ヨコ”」へと変革させました。このスマートコンストラクションを実現により、施行プロセスの短縮、時間や人件費などの負担軽減を図り、ひいてはコマツの技術を活用する企業の事業成長戦略に役立てています。
(2)【製造:三菱電機】FA関連のソリューションをつないで工場を最適化
製造業大手、三菱電機の事例です。三菱電機では、製造業の会社向けにFA関連のソリューションをつないで工場を最適化するシステムを構築しています。
具体的には、仕掛品伝票のバーコード化、リアルタイムの在庫管理システムを自動化し、営業部門と製造部門間での生産計画の連携を図る仕組みです。
自動化に関するノウハウや技術を活用することで、工場内の機器をネットワークで結びつけ、データを分析・活用し、スマート工場やシームレスな事業計画実現の手助けをしています。
(3)【不動産:長谷工コーポレーション】LINEで物件探しと見学予約が完結
大手建設・不動産会社、長谷工コーポレーションは、自社の公式LINEを「友だち」追加するだけで、顧客が新築分譲マンションなどオンライン上での物件探しをサポートするシステム『マンションFit』を構築しました。
LINE上で5つの一般的な質問に答えることで、希望に合ったマンションの紹介や非対面でモデルルームの予約が可能になります。気軽に希望のマンションを探せる、不要不急の外出機会を減らせる、など顧客のニーズに応えつつ、従業員の負担軽減につながっています。現在のコロナ禍において非常に有効なサービスです。
引用:長谷工コーポレーション 新築マンション探しをサポートする『マンションFit」サービス開始
(4)【保険:住友生命】アプリで計測した健康状態が保険料に反映される仕組みを開発
大手保険会社、住友生命の事例です。住友生命保険では、アプリで健康状態を計測し、健康状態が保険料に反映されるシステムを開発、導入し、その結果を保険料や特典に反映させるという斬新な取り組み「Vitarity」を運営しています。
現在、多くの人がスマートフォンやスマートデバイス等を使用して健康管理を行なっていますが、こうした健康維持・健康増進活動をポイント化することで、さらなる健康への関心を掻き立てる独自の取り組みです。実際にVitarity利用者の死亡率や入院率は、Vitarity特典に加入していない利用者に比べ直近3年ほどの間低い水準をマークしているという結果が出ています。
引用:住友生命保険 未来を変えていく、健康増進型保険 「Vitarity」
DX化成功にむけた課題の洗い出しが事業拡大につながる
DX化を成功させるには、企業の経営者が率先して先導するほか、DX評価指数といった、自社の課題の把握、共有が必要です。また、IT人材の確保と老朽化したシステムを刷新していく必要があるでしょう。
それにより新たなサービスが生まれたり、売り上げ以外の価値を創出できたりする可能性が高いです。それこそがDX「デジタルトランスフォーメーション」の本来の仮説を証明することになるでしょう。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)