【インボイス制度とは】フリーランスに与える影響と具体的内容や制度開始までにすべきこと

作成日:2022 /05/13

 

インボイス制度導入開始が発表され、耳にすることも増えました。しかし、インボイス制度によって、具体的にどのようなデメリットが生じるのかよくわからない方もいるでしょう。インボイス制度がフリーランスに与える影響、インボイス制度の開始時期、具体的内容、制度開始までにどのように対策すべきか、などについて解説します。

 

目次

 

■インボイス制度とは?

 

■インボイス制度が導入された理由とは?

 

■インボイス制度の導入はいつから?具体的な変更点とは?
(1)仕入税額控除の要件
(2)適格請求書の要件

 

■インボイス制度がフリーランスに与える影響とは?

 

■インボイス制度でフリーランスに必要な知識
(1)インボイス制度の経過措置
(2)本則課税と簡易課税
(3)適格簡易請求書

 

■インボイス制度の開始までにフリーランスがやるべきこと
(1)インボイス制度を理解する
(2)課税事業者になるかどうかを検討する
(3)「適格請求書発行事業者」の登録を申請する

 

■インボイス制度の影響を最小限にするためにやるべきことを整理しよう

 

 

インボイス制度とは?

インボイス制度決定

 

インボイス制度の正式名称は、「適格請求書等保存方式」です。その名の通り、適格請求書等の交付、保存を義務付ける制度です。

 

では、適格請求書とはどのようなものなのでしょうか。適格請求書とは、現在の一般的な請求書(区分記載請求書)に、以下の3つを追加した請求書のことです。

  • ・インボイス制度の登録番号
  • ・適用税率
  • ・消費税等の額

 

話が前後しますが、適格請求書が話題になる以前の平成30年10月1日に、区分記載請求書の発行が義務付けられました。区分記載とは、以下の2つです。

  • ・軽減税率の対象である旨
  • ・適用税率ごとに区分した合計額

 

もともとの請求書の区分記載によって上記2つが追加され、さらに今回のインボイス制度で3つの追加記載が義務付けられたということです。最終的にインボイス制度によって、請求書に以下9項目の記載が義務付けられます

  • 1.発行者の氏名又は名称
  • 2.取引年月日
  • 3.取引内容
  • 4.受領者の氏名又は名称
  • 5.軽減税率の対象である旨の表記
  • 6.適用税率ごとに区分した合計額
  • 7.インボイス制度の登録番号
  • 8.適用税率
  • 9.適用税率ごとの消費税額の合計

 

1~4はもともとの請求書に記載が義務付けられていたもの。5と6は区分記載請求書で記載が義務付けられたもの。7~9は今回のインボイス制度で記載が義務付けられるものです。

 

インボイス制度が導入された理由とは?

税率上昇のイメージ

 

現状の消費税は原則として10%なのですが、一部8%の軽減税率が適用されています。ご存じの通り、2019年の消費税率改正の際、食品など一部品目で軽減税率が適用され、消費税8%と10%が混在しています。

 

2つの税率が混在していると、請求書を見たときに何%の税率が適用されているのかよくわからない状況が起こります。正確な経理処理と、適正な課税が行なわれるためには、商品やサービスにどちらの税率が適用されているか、を明確にする必要があります。

 

そこで、「どこに何%の税率が適用されているのか」を請求書で明確にする目的からインボイス制度が導入されるに至りました。

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インボイス制度の導入はいつから?具体的な変更点とは?

疑問の単純図表


インボイス制度が始まるのは令和5年(2023年)10月1日からです。では、インボイス制度を導入することによって、今後具体的に何が変わるのでしょうか。

 

(1)仕入税額控除の要件

仕入税額控除とは、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて差額を納付するものです。現行の「区分記載請求書等保存方式」では、請求書がない場合でも、支払先の名称や請求書のない理由を帳簿に記載すれば問題ありません。


インボイス導入後は「適格請求書等保存方式」になるので、「適格請求書」がなければ仕入税額控除が受けられません

(2)適格請求書の要件

現行の「区分記載請求書等保存方式」で区分記載請求書に必要な記載事項は以下の6項目です。

  • 1.発行者の氏名又は名称
  • 2.取引年月日
  • 3.取引内容
  • 4.受領者の氏名又は名称
  • 5.軽減税率の対象である旨の表記
  • 6.適用税率ごとに区分した合計額

 

適格請求書では以下の7~9が追加で必要になります。

  • 7.インボイス制度の登録番号
  • 8.適用税率
  • 9.適用税率ごとの消費税額の合計

 

インボイス制度がフリーランスに与える影響とは?

インボイスに対応するフリーランス

 

読者の中には、年収1,000万円以上の方もいるでしょう。しかし、一般的には課税売上高が1,000万円以下のフリーランスが多いため、消費税の免税事業者がほとんどといわれています。

 

免税事業者とは、消費税の納税を免除されている事業者のことです。免税事業者の条件は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることです。逆に1,000万円を超えていると課税事業者になります。

 

適格請求書は、課税事業者のみ発行できます。つまり、免税事業者である多くのフリーランスは、適格請求書を発行できないということです。インボイス制度では、受注先が適格請求書でなければ、発注先は仕入税額控除ができないので、免税事業者のフリーランスは取引を打ち切られる可能性も出てきます。

 

そのため、免税事業者があえて課税事業者になる方法もありますが、課税事業者になれば納税義務が生じます。一長一短なので、課税事業者になるべきか迷うところです。制度導入まではまだ時間があるので、今すぐにどうすべきか決定する必要はないでしょう。


今後、企業やフリーランス人材がどのような動きをするのか読めない部分もあります。周囲の状況や導入開始までの時流を加味して、課税事業者になるべきかどうか判断するのがよいでしょう。

 

 

インボイス制度でフリーランスに必要な知識

学び イメージ図


インボイス制度について解説してきましたが、ここからはインボイス制度についてフリーランスが特に知っておくべき制度について解説します。

 

(1)インボイス制度の経過措置

インボイス制度の導入は2023年10月1日ですが、一律でインボイス制度に切り替えると、免税事業者を中心とした混乱が予想されます。そのため、経過措置として、適格請求書を発行できない事業者からの仕入れについても、一定期間は一定割合の仕入税額控除が認められています


具体的な控除割合には、2023年10月1日から2026年9月30日までは、仕入税額相当額の80%、2026年10月1日から2029年9月30日までは仕入税額相当額の50%です。

(2)本則課税と簡易課税

インボイス制度とは関係なく、もともとあるシステムなのですが、課税事業者になる場合、消費税には2つの税額計算方法があります。本則課税と簡易課税です。

 

本則課税は、売上に対する消費税から仕入れに対する消費税を差し引いて納税額を決める計算方法です。簡易課税は、売上に対する消費税に「みなし仕入率」を乗じて、納税額を決める計算方法です。

 

名前の通り簡易課税の方が、計算方法が簡単です。所得税の青色申告と白色申告のようなイメージを持つ方もいるかもしれません。所得税の場合は青色申告の方が、手間がかかる分、節税になるのですが、消費税の場合は本則課税の方が節税になるとは一概に言えません。


簡易課税では、仕入れで実際に払った消費税は考慮されません。計算が簡単なだけでなく、仕入れが少ない業種などでは有利になる可能性があるのです。実際に、課税事業者になる選択を検討する際には、本則課税と簡易課税でどちらが節税になるのか、シミュレーションしてみるとよいでしょう。

(3)適格簡易請求書

適格簡易請求書とは、適格請求書の省略版です。具体的には、以下の項目を省略できます。

  • ・受領者の氏名又は名称
  • ・「適用税率」か「適用税率ごとの消費税額の合計」のどちらか

 

一方、適格簡易請求書に必要な記載項目は以下の7つです。

  • 1.発行者の氏名又は名称
  • 2.取引年月日
  • 3.取引内容
  • 4.軽減税率の対象である旨の表記
  • 5.適用税率ごとに区分した合計額
  • 6.インボイス制度の登録番号
  • 7.適用税率または税率ごとの消費税額の合計

 

特に、業務によっては受領者の氏名・名称を毎回記載するのは、煩雑さにつながります。現実的に厳しいので、省略が許可されたのでしょう。小売業、飲食業、写真業、タクシー業など不特定多数を相手にする場合は、「適格簡易請求書」の要件を満たしたレシートや領収書でよいとされています。

 

インボイス制度の開始までにフリーランスがやるべきこと


インボイス制度の概要やフリーランスに与える影響などについて把握したところで、インボイス制度の開始までにやるべきことを整理しましょう。

 

(1)インボイス制度を理解する

現段階ではインボイス制度の導入まで期間があるため、インボイス制度についてあまり把握していないフリーランスが多いでしょう。現状はまだそれでも問題ないのですが、ある程度早めにインボイス制度について理解しておきましょう。

 

早めに対策を考えることができ、最初はインボイス制度についてよくわからなかった場合も徐々に理解が深まるはずです。今後もインボイス制度に関する情報が発信される可能性があり、基礎知識があれば追加の情報もいち早く理解できます。

(2)課税事業者になるかどうかを検討する

インボイス制度について理解したら、早めにざっくりとでも方針を考えておきましょう制度の詳細は、今後変わる可能性が0ではないので、今すぐ方針を決定までする必要はありません。しかし、インボイス制度開始前には、課税事業者になるのか、本則課税にするのか簡易課税にするのかを決める必要があります

 

考え方の一例として、適格請求書が必要ない個人との取引がメインなら、課税事業者になる必要はなく、現状のままで良いでしょう。一方、企業との取引が主である場合は、課税事業者にならざるをえないでしょう。


このように、インボイス制度が導入されたら「絶対に課税事業者になるべき」というものではなく、取引状況などに応じて選択可能です。もちろん、今後取引企業、ほかのフリーランス人材がどう対応するかも大いに影響してきます。

(3)「適格請求書発行事業者」の登録を申請する

適格請求書発行事業者=課税事業者になるためには、国税庁に登録申請する必要があります。そして早めに登録申請しなければインボイス制度の開始と同時に適格請求書発行事業者になることができません。

 

具体的には、2023年3月31日までに登録申請をしないと、10月1日からのスタートに間に合いません。申請が遅れた場合、翌年度からしか適格請求書を発行できなくなります。ただし、事情がある場合は、2023年9月30日まで申請可能なため、管轄の税務署へ相談しましょう。

 

それでも、まだ期間的に余裕がありますが、いずれにしても「2023年10月1日が近づいてきたら準備しようというスタンスは避けるべき」です。登録申請の書式は国税庁のWebサイトからダウンロード可能なほか、e-Taxからでも申請可能です。

 

インボイス制度の影響を最小限にするためにやるべきことを整理しよう

税金のイメージ

 

インボイス制度とは適格請求書等保存方式のことで、請求書に追記事項が生じるほか、仕入税額控除に影響します。クライアント側が「課税事業者と契約したい」「免税事業者の場合は仕入額控除できない分は報酬から差し引きたい」と考える可能性があるからです。フリーランス人材にとっては、仕事の受注量や報酬などに影響してくるでしょう。

 

正直なところフリーランスにとってあまり歓迎できない制度ではありますが、損を避けるためには、やるべきことを見極め対応し、状況に応じて準備を進めておくのがおすすめです。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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