「実力でコンフォートゾーンを拡げていく」 豊富な経験と新しい働き方で志す細胞ビジネスへの道
“会社員としての仕事”と“フリーコンサルタントとしての仕事”。一見すると両立しえなく思える二つですが、どちらも“自分の事業”の中の一つであると捉えると、可能性の幅は大きく広がるのではないでしょうか。
「コンサルタントのワークスタイル」、今回のインタビューは石尾徹さん。
外資系の製薬・医療機器メーカーにて国際的なプロジェクトを数多く経験されたのち、2015年からは、医療業界では非常に珍しい細胞・医療分野のフリーコンサルタントとして活躍なさっています。細胞ビジネスの将来性に魅せられ、先人がほぼ存在しない業界でフリーランスという働き方を選んだ石尾さんに、独立した経緯や、フリーランスだからこそ持っておくべき考え方など、さまざまなお話を伺ってきました。
石尾 徹
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
ドイツ系製薬メーカーでの営業、米大学留学などを経て、フランス系製薬メーカーである現サノフィ株式会社にて医薬開発に従事。その後、米国系の大手医療機器メーカー2社にて臨床開発部門の管理職を歴任し、2015年1月よりフリーランスとして細胞・医療分野でのコンサルティング業務に従事。
石尾 徹
将来性の高い細胞分野でやりがいのある仕事をするために独立
-細胞・医療分野でフリーコンサルタントとしてご活躍中の石尾さんですが、どのような経緯で独立されたのでしょうか?
石尾さん(以下、敬称略):実は会社に勤めながらコンサルの仕事も始めていたのですが、それ以前に会社員一本でプロジェクトリーダーを務めた頃の仕事が、最終的に独立したきっかけの一つになっています。
そのプロジェクトは、当時まだ研究段階だったある物質を使った再生医療の国際共同開発だったのですが、結果は、時期尚早のため成功には至りませんでした。ただ、プロジェクトに関わった世界中の研究者がその後それを論文化し最も権威のある医学雑誌に掲載したことをきっかけに、数年後にアンチエイジングや美容整形などの分野で、その物質を使った製品が登場していたのです。自分のいた会社があれだけ巨額の投資をして試行錯誤したにも関わらずうまくいかなかったものが、世界ではもっと身近な分野で製品化されて世に出てきた。そのことに非常に驚くと同時に、細胞ビジネスに高い将来性を感じました。
日本は残念ながら規制が多いものの、今の細胞分野には世の中に先駆けて手掛けられる仕事がたくさんあり、ビジネスチャンスがそこら中に転がっています。そういった仕事やチャンスを掴んでいくには、会社員でいるよりもフリーで動いた方が有利ですし、収集できる情報量もフリーになった方が大幅に増えます。それに気づいたのがきっかけで、フリーでコンサルの仕事をするようになりました。
-会社員でいるよりも、フリーランスの方がより多くの情報が入ってくるというのは意外ですね。
石尾:会社の名刺を持って行くと、会社に関係のある情報しか得られないですよね。相手も余計な話をすると自分の立場が危ないという部分があるのかもしれません(笑)。でも、フリーの人間にはそういったことを気にせず色々と話してくれます。フリーだからこそ入ってくる、そういった情報によって、早い段階で真実を掴んで時代を先読みすることができると感じています。
-この業界で、フリーランスで活動している方や副業を持っている方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?
石尾:医療業界出身で、かつサイエンスの分野でフリーコンサルタントをしているのは私くらいなのではないでしょうか。サイエンスの分野ではなく、IT、マーケティング、ヘッドハンティングといった部分に関するコンサルティングをしている方はいますが、私がやっているような分野でコンサルティングという職種が成り立つということ自体、考えたこともない方がほとんどなのではないかと思います。
副業に関しては、先日ロート製薬さんが大々的に認めたという報道がありましたが、禁止している会社もまだ多いと思います。とはいえ、年功序列は既に崩壊していますし、特に外資系の場合は会社都合でのいわゆる肩たたきも日常茶飯事です。例えば本社側のトップが変わると、それ以前のトップの息がかかっている日本の責任者の地位はすぐに危なくなりますし、その責任者がいなくなってしまえば、傘下にいた人間も希望のポジションなど、もはや確保できず、いちからやり直しです。会社の仕事にこだわっていても、最後まで残れる人は本当に少数だということですよね。そう考えると、フリーランスや副業としてコンサルタントをするという選択肢がもっと広がっていって良いのではないかと思います。
「実力でコンフォートゾーンを拡げていく」ことの大切さ
-石尾さんはどのようにしてコンサルティングの仕事を始められたのですか?
石尾:私の場合は、「もう自分は副業としてコンサル業ができるな、やった方がいいな」と思い始めた時に、製薬関係のコンサルティングができる人材としてグローバルなコンサルティンググループからお話をいただいたことがきっかけでした。業務内容は、例えばヨーロッパの会社からの「日本で新しい分野の医療機器を開発するために、とにかく情報を集めたい」といった依頼に対し、ネット上で連絡を取り合いながら情報を提供していくというものだったのですが、そこで私が驚いたのは、コンサル業が完全にグローバル化されているということでした。顧客がヨーロッパ、調査先が日本、コンサルティング会社が米国であっても、何の支障もないわけです。もはや組織にこだわらなくても個の力があれば問題ないボーダーレスな時代なのだと、その時に確信しましたね。
個人的には、会社勤めもコンサルも自分にとっての一つの事業にすぎず、それ以外にもできることはどんどん増やしていった方がいいと考えているので、私自身、いろいろな仕事をさせていただいています。できることは何でもやって、実力でコンフォートゾーンを拡げていく。そういう意識が大事だと思います。独立も、最初から成功しているのだとしたら、それはおそらくそれまでにやってきた仕事の延長だからですよね。ただ、そういう半安定志向で本当に面白いのかなと。フリーランスだからこそ、最終的には自由に動いた方が楽しいのではないでしょうか。
-せっかくフリーランスとして活躍しているのだから、試行錯誤しながら自分のやりたいことを見つけていった方がいいということですね。
石尾:それまでの経験とは全く関係のない仕事であっても、話が来た以上は自分ができそうなものならすべて受ける、それくらいの姿勢でいた方がいいと思います。案外、その後、自身の分野につながります(笑)。もちろんリスクは伴うので、情報は常に集めておく必要がありますが。
-リスクを覚悟した上で進むという心の強さも必要なのでしょうね。医療業界で“フリーランス”という働き方ができる可能性を示したという意味でも、石尾さんのご活躍は素晴らしいですね。
石尾:今後日本でもフリーランスという働き方が今よりも幅広い業種で増えていくと思うので、それらの相乗効果が発揮されるのを期待しています。個人的にはこの先に法人化による展開も目指したいと思っているので、どのような形態を作るのが最良かという点も意識しながら、当面はフリーで動きつつ、ベースを固めていければと考えています。
思い切り動くことができなくなった時に、今よりも楽しい人生を歩んでいたい
-将来的には細胞というマーケットで何らかの事業を興したいとも考えていらっしゃるのでしょうか。
石尾:正直なところ、まだそこまでは考えられていません。ただ、米国の最先端の製品を提供するビジネスは既に始めているので、BtoCにも基盤を作る事は考えています。また、細胞ビジネスも最近はインバウンドの時代になっています。例えば美容整形の技術一つ取っても、韓国やその他の国でも施術を受けられるにも関わらず、技術的に日本が安心だということで中国人などアジアの人達がわざわざ来日するのです。ですので、ビジネスチャンスを掴むためには常に海外と日本の距離を把握しておくことも大切だと思っています。
-医療以外のマーケットでは、マーケットができて初めて法律が作られるという流れがあると思うのですが、医療の世界は逆で、国の許可が下りて初めてビジネスが広がりますよね。それはやはり、生命に関わることだからなのでしょうか。
石尾:おっしゃる通りです。だからマーケットに広がる前に規制をかける。まぁ、厚生労働省のミッションは事故を防ぐことですから、仕方がない部分もあると思います。例えばノーベル賞で有名なiPS細胞も、幹細胞を人工的に操ることができる技術ですので、それこそ臓器も作れるようになりますし、もっと研究が進めば人間の体の部品すべてを作ることができてしまうわけですから、致し方ないことです。
-医療業界では珍しいフリーコンサルタントという働き方を選択し、今後は細胞ビジネスという未開拓のマーケットでの起業も志すなど、精力的に挑戦を続けていらっしゃる背景には、どのような想いがあるのでしょうか。
石尾:私は今50代半ばなのですが、当然いつかは思い切り動くことができなくなる時が来ると思います。でも、その時に今よりも楽しい人生を歩んでいたい。そういうライフプランがあるので、今はとにかく動いて、資産を構築する。と同時に自分の目指すところをどんどん深掘りしていく時だと思っています。
-10年後はどんなお仕事をされているのでしょうか。楽しみですね。
石尾:そうですね。もしかしたら細胞からアンドロイドを作っているかもしれません(笑)。
-本日は貴重なお話をありがとうございました!
「フリーで働くことがまだ珍しい分野で、“フリーランス”という選択をした自分のような人間がいるということを、もっと発信していった方が良いのではないか」という想いから、今回インタビューに応じてくださった石尾さん。言葉の端々から、働くこと、そして生きることを楽しんでいらっしゃる様子が伝わってきました。
石尾さんのように、“楽しみながら挑戦する”働き方を選ぶ。そんな人たちの力になりたいとみらいワークスは考えています。