描かれた計画を実行する立場から、計画を描く立場へ。会社の「中」にいるからこそのやりがいを選んだコンサルタントの道のり
会社に入って社員として経験を積み、フリーランスとして独立する——。そうした道のりの進み方は、プロフェッショナル人材の方のキャリア形成に多く見られます。今回インタビューした井関典克さんもそのお一人。独立後はフリーランスのコンサルタントとして実績を積んでこられました。しかし現在は、MIRARTHホールディングス株式会社(旧・株式会社タカラレーベン)で、執行役員 経営管理本部 グループDX&VX戦略部長に就任。つまり、再び会社に所属する働き方を選ばれたのです。
お試し稼働就職支援サービス「大人のインターン」を通じて執行役員就任に至った経緯、働き方を変える決め手となったもの、フリーランスという働き方と会社に所属する働き方それぞれのメリットとデメリットについて、井関さんにお話をうかがいました。
井関 典克
今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント
大手コンサルティングファーム、IT事業会社でのキャリアを経て、2017年1月に独立。フリーランスのコンサルタントとして、複数のプロジェクトに参画。炎上プロジェクトの火消しや経営層と現場のギャップを埋めるなど、「情と理」を理解したコンサルティングを得意とし、PMI、BPR、プリセールス、デリバリーなどを高いレベルでこなす。2021年12月、株式会社タカラレーベン(現・MIRARTHホールディングス株式会社)のプロジェクトに業務委託で参画。“試用期間”を経て2022年4月に入社し、現職。 ※役職は、インタビュー実施当時(2022年12月)のものです。
井関 典克
自分のスキルと経験を存分に生かせるフリーランスへの転身
インタビュー中の井関さん
井関さんは、もともと大手コンサルティングファームやIT事業会社でコンサルタントとしてのキャリアを積まれたあと、2017年に独立なさいました。その理由をうかがえますか?
井関さん(以下、敬称略):フリーランスは、働き方を自分でコントロールしながら、自分のスキルと経験を存分に生かすことができます。そういう環境に身を置いて切磋琢磨し、収入面も含めて自分の幅を広げたいという気持ちで独立しました。
そしてフリーランスのコンサルタントとして活動なさったのち、弊社「大人のインターン」での案件募集を通じ、2021年12月より株式会社タカラレーベン(現・MIRARTHホールディングス株式会社)に参画されました。
「大人のインターン」は、“お試し稼働”付きの就職支援サービス。プロフェッショナル人材の方は、まず業務委託として入り、企業様と一緒に仕事をしていただきます。そののち、双方の合意が形成できれば、正式に社員として企業に入社していただくというのが基本的な流れです。
今回の案件は、タカラレーベンがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくにあたり、まずは経営トップの右腕としてDXの推進を統括するリーダー的役割を担っていただき、将来的にはCDOポジションへ就任してDXを推進するトップマネジメントになっていただける人材を、という募集でした。こうした募集をどのようにお感じになりましたか?
井関:もともと自分自身、フリーランスとしてどこまでやっていけるだろうか、特に技術の進歩がめざましいIT業界においてどこまでやっていけるだろうか、というような漠然とした不安があり、どこかのタイミングでもう1回、会社に所属する働き方を考えるべきではないだろうかと思っていたところがありました。
そういう状況のなかで今回こうしたお話をいただき、とてもありがたかったです。これまでフリーランスとして業務委託で仕事をお請けしてきたなかでも、「このまま社員にならないか」と誘っていただけることはありました。
しかし、役員というポジションのご提示をいただけることはなかなかありません。この視座の高さを経験できる機会をいただけるならば、キャリア的にも非常にプラスであるのは間違いありません。これはぜひチャレンジしてみようと考えました。
「課題」ではなく「夢」を尋ねるヒアリングで意思疎通
大人のインターン
ということで2021年12月から、まずは“お試し稼働”として業務委託で参画されました。この間、タカラレーベンでのDX推進業務をどのように進めていかれたのですか?
井関:まずは社内で徹底的にヒアリングをしました。対象は、取締役から部長級の管理職まで、全部で50人から60人ぐらい。特に取締役および執行役員には、3回ほどヒアリングを重ねて認識をすり合わせました。ヒアリングで皆さんに一番最初に聞いたのは、「この会社での夢を聞かせてください」ということです。
ヒアリングというと「課題を聞かせてください」といった質問になりがちですが、課題を抽出してその解決策を考えていくというよりも、「こうなったらいいよね」という前向きな話をしていくほうがいいのではないかと考えたのです。
そこで、「この会社をもっとよくするためにどのようなことをしていきたいと思いますか?」「ご自身はこの会社でどういうことができたらうれしいと思いますか?」という意味での“夢”を聞いて、それをデジタルで実現していくという方向で考えたいと思いました。
ヒアリングは、年明け1月の半ば辺りから開始。ミーティングを設定してヒアリングを行い、その内容をまとめて資料を作成し……ということを繰り返し、3月上旬ぐらいまで行いました。ミーティングの数でいうと、70、80ぐらいでしょうか。そうして全体をまとめ、タカラレーベンにおいてDXをどのように推進していくか、DX推進戦略のグランドデザイン、ロードマップを描きました。
仕事を進めるなかで、お感じになったことがあればお聞かせください。
井関:タカラレーベンは中途採用も積極的で、外から入った人間も活躍できるところが十分にある会社です。ただ、今回私が参画したのはDX推進という仕事。タカラレーベンの本業である不動産の事業部門の現場に、業界経験者が入るようなケースとはどうしても違う難しさがあります。
事業部門の現場には「1972年の創業以来の50年を自分たちが支えてきた」という自負がありますし、そこに対して“外”からサジェスチョンを受けて咀嚼するという経験をあまりしてきていません。そこへ私が入ってきて、DX推進ということで突然いろいろ言われるようになり、驚いていたという面があると思います。
そういう意味で、最初は難しさを感じるところがありました。しかしその点も、ヒアリングをはじめとするコミュニケーションを重ねてきたことで、だいぶ意思疎通ができるようになってきたのではないかと思います。今ではコミュニケーションも非常にスムーズですし、居心地のよさを感じられるようにもなってきました。
執行役員就任の決め手は「描いた画を自分で実行したい」
インタビュー中の弊社代表 岡本
そして、ヒアリングとそのまとめが終わった頃、“試用期間”としての業務委託期間も終了。2022年4月には、タカラレーベンの執行役員に就任されました。その決断をなさった決め手は?
井関:一番の決め手は、DXの推進について自分がここまで画を描いたのでやりきるしかないなという思いでした。描いたビジョンを社員の方に託して「あとはよろしくお願いします」、とはさすがにできないという思いもありましたし、何より自分自身がやりきってみたいという思いもありましたので。
もう一つは、社員に伸び代を感じたということです。業務を進めるにあたり、社内のいろいろな人と接点をもちました。そのなかで、「この人には伸びる素地がある。この人が伸びていったら会社はだいぶ変わるだろう」と思う人が少なからずいました。
DX自体が企業や組織などに変革を促すものですが、その変化のなかでカルチャーも変わり、人材も変わっていくのかもしれない。そういう変化を、DXを推進するリーダーという立場と、人材をマネジメントする立場の双方から見られるチャンスでもありました。その変化のために、自分が知見や刺激などを提供できれば、という思いがあったことは、意思決定に影響した大きな要素の一つであったと思います。
これまで井関さんは、弊社を通じて複数の案件に参画され、そのなかで企業様側から正社員採用の提案を受けることもありましたが、最終的に実現することはありませんでした。他方、今回は、社員採用を前提とした業務委託として参画し、実際に執行役員に就任されました。この違いはどこにあるのでしょうか?
井関:大きい違いは、あらかじめ描かれたロードマップを実行する立場か、自分がロードマップを描く立場か、というところにあると思います。
これまでの案件は前者で、すでにあるロードマップやビジョンを実現するために、社員になって支援することを求められていました。そうしたお声をいただくこと自体はありがたいものでしたし、そうした案件でもやりがいや経験値を得ることができました。
他方、今回の案件はというと、自分がDX推進のために企画を立案し、知恵を絞ってロードマップを描きました。そういうものに対してはやはり思い入れが強くなりますし、さらにそれを執行役員として見ていくことができるというのはなかなか得がたい機会です。これだけ最上流から携わることができる案件はほとんどありません。
およそ1年間働いてみてどのようなことをお感じになっているか、教えてください。
井関:自分で描いた画を実行するために、自分自身がさまざまな調整から関わることができるのは、大変ですがやりがいがあります。また、一緒に働くメンバーの考え方やモチベーションが日々少しずつ変わってきていることや、各現場でDX推進を理解し共感してくださっている方が増えていることを感じられるのはうれしいです。忙しくはありますけれども、楽しく仕事をできています。
仕事のおもしろさを存分に味わえる働き方を選ぶことが大事
インタビュー中の井関さん
会社に所属して働く場合とフリーランスとして働く場合には、それぞれメリットとデメリットがあると思います。井関さんのご経験から、それらはどのようなものであるとお考えですか?
井関:フリーランスのメリットは、時間の使い方や仕事の選び方の自由があることだと思います。私も、自分のワークスタイルのステージに合わせて工数的な調整をつけたり、仕事の仕方を選ぶことができたことは非常にありがたかったですし、いろいろな仕事を経験できてよかったと思っています。
また、会社の組織としてのミッションや、組織の中での業務にとらわれず、自分のキャリアを自分で考えて形成できる、足かせなくチャレンジできるというのは、自分でがんばっていきたい、自己実現していきたいと考える人にとっては非常にメリットになる働き方です。
ただ、仕事を本当に獲得できるのかという不安は常にあり、仕事が不安定であることは収入面に直結するところ。そこがデメリットだと思います。
それと、業務委託としてフリーランスの場合、参画するプロジェクトの最終的な意思決定は相手方の企業に委ねざるを得ず、その意思決定に至る社内調整などに関わることは難しいです。
その点でいうと、会社に所属して働く場合、プロジェクト自体の意思決定に関与できるようになります。つまりそれは、プロジェクト自体を“自分ごと”として仕事を進められる余地が大きくなるということです。
その部分は、楽しいと思う部分と、煩わしさを感じる部分と両方あると思います。けれども、自分が進めたいと思うことを自分自身で進めて完結させることができるというのは、自己実現であったり、仕事のおもしろさを十二分に感じられるというメリットにもなり得るものだと思います。
現在、弊社のサービスにはおよそ1万7000名のフリーランスのプロフェッショナル人材が登録してくださっています。その方々にお伝えになりたいメッセージをいただければと思います。
井関:先ほど申し上げた通り、フリーランスとして働くことには、非常に多くのメリットがあります。どのように営業活動を行い、どのような案件を受注するかも自由ですし、それらをすべて一人で判断することもできます。
ただ、みらいワークスさんのようなサービスに登録すると、これからどのような仕事をしたいのか、どういう案件を希望するのかということを一緒に考えてもらうことができます。例えば「こういう案件をやってみたいんですよね」と話をしたり、反対に、私のこれまでのキャリアを見たうえで「こういう案件をやってみませんか」と提案してもらえたりすることで、自分でも気づいていなかったような志向や適性に気づけることも。
フリーランスとして一人で仕事をしていると、自分の市場価値を客観的に認識することが難しいこともあると思います。そういうときに、みらいワークスのようなサービスに登録すると、市場価値がわかりやすくなるだけでなく、市場価値を大きくしていくためのアドバイスを得ることもできます。それはフリーランスにとって、大きな武器になると思います。
本日は貴重なお話をありがとうございました!
インタビュー終了後、MIRARTHホールディングス株式会社のエントランスにて
フリーランスとして能力を評価していただき、仕事を依頼していただけるのはとてもありがたいことです。さらに、その能力を役員として発揮してほしいと乞われたら、モチベーションはいやが上にも高まるでしょう。「自身が描いたロードマップの実現を自身でやりきってみたいと思った」と語られた井関さんの表情が、そのモチベーションの高さ、やりがいの強さを物語っているように見えました。
みらいワークスは、「プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する」をビジョンとして掲げ、プロフェッショナル人材がそのライフステージに応じて独立・起業・副業・転職を自由に選択できる社会づくりに取り組んでいます。今回の井関さんの選択はまさにそのビジョンの実現であり、プロフェッショナルとして仕事の楽しさを満喫できる機会の提供に貢献できたことを、とてもうれしく感じました。